水谷伸之

1971年兵庫県生まれ。多摩美術大学芸術学部II部芸術学科中退。フィルムでの映画制作を学び、その流れでスチルへの関心を強めていき、スチルカメラマンとして活動。2014年に知人の紹介で動画の仕事を開始。現在は企業PVやMVを中心に活動。今年12月より映像制作会社AVII IMAGEWORKSに所属。

WEB●https://avii.jp

文●松岡佳枝/写真提供●水谷伸之

 

水谷伸之さんの作品

【KNS2018 “FAMILY CLIMBING in 笠置ボルダー”】

アウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス」が子供が自然と接し、体験し、学ぶことを目的に開催している「KIDS NATURE SCHOOL」。プロクライマーの平山ユージさんを講師に招いたイベントの模様を記録した一本。

 

【Dig.Dug「RUDE」MV】

大阪を拠点に活動する3ピース・ヒップホップバンド「Dig.Dug(ディグダグ)」のMV。水谷さんは企画・演出・撮影・編集を1人で担当。全編BMPCCのRAW収録。Capture ONEでグレーディングして作り上げた。

 

 

スチルカメラマンの経験が活きる映像作り

美大在籍時は絵を描くことを志していたという水谷さんは、在学中にひと通り学ぶことができた写真に傾倒し、スチルカメラマンとしてフリーランスで活動を続けてきた。2014年、知人の紹介をきっかけにムービーの仕事に携わるようになる。

「在学中、絵やフィルムでの映画制作も学びましたが、友人で写真家の笠井爾示くんなどの影響もあって、写真のほうに傾倒していきました。モノクロで作品制作をしていましたね。でも実は結局、大学は中退してアルバイトをしつつ生活していたんです。ある時、知人に紹介されて、動画を見て必要事項をチェックする仕事を始めたところ、そのままその業界に居つくことになり、最終的にそこでスチルカメラマンを20数年やってきました」

2011年の震災から数年後、日本経済の衰退が始まると、目的に即したものだけを低予算で作ることの繰り返しが続く。

「リーマンショックもそうでしたが、数年後に日本経済にもショックが来るんですよね……。そういうこともあって、少し先のことを考え始めたとき、REDの登場などもあって映像も面白そうかなと。EOS 5Dでもムービーが撮れましたしね。知人がザ・ノース・フェイスの広告の仕事をしていて、広告用のコマ撮り作品の評判がとてもよかったんです。特に、子どもに向けたものなのですが、『キッズネイチャースクール』という山へ行くイベントのリニューアルの際、ムービー撮影を手伝うようになりました。Blackmagic Pocket CinemaCamera(BMPCC)が出て1年後くらいかな……。当時はまだ動画を撮影できるデジタル一眼も持っていなくて、BMPCCが何者なのかもよく分かっていないなか、Bカメとして参加しました。できた作品でカメラワークや色味などを客観的に見て研究して、それからリグを組んで動画カメラとしてカスタマイズしてみたり、まさに暗中模索でいろいろなことを試していきました」

元来、スチルカメラマンとして仕事を続けてきたこともあり、水谷さんにはワンショットで画になる、力のある映像作り、そして色味にもこだわりがある。

「動画の編集ソフトでの現像は、これまでスチルをやってきた自分にとっては馴染みのない言葉も多かったんです。BMPCCのRAWで撮ったものを編集に回す前に現像する、そのフローはスチルと同じだと思い、Capture Oneというスチル用の画像編集ソフトで試してみたら手間はかかるけれど、見たことのない画が出てくる。撮るのは画が連続した映像だけど、1フレーム切り出してもいいシーンになるような映像を撮りたいと思って撮っています。フォーカス、色、写真的な画作りは大切にしていますね。色はパっと見ただけで、印象が大きく変わりますし、そこで“表現”ができると思っています」

 

●最近お気に入りの撮影機材


▲撮影機材。メイン機はニコンD750。ミュージックビデオ等作り込む作品はBlackmagic Pocket Cinema Cameraを使用。ジンバルも持ってはいるが、手持ち撮影が多いという。


▲D750をリグに組んだ状態。


▲ビーズクッションはハイハット代わりにローアングル撮影で重宝する。楽天で買ったクッションに100均のカラビナを取り付けて腰につけておく。

 

●機材リスト

 

●撮影現場の風景


▲KNSの撮影の模様。イベント撮影では撮影チャンスを逃さないため、リグに組んだカメラで手持ち撮影。


▲Dig.DugのMV撮影の現場。夜の撮影に向けたリハーサルの様子。

 

 

ビデオSALON2019年1月号より転載