DJI RONIN-SC アラフィフの初心者でも 一眼用ジンバルは使えるか?

Report◎斎賀和彦

 

脚に据えたどっしりと安定感のある画が動画の基本。・・・ではありますが、移動撮影のダイナミックなカメラワークも映像的魅力に溢れています。そんな移動撮影はレールやクレーン、ステディカムといった大掛かりな「特機」が必要でした。

それが高精度なデジタル制御を核とするジンバルスタビライザーの登場で大きく広がりはじめたのがここ数年。中心となったのはドローンのトップメーカー、DJI。同社の代表的ジンバルがRONINシリーズで、今回登場し、ここで試すのが最新型にしてRONIN最軽量型のRONIN-SC。これなら、従来は力のある助手に任せてきたジンバル撮影を自分で出来るかも? と思ったのが今回のテーマのきっかけです。

▲スマートフォン専用のジンバル DJI OSMO Mobile 3(左)と一眼運用のDJI RONIN-SC。意外とサイズ感に違いがない。SCのコンパクト設計がよく分かる。

 

ジンバルに限らず特機の弱点は、

・操作に習熟が必要

・現場でのセットアップに時間がかかる

の2点に代表されると思います。ジンバルの場合、前者には重さに耐える強靱な肉体も含まれますが、RONIN-SCは耐荷重を2kgに抑えることで本体重量1.1kgと軽量を実現しています。2kgというと今回メインで使ったEOS RとRF35mmレンズの組み合わせが965gなので耐荷重的には余裕です。が、SC本体とあわせて2キロを片手で保持して動き回るとうのは、鍛えていないアラフィフには厳しく、2時間くらいの撮影で腕が棒になります。それでもジンバルの効果は絶大で、そこについては後で述べましょう。


▲シリーズ最軽量のRONIN-SCだが、耐荷重は2kgを確保し、本体質量は1kg強。

 

後者のセットアップはジンバルの泣き所だと思っていました。モーターでアシストするとは言え、電源オフ時に綺麗にバランスを取るのがジンバルの基本。ですが、これかなりの手間と時間が必要で現場の作業効率を大きく削ぐのです。3軸のバランスを同時に取らなければならないので、これは慣れていても大変です。

ところがSCはこの部分が大きく進化しています。3軸をそれぞれ機械的にロックできる機構が追加されたため、チルト、ロール、パンをひとつずつバランス取ることができるようになりました。これは特に初心者レベルの人には嬉しい機能。おかげでわたしも短時間で実用レベルのバランス調整ができました。またロック機構の副次的な?効果で、持ち運びの際にアーム部分が暴れることがなくなり、移動が楽になったのも○。

撮影現場までの移動は当然カメラを外すわけですが、SCのプレートには位置合わせマーカーとも言うべきネジがあり、自宅であわせたプレート位置を現場ですぐに再現できるなど、随所に細かな目配りが出来ている印象。スマホアプリからのバランスキャリブレーション、バランステストとあわせ、現地でのセットアップ時間が非常に短くなったのは大きな進歩だと思います。

ただし、機材バランスが変わったらセットアップはやり直しなので、レンズ交換はむろん、ズームレンズの焦点距離を変えてもダメ。レンズ長さのあまり変わらないズームレンズで試してみましたが、レンズ群の移動で重量バランスはかなり変わるためかテストでNGが出ました。その意味では単焦点レンズのほうが軽いことも含め、向いていると思います。

▲3軸独立のロック機構とプレートのマーカー機能でセットアップがとても楽になった。

▲スマホアプリからバランスのキャリブレーションとテストが可能。

 

さて、準備のハードルは大きく下がったRONIN-SC、実際の使い勝手と撮れた画はどうでしょう?

正直、カメラとSCあわせて2kgを片手で振り回すのは厳しい。厳しいですが、なんとかなる重さなのも事実(翌日以降の筋肉痛とバーターですが)。そしてその代わりに手持ちとは別格の移動撮影が手に入ります。

歩きで追うとどうしても多少の上下動が残りますが、それでも手持ちに比べると不快なショックがかなり抑制され実用レベルに(比較動画参照)。そして撮影者の歩きを伴わない腕や上半身でのカメラワークではほとんど初心者に近いわたしでもOKカットを得られたと思います。特に犬のカットではしゃがまずにカメラ位置を犬の目線まで下げることが容易なため、飼い主も喜ぶ自然な画が撮れたのは想定以上でした。

▲しゃがまなくてもペット目線でカメラワークが可能なので、撮影の自由度が大きく向上する。

 

グリップ部のフォーカスホイールで手動によるピント送りも可能(Proコンボ版に同梱)で、これもユニークな機能ですが、ジンバルワークとフォーカス操作の同時作業はわたしにはまだ高難度で、カメラの顔認識AF等にまかせたほうが結果の歩留まりは上でした。

その意味では被写体をスマホアプリを介して追随するアクティブトラック等の機能はさすがに習熟が要求される部分。とはいえ、セットアップと重さという巨大なハードルが大きく下がったRONIN-SCは特機(特殊機材)ではなく、一眼動画ユーザーにとってカメラワークの可能性を広げる周辺機器になったと感じるのです。

 

◉参考動画

RONINあり、なしの単純比較

 

◉作例

初心者のわたしがRONINを使って撮影した動画

 

 

ビデオSALON2019年10月号より転載