2019年1月号のVideographer’s Fileに登場していただいた水谷伸之さんはフォトグラファーとして活躍するだけでなく、5年前からは動画の仕事も始めている。今回、フルサイズで4Kムービーが撮れるニコンZ 6でミュージックビデオを撮り下ろしていただいた。
2019年10月20日 本編映像をアップしました。
music + dance + poetry × Z 6
dignity .
Dig.Dug + amanita + Aya Ifakemi Yem +酒井清孝 × Nobuyuki Mizutani
協力:ニコンイメージングジャパン
水谷伸之 プロフィール
1971年兵庫県生まれ。多摩美術大学芸術学部II部芸術学科中退。フィルムでの映画制作を学び、その流れで写真への関心を強めていき、スチルカメラマンとして活動。2014年に知人の紹介で動画の仕事を開始。現在は企業PVやMVを中心に活動。昨年12月より映像制作会社AVII IMAGEWORKS(神戸)に所属(http://avii.jp)。現在はフリー。Jabalí Cinematógrafo
https://jabalicinematografo.
▲普段使っているのは同じニコンのD750。手持ち撮影時はEVFが使えるようこのようにリグを組むことが多い。今回D750をZ 6に入れ替え使用。
●ARTIST
Dig.Dug「ダダダッ!」【Instagram】https://www.instagram.com/dig.dug.jp
amanita 「Afroderick woman」
【band camp】 https://amanitaafrobeat.bandcamp.com/
【Instagram】 https://www.instagram.com/amanitaafrobeat/
Aya Ifakemi Yem:アフリカングルーブダンサー/酒井 清孝:散文詩人
●STAFF
監督・撮影・編集:NOBUYUKI MIZUTANI
絵コンテ: KOTARO TANAKA (AVII IMAGEWORKS)
VFX:TEPPEI OKUGUTI (AVII IMAGEWORKS)
メイキングムービー 撮影・編集:KOKI MORITA (AVII IMAGEWORKS)
スチール:IZUMI MAEDA
amanita衣装:Sista-K https://www.sista-k.net
撮影協力:DJ KOOH The Golden Harvest
◉music + dance + poetry × Z 6 「dignity.」 メイキング
ムービーでもニコンがいい!
水谷さんがスチル撮影で使い続けてきたのはニコン。F4から始まりFシリーズ1桁台のフラッグシップを使ってきた。デジタルでもD1をすぐに買うなど取り組みは早かった。2014年にあるクライアントのムービーを担当したことで、動画にも携わるようになる。ただ当時は、動画では他社のカメラを使っていたという。たまたまスチルで使っていたD3Xが故障したときにD750を導入し、「動画機能がついているなあ」というくらいの気軽な気持ちで使ってみたら、それが自分好みの画だったのだそうだ。そこから、スチルでもムービーでもD750を使うようになった。事務所には他社のカメラもあり、様々なカメラを使ってみたが、やはりムービーでもニコンから出てくる画が好みだという。
「信号のことはよく分からないし、ニコンの何がいいか言葉で説明できないんだけど、何か“エモ”が残ると思ってます。ドキュメンタリーを撮るにしても、あんまり客観的じゃなくて、自分の思いを込められる画ですね」
ハイスピードの120pが効果的
D750では動画向けにピクチャーコントロールの一つとして「フラット」が採用されているが、それをさらにフラットにしたFlaatというファイルがサードパーティから提供されていて、水谷さんはFlaat_12pを愛用している。
今回のZ 6でのミュージックビデオ撮影においても、そのFlaat_12pを入れてみた。Logのようなゆるい画だが、ニコンのカメラはそこからでもいい色が出てくる。この海は実は瀬戸内海なのだが、とても日本とは思えない色の演出をすることも可能だった。合成前提のシーンと条件が厳しいところはN-Logも試し外部レコーダーで記録したが、かなりダイナミックレンジが残り、色も階調も大胆に攻めることができたそうだ。
D750は4Kには非対応で、ハイスピードはフルHD60pまでだったが、Z 6では4Kでは30p、フルHDの60pはもちろん、ハイスピードでは120pにまで対応。この120pがダンスシーンにまさにぴったりだった。
▲Z 6はフルHDで120pまでのハイスピードが可能。積極的に100p、120p撮影を利用した。
▲ハイスピード以外は4K/30pで撮影した。
Z 6の動画機としての使い勝手は?
基本的にスチルカメラとして作られたZ 6だが、ムービーの現場で使ってみてどうだったのだろうか?
「D750と比べてまず小さいことに驚いたのですが、手への収まりがよくてグリップへのこだわりはさすがにニコンだと思いました。リグをつけない状態でも持ちやすいんです。あと、D750と比べて液晶モニターがかなり見やすくなっています。今回、EVFや外部モニターをつけずに手持ちでカメラのモニターを見ながら撮影したシーンも多かったのですが、日中の炎天下でもモニターが見えたのには驚きました。ピントの山がつかみやすかったです」
Z 6でもここまでできる
少人数での映像制作でも小型のZ 6をベースにして周辺機材を活用することで、大きいカメラではやりにくい表現をしていたのが印象的だった。その一つがザハトラーの三脚のドラッグを完全に0にして曲に合わせてスウィッシュパンするカメラワーク。小型カメラだからやりやすい表現だ。また最近評価されているAputureのLEDライトは、以前なら高価なHMIライトでしかできなかった色と光量をバッテリーで実現できる。センスと工夫次第でおもしろいことができる環境が整ってきた。
水谷さんはこれまではカメラは重いほうが動画撮影時は安定すると思っていて、リグを組んであえて重くすることが多かったが、Z 6では手ブレ補正があることを信頼して、全体の重さを増すことなく、手持ち撮影で使ってみたが、無理に押さえ込んだ感じもなく、違和感のない映像になった。またAFも動画では使うことはないそうだが、今回はテストも兼ねて、タッチパネルの操作でやってみたが、想像以上に実用的だった。
▲このシーンは、AputureのLEDライトを正面から当てて、夕景とのバランスをとりながら光量を調整して撮影した。
積極的に光源を入れたくなるレンズ
レンズはNIKKOR Z 24-70mm f/2.8 SをメインにNIKKOR Z 14-30mm f/4 Sも。水谷さんはナノクリスタイルコートのレンズをAF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G EDで初めて使ったときに、クリアで抜けの良い画に驚いたという。今回その強みを感じたのは、海岸でNIKKOR Z 14-30mm f/4 Sを使った映像。太陽が直接入ったり切れたりするシーンが印象的になった。ぜひ、実際の動画で確認してみてほしい。
●手持ち撮影とリグ&三脚を使い分けて撮影
▲小型ボディを生かし、ここではスウィッシュパンで躍動感ある映像に。
▲D750では、リグ仕様にしてカメラを重くして手持ち撮影するが、Z 6では手ブレ補正機能を利用して、このような状態での手持ち撮影を試みたが、自然な画になった。
▲液晶モニターは晴天屋外でも見やすいということが分かった。
▲Z 6でEVFと外部バッテリーを利用するためのシンプルなリグスタイル。
●進化著しいLEDライトを効果的に使って演出する
▲最近人気の高いAputureのLEDライト。HMIライトのように日中使え、しかもバッテリー駆動なので少人数ロケでも重宝する。
●レンズはズーム2本とFTZアダプターを介してFXレンズも
▲NIKKOR Z 14-30mm f/4 Sは手持ち撮影に最適。また直射日光が入ったり切れたりするシーンだったが、フレアも自然で、効果的な映像になった。
▲砂浜ということもあり、極力レンズ交換は避けたかったのでメインにNIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sを使用。
▲望遠側はFTZアダプターを利用して手持ちのFマウントAF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8 G II EDを。
●Picture Control Editorを利用して「Flaat_12p」から調整
▲Flaat_12pで撮った状態
▲Flaat_12pからグレーディングしたもの
▲Z 6にはPicture Controlの一つとして動画向きのFlat(フラット)があるが、サードパーティがニコンのPicture Control向けの各種ファイルを提供している(https://nikonpc.com)。ここにはFlatよりさらに軟調のFlaatというファイルがあり、水谷さんはそれをD750の時からダウンロードして使っている。Picture Control Editorを利用して、Z 6の本体に入れることができる。
◉music + dance + poetry × Z 6 「dignity.」