テレビ CM の戦略立案、コンサルティングを行う株式会社テムズが運営する「ぐろ~かる CM 研究所」は、2019 年のマーケティング戦略において優れたローカルCM・地方PR 動画を発表した。

今年で5回目を迎える「ぐろ~かるCM大賞」は、秀逸なローカル CM・地方 PR 動画を網羅的に取り扱ったインターネットサイト「ぐろ~かるCM 研究所」の専門家集団により選定されてきた。加えて、今年は、昨年に「ぐろ~かる CM 大賞 2018」の各賞を受賞した自治体や企業も選考過程に参加。2018 年12月~2019 年11月の期間に同サイトにノミネートされたCM およびPR動画181素材の中から、各賞を決定した。

 

ぐろ~かるCM大賞2019

山口県立美術館(山口県)/「岸田劉生展」CMシリーズ

「“日本一有名な少女”を日本一インパクトあるCMで紹介することにこだわった」という「弁当」篇。岸田劉生の描いた印象的な絵画「麗子像」を驚異的なクオリティの「キャラ弁」にすることで、見事に強烈なインパクトを生み出している。「不気味さ」の再現にこだわり、構想1年、試行錯誤2ヶ月を経てつくられたお弁当は迫力満点。実際に食べられる点も驚き。同時展開した「Myway」篇は、画家・岸田劉生の生き様にフォーカス。テロップの活用とフックの効いたテンポ感ある展開で、美術展への興味が喚起される。

<授賞理由>
本素材は、「綺麗」「荘厳」「アカデミック」といった美術展に対する“ありきたり”なイメージを覆し、幅広い層に美術展への興味を喚起させるクリエイティブが高く評価される。特に「弁当」篇は、斬新なアイデアとクオリティへのこだわりによって、シンプルながらも一度みたら忘れないほど強烈な印象を残すことに成功している。加えて、岸田劉生の生き方や芸術性を伝える正統派な「Myway」篇を同時展開することで、インパクトだけに偏らず、CMシリーズ全体として美術展への興味を醸成している。山口県立美術館は、オリジナリティある発想で継続的に企画展CMを展開し続けており、その点も注目される。

 

 

ぐろ~かるPR動画大賞2019

鳴門市(徳島県)/「Beyond Naruto」シリーズ

舟も橋もない大昔、海の向こうにみえる阿波の国「鳴門」へ渡ろうとした男達がいた。目の前に立ちはだかるのは世界最大級の大渦!最大深部90m、最大潮流時速20km、最大直径20mにもなる大渦を、人力のみで超える方法とは?架空のヒストリーをインパクトあるCG・VFXで映像化。「徹底したバカバカしさ」が秀逸。予想の斜め上をいくアイデアで大渦を越えようとする人々の姿に思わず吹き出すこと必至。

<授賞理由>
観光誘客を目的とした本素材は、代表的な観光資源である「鳴門の渦潮」のダイナミックなスケール感を、強いインパクトとユーモアをもって伝達することに成功している。特に、フックとなるフェイクヒストリーの馬鹿馬鹿しさを徹底したアイデアと、CGVFXを駆使したクオリティの高い映像が高く評価される。さらに、1本30秒という尺は視聴ストレスがなく、期待感を醸成するクリエイティブとともに、全シリーズの視聴を促すことに大きく貢献していると考えられる。また、「其の壱深篇」「其の弐速篇」「其の参幅篇」の総集編となる「其の先再篇」を15秒のテレビCMとして放映し、WEBサイトへの動線を形成したプロモーション展開も秀逸。

 

 

特別賞ぐろ~かるCM・自虐ユーモア賞

姫路セントラルパーク(兵庫県)/2019年CMシリーズ

「日本一、心の距離が遠い」をキャッチフレーズにした「自虐の極み」と言えるCM。開園35周年を迎えるにも関わらず、姫路セントラルパークに対する意識調査の結果は「何があるか知らない46%」「大阪から3時間かかると誤解されている」「97%がナイトプールの存在を知らない」など、惨憺たる内容。CMでは、そんな調査結果を逆手にとって姫センの魅力をユーモラスに訴求。ネガティブなデータをインパクトのあるネタへと変換することで、大きな話題性の獲得に成功している。安易にタレントに頼らず、園長本人や動物を登場させ、彼らの悲しげな表情でコミカルさを引き立てている点も評価できる。

 

 

特別賞ぐろ~かるCM・トレンドパロディ賞

三幸コーポレーション(静岡県)/「ドラキュラ」篇「狼男」篇

「働く」をテーマにひねりの効いたCMを継続的に展開している総合人材サービス・三幸コーポレーション。2019-2020CMシリーズは、自社の課題である「仕事はあれど人手がない」という現状を打破すべく、「いい仕事、余ってます」をキャッチコピーに制作された。世界的に有名なドラキュラ伯爵や狼男の仕事を現代の労働基準に照らすとかなりのハラスメントが!?「働き方改革」「セクハラ」「ブラック労働」といった社会的に関心の高い問題を、ユーモラスに取り入れたクリエイティブが高く評価される。「昼間は死んだように眠っている」「世間から噛みつかれた」など、パロディのセンスも抜群。※「狼男」篇は現在WEBにて公開中。CM放映は来年春以降を予定。

 

 

特別賞ぐろ~かるPR動画・インパクト賞見事な逆説deショウ

大村市(長崎県)/大村市移住・定住推進PR動画

移住・定住促進PR動画なのに「大村市なんて大嫌い」と連呼する意外性がインパクト大!記憶に残るフレーズは市名の訴求にも有効といえる。大学進学を機に上京する女子高生の目線で、「魚が美味しいなんて今更だし、海が近いんだから当たり前」「バルコニーでのBBQに憧れる?狭いアパートで十分だし」などと、逆説的に市の魅力を伝達する発想がユニークです。故郷への愛着をエモーショナルに描いた内容は、本動画のターゲット層の中でも移住・定住の確度が高いと考えられる出身者の心に強く響くと考えられる。

 

 

特別賞ぐろ~かるPR動画・アイデア賞みんなのチカラdeショウ

津久見市(大分県)/「津久見市役所おばけ屋敷」篇

ポップでホラーなストーリーに引き込まれるこちらは、なんと「ふるさと納税促進」のPR動画。ふるさと納税の寄付対象となっている“老朽化”市庁舎を大胆に自虐することで、窮状をユーモラスに伝え、ふるさと納税での寄付を呼びかけるアイデアが秀逸。その他の返礼品の訴求方法や「御礼札(おれいふだ)」に隠されたギミックもユニーク。また、動画制作にあたり、全国唯一となる「おばけ屋敷のある市役所」を実現し、一般開放するなど、動画制作だけに留まらない多面的なプロモーション展開も注目に値する。

 

 

特別賞ぐろ~かるPR動画・地元密着賞おったまげたdeショウ

大丸福岡天神店(福岡県)/DISCOVER KYUSHU「ロングバージョン」篇

開業65周年を迎えた大丸福岡天神店が、より地元・九州に密着した百貨店を目指して発足した「九州探検隊」プロジェクトの一環として制作。「見たことない九州を見つけよう」をコンセプトに集めた100以上のネタから、厳選した9パターンのスゴ技・名人技・驚愕スポットを紹介。期待感を醸成する内容とテンポ感ある構成で、思わず最後までみてしまうクリエイティブを実現。自前のスマホや手持ちカメラで撮影された手づくり感ある映像が、地元・九州との距離の近さを感じさせる。老舗の百貨店が主導した本素材は、地方PR動画の新たな潮流として評価される。

 

◉ぐろ~かるCM研究所

日本全国の各道府県で放送されている秀逸なローカルCM・PR動画を選定し、同サイトからユーチューブ動画へリンクする形で数多く紹介している。「笑える」「お色気」「インパクト」「おもしろキャラ」など、さまざまな観点から網羅的に閲覧が可能となっている。

「研究所所長」でCM戦略コンサルタントの鷹野義昭をはじめ、産業能率大学経営学部教授の小々馬敦氏、CMクリエイティブ・ディレクターの福谷匡史氏、さらには脳科学者であるNTTデータ経営研究所茨木拓也氏を研究員に加えて、ローカルCM・地方PR動画を「総合」「地域密着度」「インパクト度」「クオリティ度」の4つの軸に対し5段階で評価し、専門家によるコメントがつけられている。

https://glocalcm.sakura.ne.jp/