テスト・文●白木修太
ソニーα7 ⅣをMVの現場で使用してみたのでレポートしていきたいと思います。僕は2017〜2019年までα6500を愛用していました。AFの精度が凄まじく、ジンバル+α6500の組み合わせで30本くらいMVを撮りました。CM案件が増えたきたタイミングで大きくて見栄えのいいカメラに買い替えようということになり、メインカメラがFS7やREDへと移行し、撮影スタイルが変化していきました。
今回、α7 Ⅳを使用した理由
「小さくて軽い」これに尽きます。FS7やRED DRAGON-X 6K大きなシネマカメラは少人数でフットワークの軽さが求められるMVの現場で運用するのは結構しんどいなと思っていました。というのも、ジンバルワークではバランス調整などセッティングの時間かかるし、片手では完結できないのでワンオペでの運用は厳しい。バッテリーもREDはかなり大きいので荷物がかなり増えます。バッテリーだけでα本体より大きいです(笑)
これまでの現場でも、大きさと重量で苦戦を強いられることが多かったです。ただ、一度RAW撮影や4:2:2 10bitの素材に触れてしまうと、4:2:0 8bitには戻れません。収録環境が良くなれば、このシリーズはかなり強いなと思っていたところにα 7Ⅳが登場。しかも、4:2:2 10bitの内部収録可ときた。これは使わない理由がないでしょう。
現場での使用感
今回はα7 Ⅳをシンガーソングライターの平岡優也さんの楽曲『春舞』のMV撮影の現場で使用してみました。監督と撮影を自分が担当し、照明とアシスタント含めて3名のコンパクトな現場でした。今回使用したレンズは下記の3本。三脚・DJI RS2・手持ちを使い分けて撮影しました。
・SEL2470GM FE 24-70mm F2.8
・SEL35F14Z Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA
・SEL100F28GMFE 100mm F2.8 STF GM OSS
わかってはいましたが、機動性抜群でした。好みが分かれるところかと思いますが、自分としては液晶がバリアングルなのもありがたい。手持ち撮影の際は、手ブレ補正(standard)を使用しましたが、「ジンバルもいらないのでは?」と思ってしまうほど優秀でした。
時間に追われることの多いMV撮影の現場で、「あと1カット撮っておきたいな」と思ったら、すぐに撮れてしまう。カメラが小型になることで、すべての周辺機器が軽量コンパクトになるのがシネマカメラの現場との大きな違いだと思います。現場の動き方はだいぶ変わりますね。
一点、α6500の時から思ってましたが、HDMI出力時のフレームレートを変更できるようにしてほしいですね。MVではリップシーンを24pで撮影し、その他のイメージカットはスローにできるように60pで撮ることが多いです。24pは雰囲気が出て良いのですが、60pはヌルヌルしていて生っぽく感じるので、あまりクライアントに見せたくないのが本音です。その点、REDは出力フレームレートを変更できるので、高いカメラってさすがだなと思います。
S-logについて
少し階調が狭めのS-log2、メーカーのおすすめS-log3。α6500使用時はS-log2で撮影していました。ダイナミックレンジがいくら広かろうが、そもそものデータが4:2:0 8bitではグレーディングでできることはたかが知れてます。今回、S-log2と3を両方使用してみました。
S-log2
桜の木の影を出すためにコントラスト強めのS-log2で、少しアンダー気味で攻めて収録してみました。
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・SEL35F14Z Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA
・KENKO ND 8
・絞り:F2
・シャッタースピード:1/100
・ISO:250
・XAVC HS 4K/24p 4:2:2 10bit 100M
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S-log2で暗部を持ち上げてノイズだらけになるという過去の失敗が数えきれないほどあるのですが…どうでしょう? ノイズなんて皆無です! この進化には感動しました。
S-log3
▲グレーディング前
▲グレーディング後
夕日の撮影は階調が命なのでS-log3で収録しました。
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レンズ:SEL2470GM FE 24-70mm F2.8
・絞り:F2.8
・シャッタースピード:1/125
・ISO:640
・録画モード:XAVC HS 4K/60p 4:2:0 10bit 45M
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逆光の状態でも顔のディティールがしっかりと生きており、RAW撮影かと思うくらい階調が豊かでした。ただ、ひとつ悔やまれるのがリップからドラマシーンへ移行する時に記録モードの設定を変更したのですが、フレームレート変更時に4:2:0 10bitにしてしまったこと。撮影後に気づいたのですが、色の破綻もなく、編集上問題はなかったのでよかったです。収録設定の選択肢が多すぎるので、もう少し厳選してもいいのではないかと思いました。
まとめ
FX6・RED KOMODOとシネマカメラのコンパクト化が進み、iPhoneもシネマモードを打ち出している状況をみると、「軽量・コンパクト」はひとつのトレンドなのかもしれません。見栄え重視のボディが大きなカメラは扱うのに人手も必要になります。コロナ禍で予算と現場人数削減を強いられる現場にはミラーレス機くらいが丁度いい。
誰もが動画を撮るようになり、ある程度カメラの知識を持つ人が増えてきました。そのおかげで「そんなカメラで大丈夫?」と言われることもなくなりました。このコロナ禍で撮影スタイルを見直そうとしているクリエイターは多いはず。これを機にα7 Ⅳを手に取ってみてはどうでしょうか?