久松慎一+ 株式会社援軍

 

 

Vol.19 課題を基に広告のターゲティングや打ち手を考える (販促編)

前回はブランディングについての打ち手について考えてみました。今回は販促について考えてみたいと思います。広告運用される多くの広告主は自社商品の売上を上げるために広告を使用します。使用する上でどのような打ち手が考えらえるのか自社のビジネスに当てはめた場合はどうなるのかを考えてみましょう。

 

企業例

背景
現在、需要が伸びているペット市場。在宅時間が増えるなか、新しくペットを飼い始める方が増えてきている。B社はペットに関連するさまざまな商品を販売している会社。ECサイトは数年前から運用していましたが、今後さらに需要が伸びることを想定してECサイトの強化を図りたいと考えている。

求めるターゲット像
現在ペットを飼っている方。

課題
市場は伸びているはずだが、ECサイトからの売上は横ばいに推移。サイト訪問数が伸びておらず、何らかの対策を講じたい。方法として広告出稿を考えている。

 

事前調査

広告を出稿するにあたり、WEB上でのユーザーはどんなことを考えているのかを確認します。その後、広告媒体を選定して広告作成へと進めていきます。


 

検索される商品なのかを調査する
今回の商材「ペット用品」はネットで検索されるのかを調べてみます。調べるツールはGoogle広告の機能のひとつであるキーワードプランナーを使用します。

Google広告の管理画面にログイン>ツールと設定>キーワードプランナー

▲「ペット用品」とキーワードを打つと、キーワード候補でこれだけの単語が表示され、またその検索ボリュームも表示される

 

媒体を選定する
キーワードプランナーからペット用品として検索される方が多く存在することがわかりました。検索される方は検索する内容に対して興味関心を持っており、今回広告配信したいターゲットになり得ます。広告媒体は、検索広告を軸にして構成していくことにします。

行動を起こす直前の方に向けて広告を配信する

 

検索広告は代表的な広告としてGoogle広告とYahoo! 広告のふたつがあります。この2媒体は日本の検索エンジンのほとんどのシェアを占めており今回はこのふたつの広告を使用したいと思います。

 

検索ユーザーのニーズを調査する
次に今回の商材「ペット用品」はどのようなニーズで検索されるのかを調べてみます。プランナーのキーワードを見てみるとグッズとしてざっくりと商品を探している人が多いなか、「おしゃれ」というキーワードをかけ合わせている方が一定数存在していることがわかります。どうやらペット用品を探している方はペットのおしゃれに興味関心を持つ方が多いようです。

その他のキーワード例
・「ペットグッズ」「ペット用品」
・「ペット熱中対策」
・「犬 散歩 グッズ」
・「犬 用品 収納」など

 

 

広告の構成を決める

次は広告の構成について考えてみます。現在のECサイトに訪問しているユーザーの動向を調べてみます。Google Analytics(グーグルアナリティクス)というサイト分析ツールを使用します。使用するためには事前にセットアップする必要がありますのでご注意ください。

Google Analyticsの管理画面にログイン>コンバージョン>所要時間

下記は購入された件数の所要期間(訪問〜購入に至るまでの期間)の内訳を表したデータです。初日で購入したユーザーは約半分ほどで、残りのユーザーは数日経過して購入していることがわかります。ほかのサイトなど含めて色々調べた上で購入に至っているのだと予測できます。

▲コンバージョンはサイト訪問後、購入へと至った数を表す。Google Analyticsでは一連の行動を確認することができる

 

購入を即日行うユーザーは約半分。残りは日をおいて購入に至ります。検索したときにだけ広告を見せることができる検索広告だけでは、充分にカバーできないことがわかります。検討期間含めて自社のサイトを思い出してもらうためにリターゲティング広告(サイトの訪問したことがあるユーザーに広告を見せる)も稼働させます。さらに過去の検索履歴を基にして、広告配信できる広告も存在しますので、今回は検索広告と合わせて使用することにします。

・検索広告(Google広告・Yahoo! 広告)
・リターゲティング広告(Google広告・Yahoo! 広告)
・ターゲティング広告(Google広告・Yahoo! 広告)

上記を踏まえて広告の構成を決めます。

 

広告の構成

 

 

広告の訴求内容を決めるため競合を調べる

次は広告で打ち出す訴求内容についてです。広告の構成では広告を届けるための経路を決めましたが、ここからはターゲットに対して見せる広告を決めていきます。検索広告は他社と比較されやすい媒体です。どんなに良い商品サービスであることを広告(画像・テキスト・動画など)に書いたとしても、他所広告と比較で負けてしまうと購入されず効果の出ない広告になります。

自社の強みを見つける方法としてよく使われるのは、マーケティング戦略を考える際に使われるフレームワーク3C分析です。市場・顧客、競合、自社の観点から分析し、自社の強みを見つけるために役立ちます。

WEBにおいての競合とは同じキーワードを購入し広告を出稿している競合を指しています。競合が実際にどのような広告を出しているのか調べてみましょう。

Goole検索で「ペット用品 通販」で検索

 

検索結果を見ると自然検索(広告下部にあるページ)や広告では、ペット用品の通販サイトを数多く確認できます。WEBにおいてはこれらが競合にあたります。

競合サイトがどのような内容を打ち出しているかを見ていきましょう。競合の広告に書かれている広告文を抽出したのが下記の内容です。
・商品点数1万点以上。最大級の品揃え
・商品の受け取りは自宅・お店どちらからでもOK
・ポイントでペット用品をお得に購入
・定期購入でお得
・秋冬の商品はセール中 など

ECサイトで訴求できるさまざまなメリットを打ち出しています。

 

検索結果を踏まえて何を伝えるべきかを考える

競合はさまざまなメリットを打ち出して総合的な良さをアピールしており、同様の内容を伝えても差別化することはできません。そこで自社サービスの特徴的なポイント・優位になる点を探します。

自社ではトリミングサロンと業務提携しており日本各地で格安でトリミングを受けることが可能。検索されるキーワードには「おしゃれ」に関するワードが含まれることが多く、検索ユーザーに対して魅力的な内容に映るかもしれません。またこの点を打ち出している競合はいないようなので、ECサイトの利便性とトリミングをお得に受けられる内容を伝えて差別化を図っていきます。広告文では下記のようなメリットを打ち出していきます。

・〇円以上した方はペットトリミングが割引価格。
・ペットトリミング×お出かけハーネスを低価格で購入。
・〇〇SHOPで愛犬をインスタ映え。

 

どのように伝えるかを考える

大前提としてペット商品の購入を考えている方なので、ECに関する特徴やメリットを広告に明記します。その上でほかのサイトとの差別化を図るため、ECで購入するとトリミングも格安で受けられることを合わせて訴求するようにします。

トリミングはビジュアルが重要です。広告ランディングページ(広告をクリックした後に遷移するページ)にはECサイトの各特徴に加えてお得にトリミングを受けられる内容を訴求。イメージしやすくするためビフォーアフターの写真や動画をいれると、効果的だと考えられます。またECサイトとトリミングサロンの相性の良さを伝えるために、トリミングされたペットと共に今ECサイトで売れている人気ウェアや新作アイテムを紹介する記事を作成するのも効果的な方法だと考えられます。

このECサイトを使用すればトリミングをお得に受けられるし、人気商品も購入することが出来てお得なんだと認識してもらえるようにします。

また実際にトリミングを受けた方のインスタグラム記事をページ内に掲載する方法も効果的です。トリミングに関する情報は文字では伝えることが難しく、動画を利用するのが最適です。トリミングは多くの検索ユーザーに訴求できるよう犬と猫両方の動画・画像を用意しておきましょう。

 

広告配信後、成果を必ず検証する

今回のトリミングの情報はあくまでプラスアルファの情報です。検索したユーザーに刺さらない(広告がクリックされない・コンバージョンされない)ケースも充分に考えられますので、検証は必ず行いましょう。

Google広告の管理画面にログイン>広告と表示オプション>広告

現在の広告は訴求内容別(アセット別)に広告を確認することが可能。最良・良好・低といった評価で確認できます。

 

運用後、広告管理画面内の各項目の数字を確認する広告はユーザーに届いているのか?

・広告は問題なく表示されているか?(広告表示回数)
・広告はクリックされているのか?(広告のクリック率)

訴求した内容はユーザーに刺さっているのか?

・コンバージョン数は増加したのか?(広告経由のコンバージョン数・率)
・動画などコンテンツに興味は持ってもらえたか?(サイト滞在時間や配信動画の視聴率)

 

 

今回のまとめ!

販促はブランディングと異なり成果がわかりやすく、広告管理画面内の実績でほとんどの成果を確認することができます。

打ち出した訴求内容が求められているものは適時判断していきましょう。

 

 

VIDEO SALON 2022年4月号より転載