久松慎一+ 株式会社援軍

 

 

Vol.5 動画広告におけるベストな表現を探ろう

予算や制作期間などの制約のなかでどのような表現が効果的な動画広告なのかをイメージするために、表現の種類を知ってみましょう。

 

 

先月は広告動画の企画について紹介しました。今月は動画の表現のパターンについて紹介します。

 

3つの表現方法から考える

広告動画だからといって「この表現技法を使わなければならない」という制約はありません。スマホで撮影した数秒の一発ネタ的な映像でも、広大なロケーションのなかで撮影した超美麗映像でもかまいません。

しかし、予算や制作期間の圧縮、伝えたいメッセージ、広告効果などのバランスから、広告動画では、以下の3つの表現技法が多く用いられます。

1.アニメーション

2.実写

3.モーショングラフィックス

それぞれによって費用感や工数、バージョン展開のしやすさが変わります。

 

1.アニメーション

1-1.キャラクター

主にキャラクターを用い、それらに動きをつけます。 アニメーションはセル画を1枚ずつ描いて作られています。絵のタッチや背景、声の演出などで比較的簡単に伝えたい印象を変えることができます。インフォグラフィックやデザイン化されたテキスト表現など、さまざまな静止画的表現との相性が良いのも特長です。

キャラクターアニメーションでは、主役となるキャラクターが大きな役割を担います。キャラクターは、以下のような候補があります。

・スヌーピーなどの有名なキャラクタを用いる(しばしば「IP もの」と称される)

・自社で所有している、既存のキャラクターを活用する

・知的所有権の所有者に許諾を得る

 

ガーナチョコレート×PEANUTSコラボレーション TVCM『ガーナ 母の日オーケストラ』篇 ロッテ

2020年4-5月にスヌーピーとのコラボで母の日をテーマにしたキャンペーンを打ち出し、WEBムービー(15秒)は公開し、12月には再生回数は5万を超えている

 

 

有名なキャラクターは多数の人が目にしており、ファンも多いので動画に目を留めてもらいやすいメリットがあります。その反面、許諾にかかるコストが高い、競合確認などのデメリットもあります。

IPもののキャラクターの世界観を借りた事例として有名なのが『秘密結社 鷹の爪』のWEB動画。

『秘密結社 鷹の爪』の作者FROGMAN氏が松江市の観光大使となったことから、自社で制作しているアニメ「鷹の爪団」のキャラクターを用いて松江市をPRするアニメを独自で企画・制作しています。

 

松江の吉田くん誕生ムービー 『SMNY19登場!?』  株式会社DLE/松江市

何をやっても失敗ばかり、というオチで人気のアニメーション「鷹の爪団」のキャラクターを活かし「場所がわからない県全国ワースト1位」と言われる島根を自虐的にPR。ユーモアも効いてつい見てしまう、笑ってしまう動画が多数YouTubeなどにアップされている

 

1-2.オリジナルキャラクター

自社の広告のためにキャラクターを制作します。自社の商品やサービスを擬人化するなど他にない印象を与えることもができます。Pixivなどの絵師(クリエイター)の作品投稿サイトで広告戦略のイメージにある絵師を探したり、クラウドソーシングで依頼するなどしてキャラクターを制作することもできます。

 

1-3.ゆるキャラなど

IPものとオリジナルキャラの間に位置するのがゆるキャラです。

地域や商品をアピールするゆるキャラは、広告の目的や世界観に合致すれば安価なライセンス料や場合によっては無料で利用することができます。ゆるキャラにはさまざまな利用条件が設定されているので、事前に確認が必要です。例えば熊本県が管理するゆるキャラ「くまモン」は利用に当たってライセンス料はかかりませんが、事前に申請して許諾を得る必要があります。

オリジナルキャラクター以外はキャラクター自体の世界観や知的所有権の所有者の考えがあるので、充分に議論し、その意向に沿うように動画を制作します。

どの場合も、動画広告に限らず企業や商品・サービスの広告やパッケージなどの顔としてキャラクターを活用すると一体感のあるマーケティングになります。

アニメーションは、ストップモーション(コマ撮り)アプリを使用した動画も印象深い動画になります。

 

50歳の“不合格”  シヤチハタ

朱肉不要で連続捺印ができる定番製品Xstamperの誕生50周年(2015年)を記念したスタンプムービー。大きな反響があった

 

アニメーションの特長として、表現の自由度が高いことがあげられます。電車移動時などスマホで音声をONにしていることが望めない状況で動画が観られることを想定する際はキャラクターのセリフを吹き出しで表現する、現実では不可能な大げさな比喩的表現を用いるなど、アイデア次第で比較的容易に表現の幅を拡げることができます。

また実写だと情報量が多くなりすぎてしまう場合に不要な情報を削り、抽象化することで主題となる表現に注目を集めるなど、情報の整理もアニメーションであれば容易です。

 

2.実写

実写はビデオカメラや一眼、スマートフォンなどで撮影をします。本誌の読者の方であれば、もっともお得意の技法でしょう。ロケーション(撮影場所)、出演者、撮影機材など検討項目が多く、比較的手間がかかる技法といえます。

しかし、実写であることにより「事実」としての説得力が高く、企業や商品の信頼性につながります。出演者の体験として伝わるので視聴者も疑似体験をし、共感を得やすいPRとなります。

また、商品のビジュアルや人の表情・背景の雰囲気などを通してより具体的に、また情緒に訴えることができます。ドラマ仕立てやインタビュー、テレビショッピング風などフォーマットにのっとると作りやすいです。企業のVPでもよく使われるのでおなじみですね。

 

早稲アカブランドムービー「知らなかった自分が、そこにいた。」篇 早稲田アカデミー

誰でも経験した(またはこれから経験する)受験勉強を通しての受験生自身と家族の成長をテーマにしたドラマ。このようにPR対象となる商品やサービスと消費者の関係をドラマティックに描いている

 

ドミノピザの例では、オーダーが入りヤバタンが作ったピザが実はヤバタンへのプレゼントだったというオチがあるのですが、このオチも動画のなかではTikTokらしくとてもあっさりと終わっています。

企業のアカウントではなく、ヤバタン自身のアカウントに投稿しているのもポイントです。ハイテンポで独特の動画センスをもつヤバタン動画は、初めて観たときは飲み込みづらく感じますが、繰り返し観ることで中毒になります。広告として企業アカウントに投稿した場合、初めて観る人はおいてきぼりになる可能性があります。

充分に中毒になってるヤバタンのフォロワーに展開されることですんなり受け入れられ、ブランドへの注目を獲得することができます。

 

TikTok 動画広告 ドミノピザ

http://bit.ly/domino_yabatan

日本でちょっと変わった一般人とのやりとりをTikTok中心に上げているノルウエー人のタレント「ミスター・ヤバタン」を1日店員として起用してヤバタンの“いつものフォーマット”で展開される

 

ほかにも、ドローンのワンカット映像のようなスリリングな映像も目を引く手法です。

協創の森コンセプトムービー〔現場篇〕
日立製作所 

この動画は消費者に向けられたものではなくB2Bのの広報活動の一環で、ともすると旧態依然としたイメージともたれやすい企業の、活気と多様性、オープンネスをワンカットのドローン映像で表現している。人の活動とオフィスの景色、オフィスを取り巻く環境のバランスで非常に美しく印象的な動画作品だ

 

このように実写は、非常に表現力が高く汎用的な手法です。しかし一方で修正や変更がある場合に、最悪の場合前後のカットと同じ状況で撮影し直さなければならないなど撮影時は慎重に進行する必要があります。

代表的な手法は3つ……といいながら、ふたつめまでで紙幅がなくなってきてしまいました。3つめのモーショングラフィックは次号ご紹介いたします。

2021年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

今回のまとめ!

実写は事実の説得力、情緒を伝えやすい。

アニメーションは自由度が高く、キャラクター起用も頭に入れる。

アニメーション、実写、モーショングラフィックス(次回)、それぞれの表現のメリットとデメリットを把握しておくと、現実的な提案ができるようになります。

 

 

今月のTIPS

擬似体験ツールとして動画配信を活用する

動画広告は商品などをそのまま見せたり解説するほか、間接的に良さを知ってもらえるツールでもあります。例えば実写の表現力を活用して感情に訴えることが得意な実写という手段のほか、視聴者があたかもその場にいて、目と耳で使って擬似体験をする、という手段もあります。

 

市場調査のワンポイントアドバイス

その場にいながら疑似体験を!

動画にはさまざまな使い方があります。わかりにくい商品や、サービスをわかりやすく説明するために使用するなどの一般的によくある動画です。

今回はすこし趣向を変えて「その場にいながら疑似体験」ができる動画事例をご紹介します。

今回紹介する動画はそれぞれひとつのコンセプトに特化し、とても特徴的。動画を用いて何を伝えるのかについてヒントとなる動画ばかりです。その場にいるような体験を通して、「実際に行ってみたい」「本物を体験してみたい」という想いを醸成します。

 

心落ち着く焚火を疑似体験

ただただ火のゆらぎを見る動画。都内などでは行なうことが難しい焚火を気がるに体験できる点がポイント
YouTubeチャンネル:Forest of wing

 

ユニバーサルジャパンを疑似体験

園内を歩く動画。来園したことがなくてもイメージできる内容となっている。来園を予定している人の予習にもなる
YouTubeチャンネル:SKY’s WORLD チャンネル

 

餌やりを疑似体験

かわいいウサギたちがただただ食べている動画。擬似体験を通して、実際に餌やりをしてみたくなる
YouTubeチャンネル:千葉市動物公園【公式】

 

だんじり祭り疑似体験

地車(だんじり)に乗った疑似体験ができる動画。迫力のある視点で撮られており、行ったことがない人でも、だんじり祭りの規模や高揚感が伝わる
YouTubeチャンネル:KANADE Official YouTube Channel

 

 

VIDEOSALON 2021年2月号より転載