REPORT◎岸本 康

 

YouTube チャンネルのUfer! Art Documentary でバックラッシュ等のテスト動画を公開。

 

 

 

【シリーズ概要】

パーフェクトバランスのシリーズのヘッド

H15  90,000円
カウンターバランス:0.8 〜 2kg(C.G.55mm)

H25  100,000円
カウンターバランス:1.7 〜 4.5kg(C.G.100mm)

H35 130,000円
カウンターバランス:3 〜 7.5kg(C.G.100mm)

H45  170,000円
カウンターバランス:4.5 〜 10.5kg(C.G.100mm)

▲ヘッドはそれぞれアルミ三脚と組み合わせての販売もあり。ケース(RC-30)が付属。H15ヘッドとグランドスプレッダー三脚の組み合わせがHS-150で高さ56〜166cm、H15ヘッドとミッドスプレッダー三脚の組み合わせがHS-150Mで、高さは81〜166cm。価格はともに130,000円 。



▲三脚ケース RC-30は軽量で過不足ない作り。ファスナーを全開で1枚の緩衝材入りの布になるので、室内の養生や、屋外の敷物としても利用できる。取り外しの出来るショルダーベルトは三脚を立てて肩にかけるとプラスチックが肩に当たる。簡易的で横方向にしか使えない。

 

正直驚いた。ミラーレスなどの軽量カメラ向けに完全なカウンターバランスがとれる。これは平和精機が海外メーカーを抜きにかかった三脚ヘッドだ。すでに5月から出荷されているのにそれほど話題にならないのが不思議に思うが、最近は完全なカウンターバランスの実現と言っても何のことか分からないビデオグラファーも少なくなさそうなので、今回は「使い方」も含めて紹介したい。

動画用三脚はジワっと動き出してジワっと止まる繊細な動きができることが重要なのは、それによって人間の視線のように自然な映像表現になるからだ。最近では自動で動くスライダーやジンバルのような機材もあるが、直感的に人の動かす視線が良い場合もあり、限られた時間でその表現を実現するためにはやはり三脚だ。

 

ヘッドに書かれたPERFECT BALANCE

パーフェクト・バランスとはチルト(上下方向のパン)の範囲で、どこででも手を離すと止まるということだが、それだけでは動きがスムーズだとは言えない。止めようとするポイントでしなやかに止まることが重要だが、今回このH15というヘッドはそれを実現している。最初に触った時に、これは凄いと感じたので少し意地悪なテストをしてみた。壁に巻き尺を貼って、実際に止めた時にどの程度のバックラッシュ等の余分な動きがあるかを録画して視覚的に検証した。

 

バランスの準備

①三脚を撮影したい高さで水平を取る。H15のヘッドの75mmボールは、水平を出す動きも滑らかだ。ボールの下側はフラットになっているので、センタポールやスライダーに取り付けることも可能。水平を確認するための水平器は下側にスイッチがあり照明できる。またこの照明はバランスの強度を確認する回転式の目盛りにも内部で配分されている。ボールレベラーの締めつけハンドルもバルブコック型で固定しやすい。

②三脚プレートにカメラを取り付けて前後バランスをとる。パン棒を使いやすい位置で固定する。軽いカメラでは、このしっかりしたパン棒の重さでバランスが後ろに偏るので注意が必要。常に軽いカメラを乗せる場合はもう少し小型のパン棒でも良いと思うが付属しているのは上位との共通部品。カーボンの短めのものなどオプションが発売されれば良いかも知れない。

 

カウンターバランスの調整

①ドラグ(動きの重さ)を0にして、カメラを載せた状態で、前後のバランスが中心に来るようにプレート位置を決める。このときに軽いカメラだとパン棒の重さとバランスをとる必要があるので、かなり前の方に取付けることになる。

②バランスのアジャスターを時計方向に回転させてカウンターの圧を調整し、前後方向に動かしてもダレないし、反発もしない圧を見つける。これはカメラの重量だけでなく、重心も関係するので、クイックリリースなどで重心が上の方になれば圧を上げる必要がある。カウンターバランスの数値は目盛り板が回転して0〜100の数値で確認できるので、カメラや装備によってこの数値を覚えておけば、次からはその数値に合わせればバランスがスムーズに取れる。

▲カウンターバランスの数値は小窓に表示される。MAXが100。数値を覚えておけばバランスがとれた状態がすぐに再現できる。

 

③撮影の被写体や取り方に合わせて、好みのドラグ(1〜3の3段階)を選ぶ。ドラグはパン側、チルト側と同じ数値にすると、斜め方向のパンニング等の場合に力配分が均等になりやすいが、被写体の動きが水平に速い場合など、ケースや好みによって使い分けることができる。

これで準備は完了。3種類のカメラを載せてみた。アルカスイスのクイックシューを付けているので12mm程度は重心が高くなっている。

●FX3+サムヤン24mm単焦点=約843g

●GH6+12-100mm+クイックフィルター+ケージ=約1700g

●α7S III+24-105mm+純正マイクアダプターとマイク+ゲージ=約1700g

FX3はマイクを付けなければかなり軽量で、サムヤンの軽いレンズと合わせてみたが、パン棒が重いのでバランスを取るにはプレートの前の方に付けて、さらに前に出す感じ。軽いけどしっかりとバランスが取れて繊細に動かせる。

GH6の12-100mmはゲージとフィルターアダプターの重さもあり、カウンターバランス値100でちょうどバランスが取れた。重心が少し上がっているために下げればもう少し重さは許容されると思う。 α7S IIIには純正の背の高いマイクアダプターを付けて乗せた。こちらは同様に1700gだが、重心が高くなるのでカウンターバランス100でもチルトの途中からバランスが崩れた。中心付近では使えるし、パン方向は問題なかったので、広い範囲のチルトをしなければぎりぎり使える。

このようにバランスは重量だけでは分からないので、実際に使用する機材を載せて確認する必要がある。



▲GH6にケージ、ズームレンズ、フードの状態でカウンターバランスがMAXの100でとれた。

 

 

ヴィンテン100の動きが小型カメラでできる!

パン方向の動きも滑らかで、映画に出てくるような室内で何かを探すような心理的描写も簡単にできる。実際に使ってみて感じたのは、放送局で標準的に使われているヴィンテンVision100の繊細な動きを小型カメラ用に凝縮させたような感じだ。三脚の動きはある程度の重さがあったほうがモーメントの関係でジワッと感のある動きが作りやすいが、軽量のカメラでそれを作り出すにはより繊細な技術をヘッドに持たせる必要があるので、それは現状の価格帯ではほぼ不可能だと思っていた。

Vision Blueは無段階のカウンターバランスを実現しているが、上位機種に比べると今一つ繊細さに欠ける部分があったし、マンフロットのナイトロテック608は比較的軽量(H15より500g軽い)だが、独特の機構のために動きは他の三脚とは違うようにも感じる。そんな中でH15は繊細でしなやかな動きを実現して一歩リードしたように思う。これまでの三脚に不満のあった方は、ぜひ店頭や展示会などで、実機に自分のシステムを載せて体感されることをお奨めしたい。

(編集部より)

その後、H25ビデオヘッド、HS-250も試してもらいました。以下からどうぞ。

 

 

VIDEO SALON2022年7月号より転載