REPORT◎伊納達也

協力◎日本サムスン株式会社/ITGマーケティング株式会社

撮影現場でも定番カメラのひとつとなったブラックマジックデザインのBlackmagic Pocket Cinema Cameraシリーズ。このシリーズの現行カメラはどれもCFast2.0カード、SDカードの他にUSB-Cで接続したSSDでも収録が可能となっている。RAW収録が前提のこのカメラでは撮影素材の容量が大きくなりがちなので、長時間の収録が必要となる場面ではCFast2.0カードやSDカードでは収録メディアのコストが高くなることもあり、外部SSDを使う方も多いのではないだろうか?

今回は新しく登場したSamsung Portable SSD T7 Shield(以下、T7 Shield)を使って、Blackmagic Pocket Cinema Camera 6K G2(以下、BMPCC6KG2)での外部SSD収録について検証を行ってみた。

ちなみにBMPCC6KG2が登場したことにより、Blackmagic Pocket Cinema Cameraシリーズの現行モデルは、Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K(以下:BMPCC4K)、Blackmagic Pocket Cinema Camera 6K Pro(以下:BMPCC6KPro)、BMPCC6KG2の3モデルとなった。主な違いは上の表を参照いただきたい。BMPCC4Kはマイクロフォーサーズマウント&4Kセンサーのモデルで、BMPCC6KG2とBMPCC6KProはEFマウントにSuper35mmの6Kセンサーが搭載されたモデル。BMPCC6KG2とBMPCC6KProの違いは、内蔵NDがあるものがBMPCC6KPro、ないものがBMPCC6KG2という違いになっている。ちなみに6KPro6KG26Kのレコーダー部、およびUSB-Cの仕様は共通である。

▲Samsung Portable SSD T7 Shield 2TBモデル

BMPCCシリーズの収録用SSDといえば、Samsung Portable SSD T5が定番だ。コストパフォーマンスにも優れ小型軽量であることから、BMPCC4K/6K用のケージにはT5を収納するためのスペースがあらかじめ組み込まれているものがあったり、T5用の専用SSDクランプなども多く発売されていたりした。そんな定番のT5から大きく進化を遂げたのがこのT7 Shield。読み出し最大 1,050MB/s、書き込み最大 1,000MB/sと、速度がT5の倍近くまで高速化し、耐落下性能は2mから3mに強化、さらにIP65準拠の防塵防水性能まで追加されたモデルになっている。

BMPCC6KG2ではどのくらい収録できるのか?

実際にBMPCC6KG2に2TBのT7 Shieldを接続してどのくらいの時間収録ができるのかテストを行なってみた。記録時間は圧縮率や解像度、フレームレートの設定によって大きく変わるため、いくつかの設定で試した。

BMPCC6KG2でもっとも容量が大きくなる設定はBRAW 6K 50p 3:1という設定になるが、この設定では残念ながら20秒ほど収録された後、収録が止まってしまった。この設定はメーカーが公式サイトで公開している推奨メディア一覧の中にも収録が可能とされているメディアはない。また外部メディアを使ったとしても、6KG2USB-Cの仕様はUSB 3.1 Gen1、つまり5Gbpsであり(ちなみにURSA Mini Pro 12KUSB 3.1 Gen2、つまり10Gbps)、BRAW 6K 50p 3:1は記録できないということになる。

次に容量が大きくなりそうな設定としてBRAW 6K 50p 5:1をテストした。この設定では問題なく収録が可能で、連続で収録し続けても停止することなく、1時間42分収録することができた。これはだいぶ容量が大きくなる設定なので、もう少し圧縮率を上げてフレームレートも落としたBRAW 6K 29.97p 8:1という設定でテストをしてみると、4時間32分の記録時間となった。BRAWの圧縮率は選択肢がいくつかあるが、個人的には8:1あたりの圧縮率でも問題を感じたことはないので、このあたりの圧縮率で30pで収録しても4時間半以上撮れるというのは、ほとんどの現場で撮影中のメディア変更の必要がなくなると考えることができるだろう。

上記2つの設定では実際にカメラで収録して記録可能時間を測っているが、カメラ側が表示する推定記録可能時間と数秒しか誤差がなかったので、他の設定にした時にカメラ側が表示した推定記録を以下にまとめてみた。撮影内容によっても若干の変動がある可能性はあるが、ざっくりとした目安としてご覧いただきたい。

BMPCC6KにおけるT7 Shield 2TBの記録時間

50fps 29.97fps 23.98fps
BRAW 6K 3:1 N/A 1時間42分 2時間8分
BRAW 6K 5:1 1時間42分 2時間50分 3時間33分
BRAW 6K 8:1 2時間43分 4時間32分 5時間40分
BRAW 6K 12:1 4時間5分 6時間8分 8時間30分

上記の固定ビットレートの設定以外にもBMPCC6KG2では可変ビットレート(固定クオリティ)の設定(Q0、Q1、Q3、Q5)もあり、こちらの設定を使うと撮影内容によって圧縮率が変動するのでさらに記録時間が伸びる可能性もある。

BMPCC6KG2でのSSD収録について

▲BMPCC6KG2にSmallRig社のケージとクランプを使い、T7 Shieldを取り付けた状態

BMPCCシリーズは2つのメディアに同時記録することができないカメラなので、バックアップデータをリアルタイムで作成できず、データに関するリスク管理は慎重に考える必要があるカメラでもある。書き込みのスピードが途中で低下して収録が止まるなどのトラブルは絶対に回避したいところだ。今回テストを行なったT7 Shieldは高速SSDであり、書き込みの速度や安定性などの面でのリスクを極力減らせるという点と、外装が耐衝撃性とグリップ感に優れたエストラマー素材で覆われており、SSDクランプなどで固定した際に外れにくいという点は、数あるSSDの中でも安心感のあるモデルだと感じた。

▲SmallRig社のBMPCC 6KPro用Samsung T5・T7 SSDホルダー3272を使用

SSDを接続しての収録はどうしても接続箇所が外部に露出してしまうため、ケーブルが抜ける、断線する、接触不良が起きるなどのリスクはカードメディアでの収録よりも高くなってしまう。そのためSSDでの収録を行う際はUSB-Cケーブルの接続部分を固定できるホルダーやクランプなどを使用して、ケーブルに外部からの衝撃が加わった時にできるだけ接続部分に影響が出にくい状態にすることをオススメしたい。

撮影環境に合わせて最適なセットアップや機材の選択は変化するが、長時間収録したい、手持ちで屋外で振り回すわけではないのでケーブルの接続に関するリスクも少ないという場合にはSSD収録は便利でコスパの良い選択肢になると思う。以前、収録メディア別に1GBあたりにかかる費用を計算したことがあるが、カードメディアと比べてSSDのコストパフォーマンスは非常に高かった。そういった意味からも、BMPCC6KG2を使う際のメディア選びにT7 Shieldも選択肢のひとつとしてオススメしたいと感じた。

収録データの転送時間短縮にも

SSDで収録を行うと、収録後のデータをコピーする際の転送時間が短縮するというメリットもある。T7 ShieldとCFast2.0カードに同じ187GBのデータを置き、そこからMacBook Pro 14インチ M1 Proモデルの内蔵SSDにデータをコピーした場合の転送時間を比較してみた。

▲T7 ShieldはUSB 3.2 Gen.2ケーブルで接続。C-Fast2.0カードはプログレード社の256GBのものをトランセンドのリーダー(TS-RDF2・USB 3.2 Gen.1対応)で接続した。

今回は約190GBのデータを使用したが、これが1TB近くのデータになってくると転送時間の差もそれだけ大きくなってくる。こうした待ち時間の短縮にもつながるのはありがたい。

※ちなみに今回はテストにM1 ProのMacBook Proを使用したが、M1系チップを使用したMacではUSB3.2で外付けSSDを繋いだ時の転送速度がIntel MacやWindows PCよりも低下するという現象が起こり(M1では顕著に速度が低下し、私が以前テストした結果だとM1 Proでもわずかに低下していた)、その影響もあり上記の結果もIntel MacやWindows PCよりは遅めの結果になっている可能性が高い。その点を踏まえて結果はみてほしい。

これまでBMPCCシリーズの記録メディアとしてはT5が現場で愛用されてきたが、T7 ShieldはT5同様に長時間記録が可能なだけでなく、耐落下性能が強化され、防塵防水性能まで追加されたということもある。現場でメディア交換せずに安心して記録ができ、さらに編集環境への展開においてもスピードアップするというメリットがあるT7 Shieldは、これから業界で定番として使われていくだろう。

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