REPORT◉田村雄介 協力◉日本サムスン株式会社、ITGマーケティング株式会社 

機材協力◉ブラックマジックデザイン株式会社

2022年現在、4Kという解像度がどのカメラにも一般的に実装され、その進化は留まることを知らない。さらには6K、8Kなども当たり前のように実装される中、現時点で一般的に流通している中でも飛び抜けた解像度を誇るのが、2020年発売の「Blackmagic URSA Mini Pro 12K」だ。さすがにここまでの解像度となると色々な部分で性能的に制約を受けることもあり、撮影コーデックはブラックマジックデザインのカメラらしからぬ1種類のみとなっている。

しかしここがブラックマジックデザインらしいところで、その1種類のコーデックは圧縮RAW。今やお馴染みの.brawだ。さらに12Kを扱うための措置としてか、圧縮率は固定ビットレートで5:1〜18:1となっている。他のシリーズが3:1〜12:1であることを考えるとこれもデータ量ゆえということだろう。

さて、ここでネックになってくるのがやはりメディアである。2020年発売かつ筐体もURSA Miniシリーズと共通ということもあり、採用されているメディアはCFast。おおよそ550MB/sあたりの転送速度ではさすがに処理しきれない組み合わせが多数出てくる。その救済としてBlackmagic URSA Mini Recorderというリア部を延長する形のユニットもあるのだが、ボディサイズが変わってしまうことや少々予算も嵩む(¥66,980+SSD)ので、もう少し手軽にこの12Kの恩恵を受けられるとありがたい!

ということで、今回は「Blackmagic URSA Mini Pro 12K」&「SamsungポータブルSSD T7 Shield(2TB)」のマッチングを試してみた。(可能であれば前回の「【SAMSUNG SSD WORLD】SamsungポータブルSSD T7 ShieldをBMPCC 4Kでフル活用〜表面温度、連続記録での速度低下をチェックする(田村雄介インプレッション編)」から読んでいただけるとT7 Shieldの特徴などもわかりやすいかと思われます)。

最大読み出し速度 1,050MB/s、最大書き込み速度 1,000MB/sのスピードによってようやく12Kの本領が発揮できるフィールドが増えそうだ。

もはやCFastの記録スピードでは圧縮率を上げないと撮影すらままならない。この12K/30fps/17:9 DCIだと圧縮率5:1は3秒で止まってしまう。メディアの扱いは最新のBlackmagic OSが適用されるカメラであればスロット1、2に加えUSB専用のスロットも表示されるが、現在の12KのOSでは従来のスロット2かUSBの排他表示。将来的にアップグレードで最新OS相当になるとありがたいのだが。

Blackmagic RAWの特徴的な挙動

今回のレビューで、T7 Shieldを使用しながらいろいろテストしてみた結果、公称スペックから計ることのできないBlackmagic Cameraの動作具合、ここが肝になってくるのかなという印象があった。Blackmagic RAWは固定ビットレートであっても記録する映像や感度によって収録可能時間などが変わってくる。今回のテストで言うとT7 Shield 2TBで12K 17:9 DCI 30fps の5:1をボディキャップをした状態で約2時間38分、通常の撮影状態で約52分といった具合だ。

またボディ側の処理と思われる事象でわかりやすいものだと、BMPCC6K PROにて、6K/50fpsの3:1設定に対する推奨メディアはブラックマジックデザインのマニュアルにも記載されていない。しかし、上記設定で通常撮影のRECテストをした際、ISO400ではメディアフルまで回るが、ISO3200の場合だと4秒で止まってしまうという現象があった。恐らくハード側での処理などの弊害だと思われるが、今回はこういったブラックマジックデザインのカメラならではの面も考慮してのテストということはあらかじめご了承いただきたい。

また、固定ビットレートでもこのようにファジーな結果が出るため、自身の身の安全を担保するという意味で(さすがに結果が揺れすぎるとクレームになりそうなので)、今回は固定クオリティ(可変ビットレート)での結果は検証しないことにした。結論から言うとBlackmagic URSA Mini Pro 12Kの場合、かなり上位のフォーマットまでT7 Shieldにレコーディングをすることができた。

一体どこまで調べれば…?

まず前提条件としてT7 ShieldのフォーマットはexFATで12K本体の設定感度はISO800。これをすべての基準として、まずはメーカーのサポート内で推奨される12K 17:9 DCI 50fps 8:1をテスト。こちらは当然のごとくディスクフルまで軽々クリア。続いて最大解像度で5:1のテスト。前述した結果と重なるが12K 17:9 DCI 30fps 5:1ではボディキャップ閉めの黒撮影で02:37:53:02、画アリの撮影で00:51:50:02で、どちらもSSDフルになるまで撮り続けられた。

続いて12K画アリの5:1HFR(ハイフレームレート)40fpsという最大解像度&最大フレームレートだが、こちらはカメラカウント00:50:36:19でレコーディングが停止してしまった。HFRなので実際に回している時間は37分ほど。しかし停止してしまったとはいえファイルサイズは1.7TB。もうちょっと頑張ってくれれば…という気もするが、なにせ12Kだ。上出来ではないだろうかと思いつつ、少し気になったので完全にコールドスタートで再度計測したところ、今度は01:06:40:07でディスクフルまで回り切った。この結果から、恐らくこの12K HFR 40fpsのデータレート近辺がT7 Shield(2TB)の限界近辺ではないだろうかと推測できるため、ここからは少々サボって手っ取り早くブラックマジックデザインのサイトで12Kの仕様を見ていこう。

実はURSA Mini Proのページには「URSA Mini Pro 12Kのデータレート計算機」という大変便利な計算機が据え置かれている。解像度/アスペクトレシオ/フレームレート/コーデック/ストレージサイズを入力するとデータレートと最低保証収録時間が表示される。さらにフレームレートの欄に乱暴に大きい数字、例えば700などとスペック上あり得ない数値を入力すると、その時点で指定してある組み合わせの最大撮影可能フレームレートに直してくれる。これによってザクザクとデータレートが探り出していける。

サイト内のこれが計算機。12Kだけじゃなく各機種分置いて欲しいと思う。この画像を見ていただくとわかるのだが、5:1では40fpsが限界の12K解像度、8:1以下だと60fpsまで上げることが可能になる。こういった発見もある嬉しいサービスだ。

ここに先ほどの結果を入力すると、最大書き込み速度が1,000MB/sのT7 Shieldは「12K 17:9 DCI 30fps 5:1」の722MB/sを軽々受け止め、「12K 17:9 DCI 40fps 5:1」の963MB/sをギリギリ受け止めたということになる。他にもさまざまな検証していったところ、このHFR 40fpsというラインは実になかなか微妙なラインにあって、この後の検証に関しては、ぜひみなさん実機を入手した際には各々で確認してみていただきたいと思う結果となっている。個人的憶測では、おそらく単純なデータ転送だけではなく12K自身のマシン負荷もデータ転送に影響しているのではないだろうかと感じる。

以下、12Kのスペックシートからデータレートを抜粋した表を見てみるとサンプル例の中で最もデータレートが高いのは解像度が低い4Kスーパー16(240fps)となっている。HFRはやはりカメラ本体になかなか負荷がかかっているのではないだろうか。

Blackmagic URSA Mini Pro 12K 5:1 8:1 12:1 18:1
12Kフルセンサー(24fps) 578 MB/s 361 MB/s 241 MB/s 160 MB/s
8Kフルセンサー(24fps) 257 MB/s 161 MB/s 107 MB/s 71 MB/s
6Kスーパー16(24fps) 146 MB/s 91 MB/s 61 MB/s 40 MB/s
4Kフルセンサー(24fps) 161 MB/s 107 MB/s 80 MB/s 53 MB/s
4Kスーパー16(240fps) 648 MB/s 405 MB/s 271 MB/s 180 MB/s

やはりHFR。小さな4K(?)と言えど、このビットレートだ。

ここから先は各種条件を変えて行なったHFRテスト(便宜上ここでは31fps以上をHFRとして)を羅列してみよう。数秒で止まったものに関しては単純にNG表記とする。また記載のカウントはベースフレームレートの30fpsに対してのカウントアップになるため実際の撮影時間ではないこともご了承いただきたい。

12K 17:9 DCI 40fps 5:1・963MB/s  00:50:36:19(STOP)
12K 17:9 DCI 40fps 5:1・963MB/s(2回目) 01:06:40:07(ディスクフル)
12K 17:9 DCI 60fps 8:1・903MB/s 00:01:07:09(STOP)
8K 17:9 DCI HFR 75fps 5:1・803MB/s 01:38:35:02(ディスクフル)
8K 17:9 DCI HFR 80fps 5:1・856MB/s  00:02:26:19(STOP)
8K 17:9 DCI HFR 85fps 5:1・910MB/s   NG
8K 17:9 DCI HFR 120fps 8:1・803MB/s  00:45:34:16(STOP)
4Kスーパー16 17:9 DCI HFR 240fps 5:1・648MB/s  00:16:17:03(STOP)
4Kスーパー16 17:9 DCI HFR 240fps 8:1・405MB/s 10:58:03:25(ディスクフル)

この結果を見て考えるとどうもT7 Shieldの2TBで書き込みは間に合っていても途中で止まるというケースが存在するようだ。データレート的に大きい12K 17:9 DCI 40fps 5:1/・963MB/sがディスクフルまでいく場合があるのに、サイズとしては明らかに小さい4Kスーパー16 17:9 DCI HFR 240fps 5:1・648MB/sが途中で停止してしまったりしている。8Kの場合も75〜85fpsの間にどうやら壁がある。これは本体にも相当な負荷がかかっての結果なのだろうか。もしくは.brawのファイル構造的に厳しいのだろうか。さらに疑問が浮かぶ。同じUSB-Cから受けるBlackmagic URSA Mini Recorderの場合はU.2 NVMeの速度があれば受け切れるのか。と。

(ブラックマジックデザインに上限より低いデータレートでもコマ落ちするものでしょうかと訊いてみたところ、素材を確認してくれることとなったが、あいにく素材はすでに破棄してしまった後だった)

なんだかいろいろと疑問が残る結果になってしまったが、ひとつ朗報を。上記結果のNGパターン、圧縮率をひとつ下げればディスクフルまで回る。たとえばNGの8K 17:9 DCI HFR 85fps 5:1は8:1に、カウント1分少々で止まってしまう12K 17:9 DCI 60fps 8:1は12:1に、といった具合に一段階高圧縮率に変更してあげると、それだけでディスクフルまでレコーディングができてしまう。

正直BRAWは圧縮率をひとつ上げ下げしたぐらいでは差がわかりにくいほど上手く処理してくれているので、この圧縮率の変更ひとつで撮れるフォーマットが広がるというのはとてもありがたいところだ。 CFastでは難しいフォーマット選択を強いられていたから、かなり自由に設定できる。今回もT7 Shield 2TBのコストパフォーマンスに唸ってしまうのだった。重ねてになるが、使用状況で結果が動くのは否めないため、くれぐれも使用前には入念な計算とテストをしていただきたいと思う。

URSA Miniボディへの取り付け方法は

通常このサイズの筐体ともなると、外付けモニターやワイヤレス送信機、タイムコードシンク、EASY RIGなどカメラ構えて左側から天面にかけて色々なオプションが装着されることが想定される。そのゴチャッとしたところに大事な記録メディアであるT7 Shieldを据え付けるのはいささかいただけない。

そうなるとカメラ構えて右側に装着するのがスマートだが、しかしつるしの筐体のままではマウントポイントがグリップ用のロゼット一つしかないためこれまた厳しい。これは初代URSA Miniから変わらない部分のため、補うためのプレートというのが既に存在している。筐体が変わらないことのメリットと先人の恩恵を存分に受けた取り付けをするのが良いかと思う。

https://www.smallrig.com/smallrig-side-plate-for-blackmagic-design-ursa-mini-mini-pro-mini-pro-g2-aps1854.html

https://woodencamera.com/collections/blackmagic-ursa-mini-accessory-kits/products/rosette-side-plate-ursa-mini

どちらもほぼ同等と言っても構わないプレート2種。トッププレートなんかもあるにはあるが、URSA Miniの場合、VFやグリップなどに縛られる場合があるため個人的にはこのサイドプレート一丁で良いのではないかと思っている。

また12Kの外部ディスクのUSB-Cコネクタは左のパネル内側ではなく、右後部電源コネクタ下にさらに追加されたUSB-Cとなっている。このことからも右側に据え付けるのがスマートだ。ちなみに従来のUSB-Cはアップデート用になっていて、T7 Shieldを装着しても何も反応しないので間違わないように。

左写真のボディ右側の電源コネクト下のUSB-Cを使用する。右写真のパネル内側の端子ではないので注意。

左が現行、右が従来のUSB端子位置。右の端子は12Kの場合はファームアップに使用する。

今回使用しているプレートはSmallRigのもの。こちらはマウントポイントは若干少ないものの、NATOレールやコールドシューが内蔵されていてちょっとしたお得感がある。しかし前回も使用したクランプタイプのSmallRig「BHS2343」は今回のコールドシューにも非適合。おとなしくねじ止めでマウントすることにした。プレートと本体の間に若干隙間があるので、長めのケーブルは押し込み過ぎにならない程度に隠しておくと引っかかりもなくなって、より安全だろう。


取り付け方法その1。取り付け穴は最上段列左から3番目辺り。ここであれば移設されたロゼットにも絡まずそこそこ安全配置。

もうひとつ、純正のVFを使用している場合のみだが、安全にマウントできそうな部分がもう一箇所ある。それはVFのアーム上。ここには3/8ネジが切ってあり、1/4の変換アダプタを入れて装着してあげると実にしっくりくる。コツはVFを目一杯引っ張り出して設置するというところだが、通常の延長範囲内なので問題なし。ケーブルの取り回しさえ気をつければトップハンドルや操作に干渉せず、しかもVF動きを一切妨げないとなかなか良き場所だ。VFをお持ちの方には是非お試しいただきたい。VFは所持していないが、こっちの装着方法の方がしっくりくる気がした。


取り付け方法その2。カメラ操作時、普通は触らない場所なので着けてることを忘れてしまいそうになる。

これら2種の取り付け、どちらにも言えるところだが、くれぐれもケーブル取り回しには注意して欲しい。さすがにこのカメラ本体側用にカメラUSB抜け止めのアイテムなどは発表されていないからだ。

重ねてになるが、今回もT7 Shield(2TB)のコストパフォーマンスは目を見張るものがあった。途中しつこくT7 Shield(2TB)と書いているが、1TBよりも性能が高い2TBを使用するのは巨大なデータ量を扱うこの12Kカメラにおいてはマストではないかと思われるからだ。今回はOKラインの検証のためかなりの時間を要したが、ある程度の結論に達するところまではリスト化できたのではないだろうか。しかしくれぐれもこの結果は目安として撮影前に実機での検証を大切にして、撮影部の皆様には未だ少ない12Kの世界に切り込んでいって欲しいと思う。

Samsung Portable SSD T7 Shield(2TB)
https://www.amazon.co.jp/dp/B09Y1P5D12/ (Amazonサイト)

Blackmagic URSA Mini Pro 12K製品情報
https://www.blackmagicdesign.com/jp/products/blackmagicursaminipro

Blackmagic URSA Mini Pro 12Kの推奨メディア
https://www.blackmagicdesign.com/jp/support/faq/59030