【SAMSUNG SSD WORLD】CFexpressカードの代わりに汎用SSDが使えるのか?キヤノンEOS R5の8K RAW収録で検証


REPORT井上卓郎(Happy Dayz Productions

協力日本サムスン株式会社/ITGマーケティング株式会社

 

キヤノンEOS R58K RAW映像を内部に収録できる素晴らしいカメラだ。発売直後に入手して以来1年以上自分の作品を撮影する際にはこのカメラを使っている。ただ問題はCFexpressカードがいまだに高価なことだ。撮影する1カットが15秒とか短い私ですら1回の撮影で1TBを超えることもザラだ。ドラマ的な物を撮影したり、ジンバルを使って長回しする方にはメディアのコストが映像製作のコストに直結してくるのは想像に難くない。前回はATOMOS NINJA V+SamsungSSDを使ってコストパフォーマンス良く撮影するレポートを書かせてもらった。

【SAMSUNG SSD WORLD】キヤノンEOS R5の8K RAW出力をATOMOS NINJA V+とSamsung SSDで検証
https://videosalon.jp/pickup/samsung-ssd_inoue/

今回は別の手段でコストパフォーマンス良く8K RAWで収録をする方法を紹介する。

この記事を書くきっかけは私のこのツイートをサムスンの担当者さんが見てしまったことだ。

ビデオサロン編集部から「サムスンの担当者さんが興味を持っている。レビューしないか?」と連絡が。

いや、ちょっと待って。こういう系は記事としては色々まずいんちゃいますの? 大丈夫?大丈夫? と念を押して確認を取る。

今までもカメラを開腹して赤外線カメラにしたり、BMPCCのモニターを躊躇なくチルトモニターにしたり、買ったばかりのカメラにカスタムファームウェアを入れたりとメーカー保証対象外を上等としてやって来た私だが、一応社会性も持ち合わせているので流石におおっぴらに記事を書くのは一抹の不安を感じなくはない。ということで

「メーカー保証の対象外になる可能性もあるので自己責任でお願いします」

前置きが長くなったがここからが本題

EOS R58K RAW動画がカメラ内部で収録できる冒険的なカメラだ。温度上昇による記録時間の制限があるとはいえキヤノンさんのチャレンジングな姿勢は大好きだ。だがしかし8K RAWのファイルはサイズが大きい。正直EOS 5D Mark IIIの頃からRAW収録ばかりやっているのでファイルサイズの大きさに対する感覚は麻痺しているのだが、それでもCFexpressカードはいいお値段がする。おかげでいつもコストパフォーマンスと安定性の高いメディアを探している。そんな時に見つけたのが「ZITAY CFexpress to SSD Converter Adapter CS-303」だ。簡単に言えばCFexpressカードスロット経由でNVMe M.2 SSDを接続するものだ。

ここで少し余談になるが、CFexpressカードという規格はPCIeインターフェースが採用されており、現行のCFexpress2.0ではPCIe 3.0(Type Bの場合は2レーン)ベースとなる。Type BCFexpressの転送速度が2,000MB/s以下なのは、このインターフェース速度の上限の為だ。ちなみにCFast2.0SATA3ベースなので、こちらの転送速度が500MB/s前後なのも同様の理屈だ。尚、厳密に言うと同じ意味ではないが、ここではPCIeNVMeはほぼ同義と考えてもらっていいだろう。

▲カードスロットにダミーカードを差し、外部のNVMe M.2 SSDへコンバートする

 

ダメ元でSSDと併せて購入してみた。ダメだった。数秒で停止してしまう。原因はSSDの転送速度が遅かったこと。現在、SSDの主流はTLCタイプのNANDベースだが、スペックに記載されている書き込み性能はSLCキャッシュが有効な場合の速度である場合がほとんどで、キャッシュ切れ後は書き込み性能が落ちる仕様となっている。概して低容量のSSDの方がキャッシュ切れ後の書き込み速度が遅い傾向があるので、最低でも1TB以上のSSDを選んでおくのが無難だろう。尚、より安価なQLC NANDベースのSSDも出てきているが、キャッシュ切れ後の性能低下幅はTLC NANDのそれよりも大きいので、安定的な書き込み性能が求められる用途では避けた方がいいだろう。

CFexpressとしてはPCIe 3.0接続のSSDでもいいはずだが、より最新のインターフェースであるPCIe 4.0接続のSSDを検討することにした(下位互換性あり)。こちらでは問題なく動作した。そして今回テストする「Samsung 980 PRO 2TB」もPCIe 4.0 x4対応しているSSDだ。

▲Samsung 980 PRO 2TB
NVMe (PCIe Gen 4.0 x 4) 最大転送速度 : 読出7,000MB/秒 書込5,100MB/秒

▲ZITAY CFexpress to SSD Converter Adapter CS-303
コンバーター本体の他、ドライバーとネジ、そして謎のゴム栓が大量に付属。実売20,000円程度

▲裏面の蓋を開けSSDをセットする。普通のエンクロージャー(SSDケース)と同じだ。

▲カードスロットにダミーカードを挿す

▲キヤノンのカメラはカードスロットの蓋の開閉センサーが付いており、蓋が閉まっていないと電源が入らない。そのためセンサー部に先ほどの謎の赤いゴム栓を挿入する。無くすこと前提で10個以上も付いていたのか。

▲CFexpressカードと同様にカードを初期化する。

▲蓋が締まらず多少不恰好だがケース自体は1/4″ネジが付いているのでリグ等に固定するのが良いだろう。そのうち3Dプリンターで蓋を作りたいと考えている。

 

特に組み付けは難しい点はなく、収録もCFexpressカードと同様にできる。980 PROでも転送速度が追いつかず途中で停止することがないことを確認できた。レビューでも私用でもSamsung SSDをよく使っているが安心できる。

 

圧倒的なコストパフォーマンス

動作は確認できたので今回の主題「コスト」に目を向けてみよう。

メーカー動作確認済みメディアの中で私の周りのカメラマンが多く使っているのがProGrade Digital COBALT 容量650GB 実売価格 85,000円程度

そして動作確認済みメディアに入っていないが大容量モデルがあり低価格なDelkin POWER 容量2TB 実売価格 11万円程度

そして今回テストしているSamsung 980 PRO 容量 2TB 実売価格 4万円程度
ZITAYのコンバーター(実売2万円程度)を足しても6万円を切る。

メーカー動作確認済みメディアのProGrade Digital COBALTは最大容量が650GBなのでカード3枚で約2TBと考えると25万円を超える。そしてCFexpressとしてはコストパフォーマンスの良いDelkinと比べても約半分の価格だ。いかにコストパフォーマンスが優れているかわかるだろう。

●コスト比較

メーカー モデル名 容量 実売価格
ProGrade Digital COBALT 650GB 8.5万円
Delkin POWER 2TB 11万円
Samsung 980 PRO 2TB 4万円 + 2万円(コンバーター代)

 

 

意外に副次的なメリット 連続記録時間が長くなる

EOS R58K RAW映像を長時間収録しようとしても高温になり熱停止してしまう。CFexpressカードが30分程度で熱により停止するのに対し、コンバーターを使用すると2959秒で一旦停止するまで熱の警告も出ず記録できた。一旦記録が停止するのですぐ記録を再開する。ここから先はバラツキがあるのだが36分~60分連続して記録ができた(3回テスト)。CFexpressカードに比べ約23倍の時間連続して記録ができた。熱停止直後のCFexpressカードを触るととても熱くなっているのがわかるがSSD(熱源)を外部に接続したことで、内部の温度上昇が緩和されたためだと考えられる。ただし30分を超えた後の収録時間にはバラつきがあるので過度な期待はしないほうが良い。

●連続撮影テスト

単位 分

記録メディア メディアタイプ テスト1回目 テスト2回目 テスト3回目
ProGrade Digital COBALT 325GB CFexpress 30 25 30
Delkin Devices POWER 1TB CFexpress 24 26 26
Samsung 980 PRO 2TB SSD + Converter 60 46 36

記録画質 8K30p RAW
コールドスタートからの開始。テスト間隔は12時間以上空ける
29分59秒で一旦録画が停止する。30分以上の場合はすぐに再開した時の時間。
秒単位は四捨五入
CFexpressカードは私物のためコスト比較したものと容量が異なる

▲今回比較に使用したCFexpressカード
ProGrade Cobalt 325GB(左) / Delkin Devices POWER 1TB(右)

 

 

読み出し速度を計測

2TBのデータとなるとバックアップに時間が掛かるので読み出し速度も重要だ。今回は計測方法を3パターン試してみた。USB 3.2 Gen 2 及び Thunderbolt 3接続のCFexpressカードリーダーを使った計測とコンバーターからSSDを取り出しUSB 4.0 / Thunderbolt 3 エンクロージャーに移し替え計測。WindowsMacそれぞれで同じ計測をおこなった。

測定に使ったソフトは映像業界の定番Blackmagic Disk Speed Test

▲読み出しに使用したカードリーダー。
ProGrade USB 3.2 Gen 2 ダブルスロットカードリーダー PG05.5 (左)
ProGrade Thunderbolt 3専用 シングルスロットカードリーダー PG04(右)

▲ORICO NVMe M.2 SSD to USB(TB3/USB 3.2 Gen2兼用)エンクロージャー(外付けケース) M2V01-C4

▲今回検証に使用したPC。ともにThunderbolt 3ポートを持つ。
MSI Prestige 14 Evo(左)/ Apple MacBook Pro M1 Max(右)

▲WindowsではCrystalDiskMarkが定番だがMac版と両方あるソフトとしてBlackmagic Disk Speed Testで計測した。今回重要なのは右側のREAD(読み出し速度)

●読み出し速度( : Windows / : Mac)

単位 MB/s

メディア USB 3.2 Gen 2 Thunderbolt 3
ProGrade Cobalt 325GB CFexpress 910 / 813 1500 / 1500
Samsung 980 PRO 2TB コンバーター+カードリーダー 911 / 817 1404 / 1533
Samsung 980 PRO 2TB エンクロージャー TB3接続 2394 / 2662

 

データの読み出し速度はCFexpressSSD+コンバーターもCFexressカードリーダーで読み出す場合はほぼ一緒だ。WindowsMacでも大きな差はない。USB 3.2 Gen 2接続のカードリーダーの場合、インターフェース速度(1,000MB/s程度)がボトルネックになっているが、TB3接続のカードリーダーの場合、逆にCFexpressのインターフェース速度がボトルネックになってはいるものの、USB接続と比べて40%程度速い1,500MB/s前後という結果になった。

一方、コンバーターからSSDを取り出し、エンクロージャーに移して計測するとカードリーダーで読み出すよりもさらに高速化し、USB 3.2 Gen 2接続時に比べ約3倍の速さとなる2,500MB/s前後の速度を記録した。またWindows機に比べM1 Maxチップを積んだMacBook Proは少し速度が速くなる。但し、SSDを移し替える際にSSDが熱くなっていたり、物理的、電気的な破損リスクがある(私はあまり基板を触りたくない)ので注意が必要だ。

 

コンバーターはEOS R5以外でも使える

ZITAY CFexpress to SSD Converter Adapter CS-303は、EOS R5以外のCFexpressを使っているカメラでも動くものもある。たまたま手元にあったニコンZ 6IIで試したが使うことができた。しかしZ 6IIRAW動画ではないのでファイルサイズが小さく、わざわざ使う必要はない。しかし、年内に発売されるZ 9RAWの内部収録(8K/60p)が可能だ。もし使うことができればとても魅力的な選択肢になるのではないだろうか?

 

まとめ

ZITAY CFexpress to SSD Converter Adapter CS-303Samsung 980 PROの組み合わせは安定してEOS R58K RAW映像を収録できる。コストパフォーマンスはCFexpressに比べ優れ、読み出し速度もThunderbolt 3対応のエンクロージャーを使うとかなり高速になることがわかった。

デメリットはリグなどを使わないとコンバーターのケースをスッキリと取り付けられない点だ。

今回はEOS R5での検証だったが、今後出てくるであろう8K RAW内部収録をできるCFexpress Type Bカードスロット搭載のカメラでも使用できることが予想される。

ポケシネ4Kで外付けSSDによる4K RAW収録が可能になったことで、高速、安価かつ大容量の記録メディアとして汎用SSDが注目されることになって久しいが、今回の試みを通じてCFexpressカードの環境でも同じような可能性が見えてきたのではないだろうか。

もちろん、最終的にはカメラメーカーが推奨しない限り、このような使い方はアングラな扱いになってしまうだろう。しかしRAW動画の高解像度化、高フレーム化が進むにつれ、生成されるデータ量が増大する中で、それを収録する記録メディアには高速性能、大容量化はもちろんのこと、普及には「ユーザーが手を出せる価格感」の実現も求められる。

そういった意味では、今回のSamsung 980 PROを使用した収録はコストパフォーマンスだけに限らず性能的にもとてもパフォーマンスが高く、大容量データを扱う選択肢の一つになりうるのではないだろうか。

 

◉Samsung 980 PRO (2TB)
https://www.amazon.co.jp/dp/B08THM8YGY/(Amazonサイト)

◉ZITAY CFexpress to SSD Converter Adapter CS-303
http://www.zitay.com/product/showproduct.php?id=49

◉ORICO USB4.0 NVMe SSD Enclosure M2V01-C4
https://www.orico.cc/us/product/detail/7328.html