先週、ようやく2カ月連続の付録進行が終わった。
とくに毎年恒例の機材カタログは体力と精神の消耗が激しい。今年もまたギリギリの進行になって、最後は妥協しなければならないところも残しながら終わった。
今年版は、メーカーの方々からも数多く支援をいただき、過去最大のボリュームになった。
本誌と合わせて全部読むと意識朦朧となるくらいのボリュームなので、ぜひお買い求めいただければ幸いです。
さて、そんな忙しい時でも本は買う。
会社から歩いていける神楽坂にできたかもめブックス。むかしから本屋があったところが、なんだかおしゃれな本屋に変身していたのである。手前はカフェ、奥はギャラリー、本屋の品揃えもセレクトショップというか。(残念ながら、ビデオサロンは置かれていなかった)
そこで見つけたのが、こんな本。
「スタジオの音が聴こえる」高橋健太郎・著
ステレオサウンドの連載をまとめたものらしい。
レコーディングスタジオにはそれほど詳しいわけではないが、1回目がベアズヴィル、2回目がロニー・レインズ・モバイル・スタジオときているから、あ、趣味が合いそうだと思った。
とどめは、最終章「1972年のレコードはなぜ音が良かったのか?」
このところレコードをあまり買っていないのだが、一時期、英米のシンガーソングライター(SSW)ものを漁っていた。経験上、ジャケットの裏を見ながら、1972年だったら、まず買っていた。ハズレることが少ないからだ。SSWの世界は、1975年にもなるとAOR色が強くなり、音もジャケットもそれ風になっていく。
著者の高橋健太郎さんは「1970年から1974年くらいまでのレコードの不思議なほどの音の良さに取り憑かれている人たちがいるのだ。」と書かれているが、それって自分のことだ。すかさずレジに本書を持っていった。
この本には、スタジオとそこで活躍した裏方の物語が書かれている。裏方といっても、グラミー賞を何度もとっているフィル・ラモーンのようなビッグな人もいるが、でも、ビリー・ジョエルを知らない人はいないが、フィル・ラモーンを知っている人は、そう多くないかもしれない。そんな裏方ばかり出てくるマニアックな本、誰が読むんだかと思うが、「待ってました」という人はいるし、そんなに詳しくない人が読むと、目を見開かれることが多い。
そして、そのスタジオで録音された5枚の推薦盤を改めて聴いたり、そのレコードを探して聴く楽しみができた。この本はなんども手に取りそうだ。
こういう本を書き下ろすのはかなり大変なことで、現実的には雑誌の連載をまとめるしかないと思う。書き手にしても、一気に書き下ろす時間はないし、たとえ多くはなくとも毎月原稿料が発生して、締め切りに間に合わせて書くということがないと、まとまるものではない。
ステレオサウンドを買ったことはないが、この本を生み出してくれたことに感謝。