10月号で「デジタル・フィルムメイキング入門」という特集をお届けました。
RED SCARLET-Xを例に、4KとRAWのメリットとワークフローについて
ざっと解説したものです。
ビデオサロンとしても初のREDの特集でした。
その続編として、BMCCも絡めて11月号でもレポートしました。


「フィルムメイキング」という言葉は、日本ではあまり聞きなれない言葉ですが、
これから新しい世界を始まる、という印象を持っていただくために、
あえて使ってみました。
今、その内容をベースにしたムック本を製作しています。
でも、そちらでは
おそらく「デジタル・フィルムメイキング」という言葉は使わないかもしれません。
一体何の本かわからないということになると損なので・・・。
さすがに本のタイトルとなると、「思い」よりは「売れゆき」を優先してしまいます。
さて、その「フィルムメイキング」とか、「フィルムメーカー」という言葉ですが、
アメリカではよく使われているようです。
プロからハイアマチュアまで幅広くカバーしているニュアンスがあります。
あと、ビデオグラファーとかシネマトグラファーという言葉も、
向こうでは具体的な職種としてイメージできるようですが、日本では一般的ではありません。
雑誌を作る側としては、そういう用語がとても気になります。
「用語」を作ってこなかったというのは、われわれメディアの責任かもしれません。
職種を指す具体的な用語があれば、プライドも生まれるし、その職種になりたいという人も出てくる。
なにより外から見たときのイメージアップにもなります。
なにもカタカナのカッコ良さげな用語をありがたがるということではないのですが。
話を元に戻して「デジタルフィルムメイキング」ですが、
実は「デジタル・フィルムメイキング」というマイク・フィギスが書いた本があります。
日本語に訳されていてフィルムアート社から出版されています。
ビデオサロン誌上でもどこかで小さく紹介したことがあるはず。
この本、いい本ですので、ぜひご一読をオススメします。
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マイク・フィギス(あのマンフロットのフィグリグの考案者です)は
この本のなかで、しきりにアマチュアという言葉は「死語」だと繰りかえしています。
「僕が知るかぎり、現在「アマチュア」という言葉は死語になったように思う。今や誰でも映画製作者なのだ。これには理由がある。かつて、プロとアマチュアを隔てるものとして2つの大きな要素があった。その2つとは金と技術だ。スーパー8で撮影するのがアマチュアで、16ミリまたは35ミリで撮影するのがプロという時代がかつてはあった。(中略)ところが、今やそんなそんな世界は忽然と消え去り、それに伴ってアマチュアという人種も絶滅したというわけだ」
「スケートボーダーの彼はアマチュア・カメラマンでもあったのだ。もっともアマチュアという言い方にはもはや意味がないので、他の若者と同じように、ベンも映画をつくっていた、と言ったほうが正しいだろう」
といった具合。このくだりは好きなところです。
考えてみると、音楽の分野でもデスクトップで制作できるようになり、
インディーズのレコード会社が増えてきたあたりから、プロかアマチュアか、などという
分類が意味をなくしたような気がします。
この本はEOS 5D MarkIIが出る前に書かれたものですが、
「おわりに」にカメラのデザインのことに触れられています。
デジタル一眼の登場以来、大判カメラにしても各社いろいろなスタイルを模索していますが、
ひとつの参考になる意見かもしれません。
「カメラは僕たちの体のサイズ、手の大きさ、力の強さなどにより適したものとなるだろう。それは良質のスチールカメラを作ってきた職人たちが至った結論と、同じところに行き着くかもしれない。つまりニコンやライカ、キヤノンのカメラがそうであるように、両手で持ったときにしっかりと安定し、指を萎縮しなくても手に納まるようにできていて、ボタンなどがちょうど操作しやすい大きさで、老眼鏡をかけなくても何と書いてあるか見えるようになっているようなカメラだ」
とすると、最近のモジュールデザインとか、リグを前提にしたデザインというのは、
マイク・フィギスに言わせると正しい方向じゃないということになりますね。
スチルカメラの延長線上にあるという意味では
EOS C100あたりが理想に近いでしょうか。
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