※この連載は2014年5月号から2016年12月号に掲載した連載「トリタイ映像研究所」をリニューアルしたものです。今回のテーマは以前の連載から継続したテーマで掲載しています。

Vol.1「エネルギーボールに動きをつける・その1」
作例・文●タイム涼介

週刊ヤングマガジン(講談社)で漫画家デビュー。近年はコミックビーム(エンターブレイン)にてI.C.U.を連載。主な著作に「アベックパンチ」、「日直番長」、「あしたの弱音」などがある。2011 年に「アベックパンチ」が映画化され映画原作者となったのをきっかけに、映像制作を開始。過去の劇場公開作品には「男女大戦」、「実験失敗家族」、「イルカ少女ダ、私ハ」があり、いずれも脚本、監督、編集、VFXのすべてを手がけている。新潮社のWEB漫画サイト「くらげバンチ」で新連載「セブンティウイザン」がスタート。隔週金曜日更新。

動画解説・エネルギーボールを人物と合成する


●撮影・編集:タイム涼介
●モデル:鈴木琴乃

エネルギーボールを合成する撮影素材

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▲エネルギーボールを頭上に掲げ反り返り勢いよく投げる。モデルのプロポーションを引き出せるポーズを考える。素材のファイル名は「攻撃」にした。

【STEP1】エネルギーボールをアルファチャンネルで背景をくり抜いて書き出す

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以後のレンダリング負荷を軽くするためにトリタイ32(2016年11月号)で作成した「エネルギーボール」を映像に書き出す。「ファイル」>「書き出し」>「レンダーキューに追加」をクリック。
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画面下のレンダリングキューにある「出力モジュール」の(A)「ロスレス圧縮」と書かれた部分をクリックすると、左の「出力モジュール設定」のウィンドウが立ち上がる。
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初期設定のAVIではファイルの容量が大きくなるので「形式」を(A)QuickTime。(B)「形式オプション」をアニメーションに設定して、(C)「ビデオ出力」>「チャンネル」を RGB+アルファにして、エネルギーボールの背景が透明になるように設定にしたらD「OK」ボタンを押す。
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(A)部分「エネルギーボール(コンポジション名).mov」を押すと、(B)のウィンドウが立ち上がるので、出力するファイル名と任意の保存先を決め。ファイル名は「エネルギーボールアルファ.mov」とした。(C)「レンダリング」ボタンを押してムービーを書き出す。
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(A)新規コンポジションを作成し、撮影素材「攻撃.mov」とその上層に「エネルギーボールアルファ.mov」のレイヤーを配置する。「エネルギーボールアルファ.mov」の描画モードは(B)「加算」にして、馴染ませる。

エネルギーボールの大きさを合わせる

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「エネルギーボールアルファ」のレイヤープロパティを展開し、「スケール」を30%に縮小。選択ツールで縮小したレイヤーを選択して、ドラッグ&ドロップで「位置」をモデルの手元に移動する。
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縮小すると光が弱いので「エネルギーボールアルファ」のレイヤーを選択し、「エフェクト」メニューから「描画」>「CC Light Burst2.5」を適用。

【STEP3】エネルギーボールに動きをつける

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時間インジケータを0秒地点に配置し、「位置」のを押して、キーフレームを起動する。
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少しずつ時間を進めながら、モデルの動きに合わせてエネルギーボールの位置を移動していく。動きの軌跡を表す線状のモーションパスが自動的に作られる。
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「エネルギーボール」を画面の外まで移動させるため、プレビュー画面を縮小する。コンポジションパネル左下の拡大率を変更。
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モーションパス上の頂点にある四角をクリックすると、ベジェハンドルが表示される。ベジェハンドルをドラッグして曲線を作る。ハンドルの長さと角度で曲線を調節できる。

グラビアコーナー・機材と少女

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モデル●鈴木琴乃
機材 ●ビデオSALONモバイル三脚セット
http://www.genkosha.com/vs/goods/entry/30cm2.html
今回の素材の撮影で最も重要だったのはモデルのポージングだ。絵コンテの段階では撮影は短時間で終わると予想されたが、撮影が始まると予想外に時間がかかった。実際に生身の人間をファインダーを通して見てみると絵コンテの状況を再現するのが難しくなったり、別のこだわりが発生して演出を追加したくなったりもする。撮影に迷った場合は願望と現実との境目に着地点を定めてからカメラを回すとよい。
このカットはサッカーのスローイングのようにボールを投げる仕草なのだが、モデルが魅力的に写るためにポーズを調整していく。手足がより長く見える姿勢を考えつつも顔が隠れない配慮も必要だ。思い切り反り返ることでウエストのくびれが強調され、男性では不可能なしなやかな動きが演出できた。こうなるとできるだけアップで撮りたいという願望が生まれるが、そこは現実とのバランスでアングルを決めなくてはならない。頭上まで持ち上げたエネルギーボールが画面内に収まり、そして投げたボールの軌跡が分かる程度の横のスペースが必要だ。
このカットも撮影時間を長く使えるように日中の撮影にした、この場合素材が明るすぎてエネルギーボールを合成した時にボールの輝きが目立たなくなってしまう。編集時にエフェクトで露出を下げれば問題は解決できるが、モデルの足元に濃い影があると不自然になるので、日中でもなるべく曇りの日に撮影するとよい。

●この記事はビデオSALON2017年1月号より転載
http://www.genkosha.co.jp/vs/backnumber/1602.html