◎ワイヤレスマイク導入のススメ

動画の進化が凄まじい。デジタル一眼の大判センサーの画が世を席巻し、その後4Kそして目の前には8Kも迫り、またLog収録やHDR化と、映像に関する多様性はとどまるところを知らないようだ。同時に撮り手側にも時流がありこれまでの映像収録がクルーと呼ばれるグループワークだったところからワンマンオペレートに大きくシフトしている。これは悪いことばかりではなく独特の映像素材を作り上げる世界の広がりを意味する。もちろんアマチュアの映像作家は、古来このスタイルを貫いているのであって、ワンマンオペレートの先達と言えるのかもしれない。
そのような映像制作スタイルの中で、少し疎かになっているのが音声だと言える。「音」に強くなれば大きな武器になる。マイクはできるだけ被写体に近づけたいが間をケーブルで結ぶとそれだけ煩雑になり、機動力も落ちる。

そこで注目を浴びてくるのがワイヤレスマイクシステムだ。今回の特集は現場での手軽な取りまわしにたけたマイクを研究。検証結果は本誌記事をぜひ読んでいただきたい。ここではワイヤレスマイクの特性について動画を含めて説明をしていきたい。

 

■送受信機間の距離と位置関係

ワイヤレスというからには、ケーブルレスでどこまで安定して音声を飛ばせるかが問題となる。そこでまず、見通しの良い場所でレポーターにカメラ直近の場所から5m、そして最長100mまで離れてもらってその音声収録をチェック。

今回のワイヤレスマイクは形態で大きく分けると、ラベリアマイクタイプとハンドマイクの2種類。そのマイクを着けた(持った)レポーターに、5m、10m、20m、40m、100mの場所で話してもらったわけだが、その各地点でレポーターには回転もしてもらった。つまり、送信機を背中側につけたシステムも、ハンドマイク形式のためカメラ側に送信機があるシステムも、1回転することで送信機が人間の陰に隠れる時間ができる。

▼ラベリアマイクタイプ (送信機は今回、背中側のポケットに装着)

▼ハンドマイクタイプ


ここでは2つのシステムを動画で紹介する。
ソニー UWP-D11 (ラベリアマイクタイプ。送信機は背中側に装着)

B帯の定番機だけに安定した性能を見せてくれた。40m程度までは回転を加えてもまずは大丈夫。それからさらに離れる場合、送信機がカメラつまり受信機のほうに向いていれば音声をキャッチできるが、送信機が背中側、つまりレポーターによって遮蔽されると音声は途切れる。

 

オーディオテクニカ ATW-1702 (ハンドマイクタイプ。マイク本体が送信機を兼ねている)

2.4G㎐帯からは代表してオーディオテクニカの1702。デジタルだけに電波が飛べば安定した音声が聞ける一方、途切れる時は途切れるという性質がある。

 

■電波が飛び交う場所で使えるか

電波の多い環境、街中などで使いたい時も多い。ここで安定を見せていたのはB帯の機器全般だが、電波の混信する可能性も高いのでまず空いているグループ、周波数を見つけることを忘れずに。
ここでは代表してソニー UTX-P03 + URX-P03D (B帯、ハンドマイクタイプ)

受信機の場所から 3m 5m 10m 20m 30m 40m 50mでそれぞれコメント (画は静止画処理をしています)

 

誌面では各製品を実際に使ってみてのインプレッションと、電波性能・操作性などをレポート。電波の受信性能は遮蔽物があまりない環境で安心して運用できる目安の距離とした。

 

◆ギター演奏による音質テストも決行

ワイヤレスマイクと言えば人間の声などをいかに拾うかが問われる製品だが、今回テストをはじめてみて各製品のクオリティが高いので楽器収録という音質が問われるシーンでのテストもしてみることにした。ワイヤレスシステムながら業務用途を目されるものは予想以上にしっかりとした音質で収録できた。各製品のギター収録動画をチェックしてみてほしい。

動画は1分弱のギター曲(演奏 浦田まこと)、曲の終盤に送信機と受信機のあいだを人が横切るというテストも加えてみた。

B帯
アツデン 35BT+310UDR

ゼンハイザー ew 112P G3-JB

ソニー UWP-D11

ソニー UTX-P03 + URX-P03D

2.4GHz帯
オーディオテクニカ ATW-1701/L

オーディオテクニカ ATW-1702

ロード RODELink Filmmaker Kit

ロード Newsshooter Kit

1.9GHz帯
ゼンハイザー AVX MKE2 SET

ブルートゥース タイプ
ソニー ECM-AW4

 

◎電波の知識も理解しておきたい

また誌面では、ワイヤレス製品に欠かせない、電波にまつわる基礎知識も解説。マイクのレポートとあわせて読んでいただきたい。