パナソニックAG-HMC155開発インタビュー(中編)


前編からの続き)


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◆DVXからメモリーを経て第3世代に
――DVX100のあとに、P2メモリーを使用したHDカメラのHVX200が登場しました。
宮城 P2という半導体メモリーを使うことで、より信頼性が高くなるということもありましたけど、メモリーを使うことで、よりバリカムに近づけることができる。つまり、バリアブルフレームレートという、撮影時にフレームレートを変えることで、映画のようなスローモーションやクイックモーションを実現できる。これはメモリーだからできる機能です。
ただ、HVX200はハイビジョン化したこともありますし、DVデッキ部を積んでいたこともあり、ハンドヘルドとしてはかなり重たいカメラになってしまいました。ただテープ記録で使う方もある程度いらっしゃいますし、結果的にはこれもヒットモデルになりました。
この二つの流れを引き継いだのが、この第3世代の2モデルなんです。
――AVCHDカメラのAG-HMC155とP2カメラのAG-HPX175の2モデルですね。
宮城 第3世代の命題は重さでした。とにかく軽く作らないといけない。ハイビジョンであってもDVX100の重さに戻そうと。しかし、DVXよりは進化していなければなりません。結果的には155はDVXと同じくらい、175はそれよりも200gくらい重いところで収まりました。前の世代の200よりは600gくらいも軽くなっています。
メカ部がないから軽くできて当然だと言われてますが、今のDVのメカってすごく軽いんですよ。実はP2カードの重さとDVのメカってほぼ同じなんです(笑)。ですから簡単なことではありません。小型軽量化するためにレンズもすべて新開発しています。
◆P2とAVCHDのどちらを選ぶか?
――175がP2カメラで、155がAVCHDカメラ(愛称はAVCCAM)です。どちらがいいのか悩むユーザーもいるかもしれません。
宮城 放送局関係の人にはP2をおすすめします。放送局のシステムとコーデックもメディアも同じですから。一方で、現時点で P2は持っていない業務ユーザーはすべてAVCHDがいいのではないかと我々は思っています。そのあたりのコンセプトは、製品の仕様にもあらわれていまして、P2の175には、SDIをつけていますが、155はHDMIになっています。放送局の機材と繋がることを重視した175と、より手軽にモニタリングできることを重視した155という差別化です。ただ、これもお客様次第で、放送局でも海外取材であれば、どこででも手に入るSDカードを使える155が向いているかもしれません。
――DVX100が、DVCPROではなく、DVを採用したときも、コンビニでもメディアが手に入ることが重要ということでしたが、155はまさにDVX100のコンセプトに近いですね。
宮城 民生のインフラをベースにすることで、コストパフォーマンスが高くなります。今後、民生のビデオカメラもDV、HDVからメモリーを使ったAVCHDカメラにシフトしていくとすると、DVカメラもいつまで生産できるかわからない。AVCHDカメラにシフトしていくのが当然の流れではないでしょうか。
その意味では、HMC155というのは、DVX100の正統的な後継だと言えると思います。
吉岡 開発側の意識としても、175と155は似て非なるものなんです。
レンズは一緒だし、ボディもほとんど共通ですし、2機種同時に作ってきましたから、完全な兄弟機といってもいい。でも意識的には、155は100の後継という思いがありますし、175は放送局から降りてきた製品という違いがあります。たとえばメニューなどのユーザーインターフェイスは、別モノになっています。ここは客層の違いも意識しています。
――ということは、コーデックは別にして、画作りが違うのですか?
吉岡 いえ、画作りは一緒ですね。100から200、そしてこの2機種については、同じ担当者ですし、この2モデルはDSPがまったく一緒ですから。他社だと民生ベースのものと、放送局から降りてきたものではチューニングが異なりますが、われわれは部署がわかれていませんから、それはありません。
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▲左がP2HDモデルのHPX175、右がAVCHDモデルのHMC155。
――このシリーズの画の特徴を言葉で説明するとしたら?
吉岡 ナチュラルさを重視しています。放送用カメラのサブカメラとしても使っていただけるように意識しています。それがAVCCAMにまで引き継がれています。
かつてはブラウン管のマスターモニターでチェックしていましたが、最近では大型のプラズマディスプレイで見られることも想定しいます。プラズマでやや強調されて見えることがあるので、ほんとに気持ちですが、和らげています。
◆家庭用にはない高ビットレートのモードを採用
――家庭用のAVCHDとはまったく傾向が違う画ですが、さらにプロ用ならではの高ビットレートモードもありますね。
吉岡 レンズも民生レベルのものではありませんから、最高の画質を出していきたいということで、PHモードを採用しました。AVCHDの規格としては、最大24Mbpsまでしか使えないのですが、それを最大限生かしたいということで、平均で21Mbps、最大で24Mbps近くまで振れます。このPHモードというのは、プロのHDモードという意味なのですが、その下のモードはパナソニックの家庭用カメラと合わせています。今回は採用していないのですが、将来的にはPHモードで非圧縮のオーディオにも対応したいと思っています。
――それはAVCHDの規格のなかに含まれているのですか?
吉岡 はい。オプションですけど。民生機ではまずあり得ないでしょうが、プロ用としてはそういう要望も出てくるでしょうから、考えています。今回はビエラでも再生できるようにということで、PCM記録は見送りました。それもあって、現在のPHモードは平均21Mbpsに抑えているのです。
また実際の映像音声以外にメタデータを持っていまして、無償ダウンロードできるAVCCAM Viewerというソフトで、シリアルナンバー、撮影日、撮影内容が管理できます。
実は、無償ダウンロードソフトには、DVCPRO HDへの変換コンバーターというものもあるのですが、それでデータを変換しても、それらのメタデータが残るようになっています。
――そういったメタデータまでAVCHDの規格に含まれている?
吉岡 そうなんです。これもオプション規格ですが。AVCHDにはオプション規格がいろいろあって、製品に合わせて、フレキシブルに使えるんです。実はAVCHD規格を作る段階で業務用チームも一緒に入って策定に加わっていたのです。規格ができたあとで変更はできませんから。テープレス時代の新しい規格ですので、当然プロも使えるものにしたかった。民生フォーマットといえども、業務用で使うことを想定して仕込んでおこないと、使えない規格になってしまいます。我々にはすでにP2で得た蓄積がありますから。
さらに、PHモードでは、720p記録も選択できます。これも民生ではありえないでしょうが。このモデルではバリアブルフレームレート機能を採用していないので、今後は検討したいと思っています。
――PHモードはMPEG2でいうとドレくらいのレベルの画質と考えていいのでしょうか?
吉岡 25MbpsのHDV相当以上といっていいでしょう。
――35Mbpsまでは行かない?
吉岡 それはちょっと厳しいかもしれませんね。
――P2のDVCPRO HDコーデックとAVCCAMの映像を比較するとどうなのでしょうか?

吉岡
 うーん、それは一長一短ありますね。DVCPRO HDはフレーム内圧縮で、AVCHDはフレーム間圧縮ですから、たしかに違いはあります。それからAVCHDは1920×1080のフルHDの画素ですが、DVCPRO Hでゃフィルタリングをかけていますので、1280×1080ですから水平解像度の違いはあります。
ですから必ずしもどちらがいいということは言えないですね。
編集環境という面では現段階ではP2のほうがはるかに充実していますから、今は運用しやすいでしょう。ただAVCHDのほうはこれから確実に充実していきますから、時間の問題だと思います。
――カメラの機能面ですが、DRSという機能が新しく入っていますね。
宮城 放送用のカメラではすでに採用しているものですが、ニュース用だけじゃなくて制作用にも案外使えるとういことで好評な機能です。コントラストが大きい被写体を撮る場合に、画面のエリアごとにガンマを変える機能で、たとえば部屋の中と屋外を同時に撮る際に、明るい部分の輝度を検出してそこだけガンマを変えて、白トビを抑えるというものです。

スポーツなどでも、先日のオリンピックでも、テニスコートで屋根の陰になっているところと日向のところがあって、普通に撮影したら日向は白くとんでしまうのですが、DRSを入れるとそれを避けられということで、かなり活用されていました。
後編に続く