【新刊ムック発売特別企画】Dronegraphers〜空撮作品と機材見せてくださいVol.4 『Kanlaon Volcano(Canlaon) Aerial shoot』佐々木光洋さん


この記事は2018年12月18日発売「DRONE空撮GUIDEBOOK改訂版2019」に収録しているインタビュー記事です。ドローンを活用し、美しい映像を作り上げるクリエイターとその使用機材についてお話をうかがいました。

 

佐々木光洋
ささきみつひろ/映像・Webサイト・CGなどを手がける制作会社NAVA代表。企業PVをはじめとした映像制作のかたわら、東南アジアの国々に渡って景色や建築物を撮影して回る活動を何年も続けている。その素材をもとに構成した映像作品は、海外の映像コンテストで数々のアワードを受賞している。

WEB●https://www.nava.tv/

 

海外映像コンテストでも高い評価を受ける映像作家
バックパック一つで東南アジアを撮り歩く

ドローンで撮影した映像作品で、日本だけでなく世界のドローンフィルムメーカーコンテストで数々のアワードを受賞しているのが佐々木光洋さん。映像やWeb制作などを手がける会社NAVAを営む佐々木さんは、仕事として依頼を受けて映像制作を行うかたわら、アジア各地の自然や寺院、街をドローンで撮影し、映像作品に仕上げて発表する映像作家としても活動。世界各地のドローンフィルムメーカーコンテストにエントリーしたこれらの作品は、高い評価を得ている。

「子どもの頃から8mmカメラでロボットのおもちゃをコマ撮りしたり、当時出たばかりのビデオカメラで『○×殺人事件』という作品を撮ったりもしていましたね」

小学生のときにはヒッチコックの作品に親しみ、その卒業文集では将来、映画監督になると書いていたという佐々木さん。当然、大学時代には映画サークルに入って作品作りに励み、番組制作会社勤務を経て2005年に仲間とNAVAを立ち上げた。「現場で取材するニューススタイルは、その頃から培ってきたもの」だという。

現在は主にWebサイト向けの映像を中心に、CGやVR映像の制作、プロジェクションマッピングなども手掛けるNAVA。「常に映像の新しいジャンルにチャレンジしてきた」という中で、ドローンにもそのひとつとして初代Phantomが発売された頃から取り組んできた。

「当時のドローンは危なっかしいもので、仕事に使える信頼感が欲しかった」という佐々木さんは、北海道から沖縄まで、日本中を巡ってドローン映えのする景色を撮って回った。その頃に撮影した映像は、いまでも映像素材として多くの引き合いがあるという。

さらに佐々木さんは海外にもその足を延ばすようになる。台湾、香港、マレーシア、ベトナム、スリランカ、バングラデシュなど、撮りに行くのはもっぱら東南アジアの国々。「アジアには都市と地方の両方に魅力的な場所がたくさんある」といい、日本ではあまり知られていない場所や建造物を、さらにドローンという今までにない視点で描くのが佐々木さんのスタイルだ。

今も忙しい仕事の合間を縫って、ドローンを手にアジアの国々に出かける佐々木さん。「1月はマレーシアで祭りをテーマに撮影します。また、前回は許可が下りず地上の画しか取れなかったバングラデシュも、今度こそはドローンで撮りに行きたいですね」。

 

フィリピンの奥地に佇む大噴火のエネルギーを秘めた不気味な火口をのぞく

『Kanlaon Volcano(Canlaon) Aerial shoot』

フィリピン中部のネグロス島にあるカンラオン山。標高2470mのこの火山は、2015年、2016年に大規模噴火を起こすなど活発な噴火活動が続いている。そんなカンラオンが噴火する直前の火口付近を撮影したのがこの作品。2017年3月にJapan Drone 2017の一環として開催された、「Drone Movie Contest 2017」でグランプリを受賞している。

「ドローンの映像だけでどこまで興味の引ける映像が作れるかということをテーマに撮影に取り組みました。当時、この山に関する画像や資料はあまりなく、とにかく行ってみようとネグロス島には着いてはみたものの、山にたどり着くルートがわからなかったりするなど、頂上に至るのは大変でした」

撮影はPhantom2とバッテリー4本を持って、900mのベースから半日で2400m超の火口に登頂し、バッテリー2本分をフライトさせた。3分の作品は印象的なこの深い火口カルデラから始まる。ドローンは滝も落ちる熱帯雨林を抜け、その先にそびえたつ山体に駆け上っていく。作品の中盤以降は、その噴火の気配を押し殺したような、不気味な火口の様子をドローンならではの距離感で克明に表現している。この作品は世界のさまざまなドローンムービーサイトなどでも紹介され、あまり知られていないカンラオンの存在が世界に知られるきっかけとなった。

 

幻想的なブルーファイアと硫黄採掘現場の人々の姿が織りなすイジェン火山のリアル

『ROAD to KAWAH IJEN (イジェン火山への道)』

本作品はインドネシア・ジャワ島東部にあるイジェン山をテーマにしている。イジェン山はその頂に直径約1kmの火口湖があり、地底から激しく噴出する硫黄の採掘が行われている。作品は硫黄採掘に携わる人々を、周辺の街に住む人の暮らしと合わせて描いた作品だ。

火口湖から吹き出す硫黄ガスは、昼間は噴気としてしか見えないが、夜になると青い炎となって暗闇を照らし、液体に凝縮して流れる硫黄が燃える様は幻想的で“ブルーファイア”と呼ばれる。人は近づけないこの600℃にも達する炎に、佐々木さんはドローンを接近させて撮影。青い炎と黄色い硫黄、さらに荒々しい山肌と、イジェン山を象徴する色とディテールで作品を彩っている。

また、この作品はただドローンによる空撮カットでつづられているわけではない。このイジェン山の硫黄採掘は、数十kgにもなる硫黄の塊を天秤棒に下げた籠に詰め、それを担いで200mもの火口壁を上り、3km離れた麓の村まで運ぶことで成り立っている。日当1500円程度で働く荷役の様子を描くなど、この作品に映像美だけではないメッセージが込められている。「ドローンの空撮カットだけであったり、ワンシチュエーションの作品だと、だんだん飽きられるな、と実感している」という佐々木さん。この作品は報道番組を作ってきた佐々木さんならではの、視点に富んだ作品に仕上がっている。

 

 

Phantom 4 Proをメイン機に地上の撮影、編集もワンストップで取り組む


▲一人で撮影することが多いため、主に使うのはPhantom 4 ProとMavic Pro。左はドローンを始めた頃に使っていたF550。


▲フィルターはNDに加え、海の撮影などではPLも使用。


▲Phantom 4は「台湾でPhantom 3を買った際に付いてきた」ケースを加工して収納している。


▲地上の撮影にはα6500を使用


▲撮影データはHDDで管理。


▲編集・カラーグレーディングはEDIUS Pro 9で行う。カラーグレーディングではワコムのペンタブレットを使用。


▲編集では「最初に曲を決めてリズムに合わせてマーカーを刻み、そこにカットを合わせていく」ことも多い。

 

 

動画だけでなく写真にも力を入れる

海外の取材では動画と同時に写真も撮影する。特にアジア各地の寺院を真上から捉えた作品はドローンならでは。「モスクは真上から見ると、今まで見ていたものとは違ったカタチの発見があります」。

 

アジアでの作品撮りに取り組む

「欧米に比べてアジアには都市以外にも撮りがいのある場所が多い」という佐々木さん。海外での撮影は一人で取り組むことが多いが、マレーシアでは地元のInstagramerとともに撮影することもあった。

 

ドローンユーザーをつなぐイベント「泥人会」を毎月開催

SNSではなく直接ドローン好きが交流できる場を設けたいと、2017年夏に佐々木さんが始めたミーティング。月1回で開催され、すでに12回を数える。毎回大勢のドローン愛好家が集うイベントとなっている。

 

●12月18日発売の新刊MOOK
ドローン空撮GUIDEBOOK 改訂版2019年より転載