URSA Mini Pro と Osmo RAW で
撮影した作品を例に解説する
高画質 4KRAW ワークフロー

Report◉カモディ・マシュー Matt (e)  Production

この記事は、「ビデオグラファーのための映像制作機器ガイド」に掲載されたものを再構成しています。

本作品「AUSTRALIA –Wonderland–」の撮影・編集の話に触れる前に、まず簡単な自己紹介をさせていただきます。オーストラリアで生まれた私は1999年、20歳のときにワーキングホリデーで来日し、それ以来人生のほぼ半分を関西で過ごしてきました。不思議な国、日本への冒険は、大学への挑戦に変わり、日本で就職。そして結婚して子供が生まれ、永住の道を選択しました。映像制作の仕事を始めたのはわずか3年前ですが、運に恵まれて現在は刺激を与えてくれる仲間とともに製品PVやショートフィルムなど様々なものを撮らせていただいています。映像の仕事は軌道に乗りつつあるとはいえ、まだまだ勉強不足の身でもあり、悪戦苦闘の日々がこれからも続くでしょう。

本作品のメイン機材の選び方

今回は帰省にあたってオーストラリアを紹介するムービーを作成しました。遠征の撮影機材を選ぶにあたり、いくつかの項目とその優先順位を決めました。

① UHD以上の内部収録RAW(圧縮RAWなら尚可)、② 4K/60p以上に対応、③ 内蔵NDフィルター、④ EFマウント、⑤ 優秀な内蔵モニターかEVF、⑥ 動画撮影に不可欠なモニタリング機能(フォールス・カラー、ウェーブフォーム、ゼブラなど)、⑦ 起動が速い。

これらすべてを満たしてくれるカメラは現時点でたった一台。起動が速く(わずか5秒)、内蔵NDもあり、4.6K/60p のRAW撮影ができる URSA Mini Pro です。

レンズは荷物の制限もあり最小限に絞って多くの状況に対応できる EF-S17-55mm F2.8 IS USM と EF70-200mm F2.8L IS II USM の2本。そして必要に応じて EF 1.4X III Extender も使用。2x Extender も検討しましたが、画質の劣化は許せない範囲と判断。内蔵NDがあるので、面倒なND装着の作業から解放されます。

三脚はザハトラーFSB 6とマンフロットのカーボン脚。マイクは SENNHEISER MKE 600。メディアはキャンピングなどでバックアップできないことも想定して2日分に相当するサンディスクの128GB CFAST2.0を6枚とサンディスク Extreme Pro SD カードを合計1.5TB分。 4.6K RAW は4:1の圧縮で撮影してもそれなりの容量を要求します。128GB の CFast2.0 では、4.6K/60p 4:1 RAW は6分しか収録できません。そこで容量をセーブするために、CFast2.0はスローのためだけに使うことにして、SDカードのほうに、4.6K/24p 4:1 RAWを収録することにしました。SDカードに4K以上のRAW映像が収録できるなんて本当に素晴らしい時代になりました。

▲競馬の現場での三脚の基本セットアップ。URSA  Mini Proに70-200mm F2.8L IS II USM と必要に応じて1.4X III Extender。荷物の関係でオーストラリアでバッテリーは IDX DUO 95 の一本勝負。起動が非常に速いため移動中や待機中は電源をこまめに消す。無駄なカットも撮らない。こういう制限があると、データ量の多いRAWということもあって、フレーミングなどを前もってじっくり考える癖が身に付いて効率アップにもつながるという効果が期待できる。

▲ザハトラーの FSB 6 とマンフロットのカーボン製脚は軽量のわりに安定したパン・チルトを提供してくれる。三脚はケチると後で痛い目に合うというのが今までの教訓。個人的にこのセットアップは最低ラインと考える。

Osmo RAW の登場

本映像の最初のカットをどのように印象的なものにするかを考えた際、「空撮」という結論を出しました。しかし、最近普及してきたドローンでは個人的にインパクトがなく、どうせならヘリをチャーターしてシドニー湾を綺麗にかつエピックに撮ろうと。メインカメラに選んだ URSA Mini Pro をジンバルに載せての撮影も考えましたが、ヘリが大きくなり=料金も高くなり、一人で大型ジンバルを海外に運ぶのも無理があります。かといって画質は犠牲にしたくない。悩んだ末、ジンバル系の撮影を Osmo RAW で行うことにしました。ジンバル撮影も 4K/60p は欲しいところですが、その代わりに Osmo RAW は 4K/30p までのRAW動画を片手で撮影できるほどコンパクトなので荷物も減らせてありがたい限り。電源は外部接続で余っている Ronin-M のバッテリーを使用。レンズはオリンパスの M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0 と M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8 の2本を用意しました。

▲いかに Osmo RAW が便利な機材かがわかる写真。当社の「ディレクター」を抱えての撮影。シドニー湾を Olympus の25mmで撮影。ピントあわせなどの扱いは少し癖があるが、最近発売された「有線ビデオアダプター」で Wi-Fi接続を使わず安定した映像転送を実現。使い勝手が大幅によくなった。写っているハンドホイールはフォーカス送りしたい際に活用。それ以外はケーブルを外してAFを利用した。

DaVinci Resolve でのRAW現像・編集

現時点で URSA Mini 4.6K や URSA Mini Pro で収録できる3:1と4:1の圧縮DNGファイルはブラックマジックデザインの DaVinci Resolve でしか直接読み込めません。トランスコードの手間を省いてオンライン版の書き出しまですべて元のRAWファイルで編集・グレードするために DaVinci Resolve 12.5 Studio を使用しました。いくつかのノイズ処理やブラー効果などの機能を除いて DaVinci の無料版は今回使用する Studio版と操作が同じです。

4K RAW をノートで編集する場合は容量十分なSSDと高性能グラフィックカードを内蔵しているモデルがおすすめです。ちなみに今回の編集は DELL の Alienware 15 R3 という宇宙最強のゲーミングノートで行ないました。ストレージとバックアップは4TBの内蔵SSDと4TBの外付けHDDを用意しました。

DaVinci Resolveへのインポート URSA Mini Pro で撮った 4:1 RAWファイルをこの「MEDIA」スクリーンでインポート。RAWもDaVinci Resolve なら一般的な動画ファイルを扱うのと同じ要領でインポート。その映像を「EDIT」スクリーンで編集、「COLOR」スクリーンでグレードしてから「DELIVER」スクリーンで書き出す流れ。一貫してRAWでもインポートから書き出しまで本ソフトで完結。

Camera RAWでの現像 「GRADE」スクリーンの左下の Camera RAW でRAW現像を行う。Camera Raw 画面の右上の「・・・」をクリックしてResetを選ぶと各項目が調整可能になる。これは URSA Mini Pro も Osmo RAW も同じ。

シドニー湾の空撮

シドニーに到着した当日にさっそくヘリポートへと向かいました。事前に電話で簡単な打ち合わせをしたお陰でパイロットとの現地打ち合わせは5分で終了。ドローンもそうですが、パイロットに欲しい映像をきちんと伝えることが極めて大事です。ヘリは1分単位で料金が加算されるからなおさらです。打ち合わせを終え、日没前の綺麗な光を求めて大空へと飛び出しました。

ヘリの空撮は前にも経験はあるものの、ドアを開けて身を若干乗り出しての撮影は初めてです。撮影自体はドローンでよく使われるオリンパスの12mmレンズ(フルフレーム35mm換算で24mm)1本で湾全体をワイドに見せます。それにレンズ交換は時間がもったいない。

絞りはF8で逆光などに合わせて、適正露出を可変NDで微調整するやり方にしました。フレームレートは30p(24pタイムラインで80%再生)でシャッターは180°ルールに従って1/60秒。ISOは100。いうまでもなく、電源が入っている間にNDを手動で調整するとジンバルが誤作動するリスクはややあります。そこは一番神経を使ったところかもしれません。いくらRAW撮影でも露出を適切に設定しないとノイズやハイライトのクリッピングなどの問題につながります。

Osmo RAW のカメラ(X5R)とジンバル部分はドローンでは時速80km前後でも安定した映像を提供できますが、ヘリはそうはいきません。ローターの乱気流も加わってジンバルが風に負ける場合もあるため、フレーミングを犠牲にせず、揺れが出ないギリギリのカメラワークを要求されます。つまりカメラとジンバルが機内に入りすぎだとドアやローターが映り込み、また乗り出しすぎだと今度はジンバルが乱気流に負けるのです。これは経験しないとなかなかわからないことでした。

▲ドローンもヘリもパイロットとのコミュニケーションが重要。Sydney Helicopters は電話対応の時から大変親切でお陰でイメージ通りの撮影に成功。パイロットの Peter にも感謝。

▲まさにこのカットのためにヘリをチャーター。冒頭に印象に残る映像を持ってきて、その後は真ん中と最後に空撮のカットをまた入れる。初日に頭の中で描いたイメージを形にできて一安心。ここは旗と海の深い青色を際立たせるために CAMERA RAW でサチュレーションやコントラスト、WBなどのRAW現像項目をイメージに合うまで微調整。LUTと合わせてこの CAMERA RAW の設定だけでグレードが完成する場合も。8bitのH.264 コーデックならこのルックにたどり着く前に映像が醜くぶっ壊れる経験もしばしば。しかし、適切に撮影されたRAWデータならこんなベーシックな現像でほぼ完成する。慣れれば簡単なオフライングレードを10秒で完成できる時も。一度RAWの便利さを味わうと圧縮8bitコーデックになかなか戻れないが、言うまでもなく、撮影時にカメラのダイナミックレンジを最大限に生かしたRAWデータの取得は必要不可欠。

▲フィルムルックでありながらシャドウ部分を少し下げてハイライトのクリッピングを気にしながらコントラストを調整した。Osmo RAW と URSA Mini Pro は RAW収録とはいえ、ハイライトをクリップすると綺麗に戻せないこともあるため撮影時にギリギリのラインで露出を維持するのに神経を使う。経験上NDを利用しながら、ハイライトがクリップする寸前まで明るさを調整して撮影するとグレーディングでダイナミックレンジを最大限に引き出せる。RAWでも、圧縮コーデックを使う一眼でも、現場での撮り方が画質を大きく左右するので、いつも最高の撮影条件を求める。自然光に頼る際は日の出、日の入り前後の色づいた柔らかい光がおすすめ。

賑わう場所では Osmo RAW が大活躍

シドニー湾の次に向かったのは世界遺産のブルー・マウンテンズの中で一番有名な「スリー・シスターズ」です。観光客で大変賑わうこの場所での撮影は場所取りが大変です。海外からの団体客が大勢いる中で身動きがほぼとれないため、ここも Osmo RAW が大活躍でした。もはやメイン機材扱いです。ドリーショットで木々の後ろから姿を見せるスリー・シスターズのカットはそこら中にいる日本人の団体客が映り込まないように得意技の人間クレーン(?)に変身して手を上に伸ばした状態で人にぶつからないようにゆっくりと横移動。

カメラ設定もまたシドニーと同じ 4K/30p(24pタイムラインで80%再生)のシャッター1/60。ISOは100にしました。

30pの80%再生は中途半端では?と思う人もきっといるでしょう。ただ、Osmo RAW はありがたいほど軽いのですがジンバルとしては軽すぎるとも言えます。そのせいで、気持ち悪い微妙な上下左右の動きが映像に出やすいのです。「4K/30pの8割再生」はそれを緩和する一つの手法で、ゆっくりとしたドリーショットやオービットショットを丁寧に撮ると、よりスムーズな映像は実現可能です。

FilmConvert Proというプラグインでベースのフィルムルックを作ってからCamera RAWで詰める
WBはイメージに合わせて後で調整するため今回はカラーコレクションせずそのまま FilmConvert Pro という OPEN FXプラグインで簡単にノード一つでベースのフィルムルックを作ってそこから CAMERA RAW で見た目を詰める。このプラグイン以外に多数の LUT(LookUp Table)を所有していて、気分次第でいろんなルックを作る。もちろんそのまま LUT やプラグインなしで一からグレーディングすることもできる。

スピードの変更 EDITスクリーンでクリップを右クリックして CHANGE CLIP SPEED で再生速度を変える。この場合は 29.97p を 23.976p にするには速度を80%にして少々スロー再生。撮り方次第で映像をよりスムーズに演出する効果が期待できる。

羊毛刈りを撮る

現地人でもなかなか見られないものの一つは本物の羊毛刈りです。観光PRの映像でも撮影のためにわざわざ羊を用意するほど滅多に見られません。本作品の中にあるのは年一回しか行われない本物の羊毛刈りです。写っている羊小屋は1886年に当時の囚人達によって建てられたもので、その歴史を映像でも感じ取れるよう気を使いました。

ここは三脚や手持ちで URSA Mini Pro の 4.6K/60p と Osmo RAW のスムーズな動きを組み合わせました。小屋の中は薄暗かったため絞り開放で撮影した映像を後で DaVinci Resolve の CAMERA RAW でノイズが出ないように明るさを調整しました。

ここだけ Osmo RAW の ISO を400にあげました。ちなみに URSA Mini Pro はダイナミックレンジが最も出るのはベースISOの800で、撮影時に変更しないことを強くお勧めします。内蔵NDやレンズの絞りなど他の設定で調整するのがセオリーです。

明るさの他に室内撮影でしばしば直面する課題の一つはフリッカーや画面を現れる帯状のノイズです。羊小屋の照明が安物のLEDだったため、映像全体に上に向かって走る線が映像に出ていました。これはかなり目についたため、After Effects に持っていき「Flickerfree」というプラグインで除去しました。この Flickerfree は Resolve用のプラグインも存在しますが、まだ試用・購入していません。フリッカー対策以外の本作品の編集・グレーディングはすべて Resolve 12.5 のみで行ないました。

▲羊毛刈りの一コマ。Osmo RAW に 25mm のレンズを使用。4K/30p を80%で再生、音楽に合う遅めのオービットショットを。後で見て Osmo か URSA か、撮った本人も分からないほど Osmo RAW の画質は優秀。グレードは130年以上の歴史や職人達の渋み、牧場の土埃を感じさせる。

カラーマッチング URSA Mini Pro と OSMO RAW の画像をマッチングする際にこのように合わせたいカットの静止画(画像を右クリックでGRAB STILL)を同時に出してグレードを詰める。

競走馬を60pと120pで撮る

私は馬糞掃除においては、カメラより経歴がはるかに長く18年。実家が競走馬を飼っているからなのです。オーストラリアは競馬が盛んで、ぜひその美しく力強い姿を多くの人に見てもらいたいと思いました。

牧場は規模を問わずどこも朝が早い。6時起きで父と二人で馬の世話を済ましてから撮影を開始しました。朝日に染まった黄金な毛色が個人的に印象的で、餌をゆっくり食べる間に接近して URSA Mini Pro に EF-S17-55mm F2.8 IS USM をつけ手持ちで4.6K/24p と 4.6K/60p で撮影しました。URSA Mini Pro の撮影はすべてフレームレートを問わずシャッターアングルを180°に固定できます。フレームレートを変えても面倒なシャッター調整はいりません。

蛇足ですが、競走馬はひじょうに神経質で迂闊に近づくとマイクを食われたり頭を蹴られたりするなどの恐れがあります。子供のころに経験豊富な調教師が蹴っ飛ばされるのを見たことがあります。今回アップで撮ったのは割と落ち着いた母馬と仔馬でした。オスは基本的に気が荒いのでフェンス越しに撮ることをおすすめします。

競走馬はやはり競馬のシーンです。いよいよ田舎競馬の登場です。NSW州の各町の多くは競馬場を運営しています。私の故郷YOUNG町も例外ではなく、年2回レースを行います。ここは関係者のご協力をいただいて間近で撮影させてもらいました。URSA Mini Pro に EF70-200mm F2.8L IS II USM と EF 1.4X III Extender の組み合わせでコースのすぐそばに三脚を添えて狙います。馬はスローが似合うので4.6K/60pと2K/120p(1カット)を選択しました。

グレードのバッチ処理 DaVinci Resolve の便利な機能の一つはグレードのバッチ処理。使いたいグレードのあるクリップをこのように選択して「Apply Grade」をクリックすれば選択中の全クリップに CAMERA RAW 設定も含めてそのグレードが適応される。後は微調整すればグレード完了。大変ありがたい機能。

▲4.6K/60p のもう一つの利点は遠めの被写体でも解像感たっぷりのスロー映像を実現。圧縮の8bitコーデックなら細部の色やディテールが潰れてしまい、いくら4Kの映像でもここまで綺麗にはならない。

カンガルーの群れに出くわす

オーストラリアの象徴的な動物と言えば、本映像に登場するカンタス航空のシンボルでもあるカンガルーです。1カットは欲しいところです。動物園に行けば簡単に出会えるけど、それじゃ迫力がないので、野生のカンガルーを求めることにしました。カンガルーは涼しい朝方や夕方に餌を求めて山から下りてくるという習性がありますので、それを利用して URSA Mini Pro に EF70-200mm F2.8L IS II USM+EF 1.4X III Extender の組み合わせで待ち構える作戦です。

これが一日目にいきなり大当たりで10数頭の群れに出くわしました。夕日に赤く染まる毛並みはまさに観光PRに出てきそうなもので、初めて野生のカンガルーを見たわが子供達も大喜び。まさに一石二鳥です。

動物は編集で少しでも伸ばして見せられるように、基本的に 4.6K/60p で撮影しました。すぐ逃げない場合は24pに切り替えてもう1カットを撮ったり、2Kでクロップを利用してよりズームインした120pを撮ったりと臨機応変に行ないました。カンガルーのように出没ポイントを予測できないものは車で探すことになります。特に鳥は難しく、近づくとすぐに逃げる野鳥が多く、発見からRECを押すまでの時間が勝負です。ここで URSA Mini  Pro の起動時間の速さがモノを言います。5秒で立ち上がり5秒で設定やフォーカスを合わせてRECを押す。起動の遅いカメラなら撮り高ゼロのところを何カットか撮影することに成功しました。

▲ここは夕日に染まった毛色を引き出すためにWBを少し上げてミッドトーンを気持ち下げる簡単な微調整で完成。元々のイメージに近いクリーンな映像を撮ればグレーディングは苦労しない。経験上 URSA Mini Pro は1~2ストップオーバーで最もクリーンで解像感溢れる画質を引き出せる。露出アンダーになるにつれ色情報の欠如やノイズ、FPN(固定パターンノイズ)の出現で画質が荒くなる。F2.8でも夕方に差し掛かると60pの撮影が難しくなり、85mm/f1.4 か 135mm/f2 の明るい単焦点を一本持つと心強い。

空の色を特定して処理をする 車で通りながら鳴き声でわかったガラー(モモイロインコ)の群れ。天気はどんよりの曇り空で色は生えない。そのときは Resolve の Qualifier ツールを使用して空の色を特定して色合いやサチュレーションを変更。RAWでなくてもできることだが、普通のコーデックならブロックノイズなどが現れてカットが台無しに。Prores 4444 でも12bit の色情報は確保できるが、同じデータレートなら Camera RAW で現像するRAWワークフローの便利さを選びたい。

まとめ〜RAWという選択肢

かなり余談が多い原稿になりましたが、ここまで見てきたように URSA Mini Pro と Osmo RAW の映像は DaVinci Resolve ならごく普通の動画としてインポートした上で、いつも通り編集したものを、Camera RAW で現像するだけ。難しいことも怖いことも何一つありません。少なくとも風景の場合はダイナミックレンジを最大限に生かすために撮影時にハイライトをクリップする寸前まで上げて収録すればグレーディング時の可能性は広がります。肌の色合い、いわゆる人間のスキントーンをメインにエクスポージャーを決める場合のセオリーはもう少しシビアでさらに数ページの記事になってしまいます。ただ、12bit の RAW画像なら色も忠実に再現されて思い通りのルックは実現できます。プロの写真家がJPEGで仕事しないのもまさにその理由。皆さんも騙されたと思ってぜひ導入してみてください。このワークフローを味わえば普通のコーデックに戻れなくなるかもしれません。

私とBMD 〜カモディ・マシュー

母国BM社の URSA Mini Pro をメインカメラに選んだのは起動時間を含む機動性の良さ、そして圧縮RAWを外部レコーダーなしに一般的な CFast2.0 とSDカードに収録してすぐ編集できるという優れたワークフローを簡単に構築できるため。もし BMPCC の4K版が出るとアクション系の撮影でも 4K RAW 以上にしない理由がなくなるのでは?

PROFILE

1979年生まれの豪州出身。1999年来日以来日本語と日本文化に精通するために猛烈に勉強して2001年に大阪大学に入学。2005年に文学部日本史専修卒業後はフリーランス翻訳者・通訳者として活躍。映像に目覚めたのは2010年頃にハワイの旅行中に初めて買ったネオ一眼でマニュアル設定の面白みに気づき、帰国後 EOS KISS X3 をすぐ購入して日々練習。2014年に翻訳・通訳を少しずつ減らしながら未経験の状態でフリーランスカメラマンとして映像業界に飛び込む。1年目でRAW撮影を味わい、現在は Blackmagic の URSA Mini Pro や RED を活用したRAW撮影を中心に国内外の製品PVやショートフィルムに携わるまで成長。