【メーカーインタビュー 】Libec HS-150 〜HSヘッドの内部構造を世界初公開!


軽量ミラーレス一眼でも無段階カウンターバランスを実現! カーボン脚とのセットが登場!HSを商品化した世界に類を見ない技術とノウハウに迫る

協力/平和精機工業株式会社 取材・文/編集部 一柳

 

Libec HS-150

下のパーツはHS-350のヘッド、H35のものだが、HSシリーズの基本構造は同じ。カウンターバランス用のバネが真ん中に入っていて、それがヘッドの傾きによって動き、反発する力を生み出す。


 

 

カウンターバランスの機構の違い

今年の4月に発売開始されたリーベックの新しいビデオ三脚、HSはどのチルト角度でもカメラがきれいに止まる「完全バランス」機構を採用した画期的なシリーズだ。同社では2020年に発売開始されたNXシリーズもヒット商品だが、こちらは段階式カウンターバランス。製品ラインナップリストでは価格や耐荷重、質量などにしか目にいかないかもしれないが、このふたつは製品コンセプトが大きく異なる。今回の取材では平和精機工業の本社でヘッドの中身を見せてもらいながら、機構の部分からそれを紐解いていこう。

まずNXは段階式カウンターバランスで、樹脂を多用し、小型軽量ながらも非常に良い動きを目指したもの。この機構自体は他社でも採用して安く作っているが、多くは樹脂を使いすぎ、精度も低いため、ガサガサな操作性になってしまう。NXはポイントで金属を使い、かつ組み立ては熟練の日本の職人が行うことで、微妙な歪みを吸収しているという。つまり職人の技に頼ることで「ギリギリまで攻めた設計」が可能になっている。

一方HSは、無段階での完全バランスを実現し、究極の操作性と高い剛性を目指したもの。外観からは違いが分かりにくいが、カウンターバランスの機構そのものが全く異なる。この機構を実現するには精度の点から金属を採用するしかなく、必然的にヘッドは重くなる。実はこの機構は非常に難しく、ヴィンテン以外ではリーベックしか存在しない。寸法公差を非常にシビアに設定して遊びを許さない構造にしないと製品として成立しないからだ。部品精度の管理や組み立て技術の関係でこれからも他社が実現することは難しいだろう。

ヴィンテンでもできていないのが、800gという軽量カメラでも完全バランスがとれるHS-150だ。搭載重量が小さい(バネが弱い)ほどスムーズな動きを実現するのが難しく、部品精度や高度な技術が必要で、莫大な投資がかかるため、進出しにくいのだ。

そこまでして実現した無段階完全バランスだが、これはぜひ体験してもらうに勝るものはないだろう。段階式であっても自分のシステムにピタリとバランスが合えばいいが、それは稀でどこかで少し妥協しながら使うことになる。どのティルト角度でもカメラの重さとバネの強さが釣り合っている状況は、カメラワークに効くだけでなく、操作時にストレスが減る。ベテランのカメラマンが完全バランスにこだわるのはそこもある。

リーベックの完全バランスシステムは2009年発売のRSからスタートしているが、HSはRSの単なるモデルチェンジではなく、RSや上位モデルのノウハウをつぎ込んだ新規設計になっている。ベアリングの厚みを増して、剛性や耐久性を上げたり、鋳造で作っていた部品を削り出しに変更し、コストかけて精度を上げるなど、バックラッシュの軽減、経年劣化によるガタつきを防止する構造になっている。使い勝手の面でもリファインされた。大きく、より軽い力で回せるカウンターバランス調整つまみや、カウンターバランスメーターやアクセサリーポートのネジ穴などは、RSユーザーはきっと感動するに違いない。

 

無段階完全カウンターバランスと段階式カウンターバランスの構造の違い

HSシリーズ(無段階)

ヘッドの真ん中には完全カウンターバランスを実現する機構が入っていて、それを背後のノブで締め込み、反発する力を調整する。バネの動きはぜひ動画を確認してほしい。バネの横にティルト側のドラッグ機構、ヘッドの下に同じ機構が横向きに配置されている。

 

NXシリーズ(段階式)

こちらは段階式のカウンターバランスで、ノブを回すとバネユニットが切り替わり、バネの強さが変わる(動画参照)。ヘッドを水平にしないとノブを回せないというのは機構上よく分かるだろう。ノブやプレート部分は樹脂とアルミ合金を採用。

 

 

トータルで軽くしたシステム 

前述したとおり、HSの完全バランス機構自体はどうしても重くなってしまうが、軽量カメラに合わせたビデオ三脚であれば、システム全体としてもっと軽くしてほしいという声が全世界からあるという。あえて音声機器やモニターは載せず徹底的に軽量を追求するという方向もありだろう。そこでカーボン脚とのセット販売もHS-150のみメーカー側で用意した。軽さと動きを両方追求したこのセットも選択肢として面白い。

 

カーボン脚とのセットが登場!

HSシリーズ発売後、全世界からもっと軽いシステムが欲しいという要望が集まった。そこでH15とカーボン脚のRT20Cを組み合わせた(約1.2kg軽減)HS-150C/150MC(写真右)を11月から発売。250以上はパンのドラッグが重いのでねじれ剛性を加味して設定していない。

 

 

 

●VIDEO SALON2022年11月号より転載