武蔵野美術大学映像学科は映画、アニメーション、CG、メディアアート、映像空間(インスタレーション)、写真という6領域からなり、主に映画領域ではブラックマジックデザインの製品を活用しているという。映像学科の授業を受け持つ小口詩子さん、岡地さん、多持大輔さんに導入の経緯や学生からの反応を聞いた。

取材・文●編集部 伊藤

今回お話をうかがった小口詩子さん(左)、多持大輔さん(中央)、地さん(右)と、映像学科の学生の五味采樺さん(左から2人め)、渡邉龍平さん(右から2人め)。

Blackmagic Cloudについて

授業に導入する経緯

 去年の夏から学生と一緒に進めるプロジェクトがあったのでまずはそこでBlackmagic Cloudを使いました。僕と学生がダブル監督で進める連載ドラマの企画です。遠隔でやり取りしながら、それぞれが編集したものを1本化するというワークフローで、プロジェクトを送ったりしていたら大変だけど、週1配信に間に合うようにスピーディーに進めていかないといけないという中で、サービスが発表されたので使ってみようと思って。

タイミングとしてはBlackmagic Cloudが出てすぐぐらいでした。検証もされていないし、使用感の口コミもあまりないような状態から始めてみたところ、最初はトラブルもあったり、パスマッピングの概念がわからなかったりと試行錯誤しましたが、だんだん慣れてきて「これは学生にもやらせられるんじゃないかな」と。そこで、ちょっと広い何十人規模の授業の中で導入してみることにしました。

授業で導入したのは今年の4月からです。夏休みまで8週間のドラマ制作の集中授業があって、そこで使いました。今年は10人弱ずつくらいのグループに分けて作品制作し、その過程でプロジェクトライブラリを作ってもらって共同編集してもらうという流れにしました。

実際に導入してみて

岡 最初にクラウドのファイルの管理の仕方や、オンラインファイルをどのように持つのか、プロジェクトファイルをどれだけ分配するのか、どのようにパスマッピングをするのかなどを教えました。どのようにパスマッピングをするのかはちょっと教えるのに難しいところもありました。具体的には、それぞれの環境の中で適切な場所にファイルがあってパスマッピングという機能でクラウドの方に認識してもらってやるというのは確かに最初の方はリンク切れをどうしたらいいのかみたいなことが起こることもありました。

実際に学生に使ってもらって、編集して調整する作業にたくさんの人が関われるというのがすごくいいことだと感じました。今までだと、例えば撮影が終わってからフィニッシュまでの間に2、3週間ぐらいしかないというようにタイトなスケジュールの中でやらなきゃいけなかったので、オフライン編集が終わってピクチャーロックするまで一旦待たないと音が張り付けられないといった状況がなく、同時並行で進められるのはとてもよい点でした。

学内にはMAルームがあって、例年ならばPro Toolsを4日間くらいで操作マスターしながらフィニッシュしていくという工程がありましたが、今年はFairlightで仕上げるということにしました。モニター環境はきちんと整えた状態で、そのまま絵の方にも戻れるような状況で作業を進められました。

録音音響が専門の先生に、Pro ToolsをFairlightに置き換えた場合にどのような影響があるかを確認したのですが、検証してもらって根本的な音のレベルの扱い、プラグインの面などでできないことはほとんどないということがわかりました。フェーダーとの連携もできました。作業のなかで「Fairlightではどうするんだっけ?」といったことはたくさんありましたが、今年に関してはそれでかなりクオリティも上げられる範囲を上げて作業ができました。

カラーについては、同時にカラーグレーディングもできるのでそれは非常に良かったなと。例年はPremiere ProからDaVinci Resolveに持ってきていましたが、その移行の段階でもちょっとトラブルが起きることもあったので、そこに関しては非常に楽になってきました。大幅な時間の短縮にもつながりました。

デメリットはファイルの管理の難しさや、ネット環境によってエラーで落ちてしまうことが頻発したグループもあったことです。プロジェクトが込み入ってきた時にちょっと重くなってしまうことがあって、そういうシステム問題もあり得ると思っています。クラウドが重くなってきた時は、ファイルを間引いて新たなプロジェクトを作るなど対処の仕方はまだ試行錯誤が必要なところなので、そこはもうちょっと進化が待たれるなと感じています。

コミュニケーションツールとしてのおもしろさ

 自分自身もBlackmagic Cloudを使用していて感じるのはコミュニケーションツールとしてのおもしろさです。授業で使用した際はまだなかったのですが、現在ではプレゼンテーションという機能があってウェブ上にデータをあげてもらうとコメントが書き込めるんです。会議に参加している人たちがビデオ通話をしながら同時に映像を見てコメントをすると、マーカーがそのままタイムラインに乗って、スムーズに修正を反映できるのがかなり便利です。

 

ハードウェアについて

学科で使用している機材

多持大輔さん(以下、多持) カメラはBlackmagic Pocket Cinema Camera(以下、BMPCC)の6K Proを5台と、6Kが3台あって合計8台です。そのほかにはATEM Mini Pro ISOを配信が必要な場面で使用しています。モニターはBlackmagic Video Assist 12G HDRを3台使っています。

BMPCC6Kはおそらく3年前に導入し始めて、その後6K Proを昨年導入しました。学生数が多く、なるべくたくさんの人に機材を触る機会を持たせたいとうことで6K Proを急遽入れたという経緯があります。スイッチャーはコロナがあって配信の需要が高まったのでそこから導入し始めています。

小口詩子さん(以下、小口) ブラックマジックのカメラ購入提案も岡先生からでした。

実際に授業で使用している機材も見せてもらった。

学生同士のコラボレーティブな関係を作るためにシネマカメラを導入

実際の授業の様子。

 授業には多い時で100人弱くらいいたので、12人くらいのグループで合計6本制作したこともあります。そのなかで脚本や録音部、撮影部といった役割分担をしています。

例えば、撮影部が数人いる時にフォーカス送りをカメラマンと息を合わせてやる作業は映画作りの中ですごくコラボレーティブな部分です。映画作りの過程で、人と人とが関わり合う部分をどうやったら授業で再現できるかという設計でシネマティックなカメラを使いたかったという経緯があります。

通常はシネマティックなカメラを使うためにコラボレーティブな関係が生まれていきますが、学生同士の関係を作るためにシネマティックなカメラを使いたいと考えました。さらに、それが撮影の作業だけでなく、脚本とか演出とかにも関わってきます。

授業を受けている学生の多くが映画専攻でなく、その後いろんなジャンルに進むので、映画作りという過程で人と人との関わり合いが生まれるんだよというのを知ってもらおう、体感してもらおうという意図があり、それを実現できるのがシネマカメラでした。

学生からの反応

多持 頻繁に使ってくれている印象はすごくありますね。

小口 授業で使った子たちが、その後自分で自由に制作に使うイメージです。

多持 今年の夏も自主制作で映画を撮るのにカメラを借りた2年生が何組かいました。あとは3年生も映画を1本作る進級制作があって、その子たちも基本的にはこのブラックマジックのカメラを使っているので、もうだいぶ定着してきています。

大きいシネマカメラもあるのですが、ちょっと抵抗感があるのかあまり借りられていない印象です。どうしても少人数の現場になるのでこれぐらいの規模だったらみんなも使いやすいんじゃないかなと見てて思います。

 バランスがちょうどいいですよね。モニターをつけなくてもなんとかいけますし。

小口 ベテランの撮影監督たちには慣れ親しんだカメラメーカーや機種があると思いますが、これからの若手映像クリエーターたちが素敵な作品をブラックマジックで制作している実績を全面に押し出していくことはとても有効ではないかと感じます。DaVinci Resolveが広い領域にまたがって表現をする世代にとって最強のプラットフォームだと思ってもらえるツールになってくれたらと願います。

 

武蔵野美術大学映像学科の制作環境

授業などで使用する撮影スタジオ。スタジオ内に美術セットを作りこんで作品を撮影することもあるという。
スタジオの天井部分。
もともとテレビ系の映像について教えることが多かったため使用していた設備。コロナ禍でオンライン授業をしなければいけなくなった際に活躍したそうだ。
現在はMA卓として使用することも。
MAルーム。後方にはナレーションブースも備わっている。

 

機材置き場にある三脚棚は、映像学科のデザイニング・ディレクターを務める土井さんがYouTubeを参考に自作したものを使っている。

 

◉武蔵野美術大学映像学科
https://www.musabi.ac.jp/course/undergraduate-ctsi/ias/

ブラックマジックデザイン
https://www.blackmagicdesign.com/jp