今年77歳になるチェコのアートアニメーションの巨匠、ヤン・シュヴァンクマイエル監督の新作映画「サヴァインヴィング ライフ―夢は第二の人生―」が、渋谷・シアターイメージフォーラムでロードショー上映中、順次全国公開される。また、9月19日までラフォーレミュージアム原宿で「ヤン&エヴァ シュヴァンクマイエル展~映画とその周辺~」が開催中。新作のドローイング、版画作品、さまざまな素材を使ったオブジェのほか、これまでの映画作品で使用された舞台装置やアニメーション素材、新作の絵コンテなど、映画にまつわるものが多数出品されている。


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ヤン・シュヴァンクマイエル氏は1934年チェコスロヴァキア(当時)のプラハに生まれる。工芸高校在学中にシュルレアリスム(超現実主義)に興味を持ち、ダリの絵画と出会う。プラハの芸術アカデミー演劇学部(DAMU)人形劇科を卒業、人形劇や美術制作、仮面劇の上映活動などを経て、64年に初の映画作品「シュヴァルツェヴァルト氏とエトガル氏の最後のトリック」を発表。翌年「J.S.バッハーG線上の幻想」がカンヌ映画祭で短編映画賞を受賞する。
その後も精力的に短編作品を撮り続けるが、「エロ・グロ」の作風は当時の共産党政権下の政府当局から睨まれることになり、73年~79年の7年間、当局から映画製作を禁止されてしまう。この間は映画スタジオで特殊撮影と美術制作を手がける。映画制作再開後は「対話の可能性」(82年)がベルリン映画祭で短編映画部門金熊賞と審査員賞を受賞、「闇・光・闇」(89年)がベルリン映画祭で審査員特別賞を受賞するなど、世界でその作品世界が評価される。「対話の可能性」は昨年、国際アニメーション協会のアンケートで短編アニメーション史上No.1の作品に選ばれている。初の長編「アリス」(87年)以降は、長編作品も多数手がけている。
シュルレアリストとしても知られ、絵画、コラージュ、オブジェなど多岐にわたる創作をおこなっているが、自身は「自分のことを映画監督と捉えたことはない」と語り、映画制作もその芸術活動の一環であるとしている。60年に結婚したエヴァ夫人(2005年没)もシュルレアリストであり、絵画やオブジェなどの創作のほか、夫の映画作品でも美術や衣装制作を手がけている。
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5年ぶりの新作となる映画「サヴァインヴィング ライフ―夢は第二の人生―」は実写と写真を巧みに組み合わせたカットアウトアニメーションで、監督の得意とする手法が用いられている。うだつの上がらない中年男が毎夜、夢の中で美女と会う。夢でしか会えない彼女は一体誰なのか? 精神科医を訪ねカウンセリングを受けるうち、夢の記憶が自分の生い立ちに関係することがわかってくる。男は独自に夢の操作法を調べ、自ら夢の中へ入っていく。夢の世界と現実の二重生活を送る男が、その夢の意味を探っていくラブ・サスペンスだ。
現在、渋谷のシアター・イメージフォーラムでロードショー公開中で、公開初日の8月27日には、来日中のシュバンクマイエル監督が舞台挨拶に立ち、観客と質疑応答も行った。このほか、京都シネマと第七藝術劇場(大阪)で10月8日より、元町映画館(神戸)と金沢のシネモンドで10月15日より公開開始。札幌、仙台、名古屋、広島でも公開が予定されている。
詳細は映画公式サイト http://survivinglife.jp/
展覧会「ヤン&エヴァ シュヴァンクマイエル展~映画とその周辺~」は、日本初公開作品を中心に、オブジェ、絵画、版画、ドローイング、コラージュなど、多岐にわたる作品を展示。その核になるのは映画にまつわる作品群で、映画の中で使用されたアニメーションのための素材や、衣装、操り人形、絵コンテ、大掛かりな舞台美術までが持ち込まれている。また、新作としてエヴァ シュヴァンクマイエル氏が下絵を描き、日本の彫り師と刷り師が制作した木版画や、現在制作中のラフカディオ・ハーン「怪談」のための挿絵も出品される。
ラフォーレミュージアム原宿(ラフォーレ原宿6F)では9月19日まで開催。その後、10月7日~10月23日京都文化博物館別館で巡回展を開催する。また、東京・信濃町のアートコンプレックスセンター(東京都新宿区大京町12-9)では、ヤン・シュヴァンクマイエル、マックス・エルンスト、上原木呂3人展「魔術★錬金術」を9月30日まで開催中だ。
詳細はヤン・シュヴァンクマイエル情報サイト http://www.svankmajerjp.com/