4月12日、アドビシステムズは同社のデザイン、コンテンツ制作の統合スイートの最新版「Adobe Creative Suite 5」を発表した。同時に、スイートに収録されるAdobe Premiere ProやAdobe After Effectsなどの映像制作ツールもCS5へバージョンアップし、それぞれの単体製品も発表している。発売開始は5月28日を予定している。


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Adobe Creative Suite 5 Master Collection
◆スイートのエディションは5つのラインナップ
Adobe Creative Suite 5は、デザインとコンテンツの開発・制作のための最新統合ツールとして、メディアやコンテンツの多様化そしてシームレス化に対応するため、機能強化やラインナップの整備・拡充が図られている。
すべてのクリエイティブツールを含んだフラッグシップ「Master Collection」のほか、印刷・WEB・ビデオなど目的に合わせてエディションが用意されているが、今回からWEB向けのスタンダード版が外れ、印刷・デザイン向けの「Design Standard」「Design Premium」、WEB向けの「Web Premium」、そして映像・ビデオ向けの「Production Premium」の5つのエディションとなった。
Premiere ProやAfter EffectsそしてPhotoshopなど、単体製品として14のソフトがCS5にバージョンアップ。新たに、コードを使わずにインタラクティブ・コンテンツの作成が行える「Adobe Flash Catalyst CS5」が登場した。また3つのオンラインサービスも開始される。スイートに含まれるソフトとしては、「Acrobat 9 Prol」だけが従来からのキャリーオーバーとなる。
◆64ビット化が目玉の一つ
今回のバージョンアップでは、処理速度の高速化による生産性の向上が図られているが、中でも目玉の一つといえるのが64ビットのネイティブサポートだろう。具体的にはPremiere Pro CS5、After Effects CS5、Photoshop CS5が64ビット対応となっている。
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Adobe Creative Suite 5 Production Premium
映像制作者向けのCS5 Production Premiumは、64ビット対応の恩恵が最も大きなエディションと言えるだろう。その中心となる2つのビデオツールPremiere ProとAfter Effectsが揃って64ビットにネイティブ対応し、広大なメモリー領域を利用することにより、処理速度や動作の安定性が大幅に向上しているからだ。その背景には映像制作環境や視聴環境の大きな変化がある。テープレス収録への移行により、映像収録の大半がHDとなり、より高画質で高精細な4Kデジタルシネマなど、さまざまなフォーマットが登場している。加えて、地上デジタル放送への移行や、ブルーレイなどHD映像コンテンツパッケージの普及、さらにWEBやモバイルでの映像配信の高画質化も進んでいる。
フルHD映像(1920×1080/10ビット)は従来のSD画像(720×480/8ビット)に比べ、1フレームあたりのデータ量は約7.5倍にもなる。さらに4K映像(4096×2304/32ビット)のデータ量はSDの約164倍に達する。HDや4K、そして将来のさらなる高解像度映像への対応には、64ビット化は不可避といって過言ではない。
64ビット環境のメリットとして、レンダリング処理の高速化がまず挙げられる。さらにマルチコアCPUにも最適化されており、充分なメモリーとCPUの処理能力を持ったMacやWindowsの64ビットOS環境でストレスのない快適な操作がもたらされる。なお、Premiere ProとAfter Effects CS5はWindowsの32ビット環境では動作しない。ただし、Windows版のProduction Premiumには32ビット環境用にそれぞれのCS4も同梱される(Mac版、体験版はなし)。
編集ソフトのPremiere Proは、64ビット化に加えAdobe Mercury Playback Engineの搭載で、AVCHDやDVCPRO、XDCAM HD422、AVC-Intra、そしてREDなどフォーマットを問わずリアルタイム再生のパフォーマンスが向上。またNVIDIA CUDA技術に対応し、対応するグラフィックスとの組み合わせで高速な処理が可能になり、プレビューだけでなくレンダリング処理時間も大幅に短縮する。
モーショングラフィック&ビジュアルエフェクトツールAfter Effectsは本体から多くのプラグインが64ビットに対応し、大容量メモリー環境下では、コンポジションのレンダリング処理時間を半分以下に短縮。RAMプレビューの長時間化も実現した。新機能としては動画のマスク作業を大幅に軽減する「ロトブラシ」、2Dだけでなく3Dにも対応するワーピングツール「DigiEffects FreeForm」などを追加。業界標準の色管理「Color LUT」にも対応した。
◆Flash製品の強化も特徴
Flashが目的別に3つのソフトに分立したこともニュース。Flash Professional CS5は業界標準のインタラクティブツールとして、より使いやすさを追求。テキストエンジンを一新し、美しい日本語表現が可能になったほか、XMLベースのFLAファイルによるバージョン管理や差分管理をついに実現。Action Script 3.0開発環境の強化により、インタラクティブコンテンツへのスクリプトの利用を容易にした。また、iPhoneやAndroidなどのデバイスへのコンテンツ配布も可能になった。新たに加わったFlash Catalystは、コードを使わずにインタラクティブなコンテンツ制作を可能にする。Flash Builder 4はWEBやアプリケーション開発者向けのツールだ。
PhotoshopとPhotoshop Extendedは境界線の調整機能が強化され、髪の毛などの選択範囲の精細な調整が可能になり、GPUアクセラレーション強化によりファイル処理の大幅な高速化を実現した。また、レンズ補正フィルターの強化など写真表現力の向上や、コンテンツに応じた画像の修復機能、混合ブラシによる自然なタッチのペイント、Extendedでは3D成形機能を備えるなど、機能の充実が図られている。
各スイートエディションのアドビストア価格は下記のとおり。
Adobe Creative Suite 5 Design Standard ¥198,450
Adobe Creative Suite 5 Design Premium ¥249,900
Adobe Creative Suite 5 Web Premium ¥236,250
Adobe Creative Suite 5 Production Premium ¥261,450
Adobe Creative Suite 5 Master Collection ¥397,950
アップグレードは過去3バージョン(CS2~4)のユーザーが対象で、CS4からのアップグレードは他より安く設定されている。また、アドビストアのみだが、Photoshopなどの単体製品からスイートへのアップグレードも設定されている。

問 : アドビ システムズ カスタマーサービス Tel.0570-067337(ナビダイヤル)または03-5350-0407
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