三菱自動車工業株式会社(以下、三菱)の電気自動車であるアウトランダーPHEVのコマーシャル (以下、CM)のグレーディングには、ブラックマジックデザインのDaVinci Resolveが使用されている。
制作およびポストプロダクションは、東京、西麻布にあるヘルメット株式会社 (代表 堀部 公嗣氏)が行なっている。
現在、オンエア中の同CMの制作には、ResolveのほかにもBlackmagic DesignのUltraStudio 4Kキャプチャー・再生デバイスおよび Smart Scope Duoモニターが使用された。
アウトランダーPHEVは、三菱が製造、販売するクロスオーバーSUVの最新車種で、世界初の4WDプラグインハイブリッドSUVである。雄大なニュージーランドの風景の中で、アウトランダーがパワフルで優雅な走りを見せるこの作品を制作したのが、小規模ながら数多くのCMやミュージックビデオなどを手がけるヘルメット株式会社。
「この作品は車のCMの原点に立った、車の走りの格好良さや力強さを視聴者に伝えることが狙いでした。ハイブリットカーというとファミリーカーだったり、街の中を走るための車というイメージを持つ方が多いのですが、このCMでは、山道のようなラフな道を力強く走る様子をいろいろな角度で見せて、ハイブリットカーが都会限定の車ではない、ということを強調したかった。ニュージーランドでロケを敢行し、3週間かけて撮影を行いました。撮影はカメラ2台態勢で臨み、地上に1台、空撮用に1台で使用しました。撮影はポストプロダクションでリサイズする前提であえて4Kや5Kの高解像度で撮影しました」と撮影およびカラーグレーディングを担当した同社の千葉孝氏は語る。
▲千葉孝氏(ヘルメット株式会社)
千葉氏は、同作品のグレーディングにあたり「とにかく、車が格好良く見えることが大事でした」と話
す。ファミリー向けの車やシティ向けの車は、柔らかいトーンのルックでCMを作ることもあるが、このアウトランダーのCMでは、よりシャープなイメージを表現している。
「コントラストがあって硬い感じのトーンにして、車を艶かしく、力強くみせるようにしました」
「撮影後はホテルに戻ってOKテイク出しを行いました。Resolveから使用したカメラ用のガンマをあてて、オフライン用にProRes 422 LT ファイルを書き出しました」
帰国後にそのファイルでオフライン編集を行い、XMLを介してResolveとデータのやりとりをした。
グレーディングでは、車のボディや、大自然の中にある色をいかに再現するかに注力したという。
「パワーウィンドウで車のマスクを切って、淡いブルーのボディカラーにコントラストをつけたり、ブラー
を逆方向に動かしてエッジをたたせて、メカを格好良く見せています。また、曇りの日に撮影したショットもあったので、クオリファイアーとマスクを組み合わせて、晴れのイメージに調整しました。逆光のショットでは、グリーンが黒ずんだように見えるため、カラーカーブなどで鮮やかに見えるように補正しています」(千葉氏)
グレーディング中のResolveの映像出力にはUltraStudio 4K, 波形チェック用にSmartScope Duoを使用した。その他にも同社では、Audio MonitorやTeranex 2D Processor、Mini Converterなど、多くのBlackmagic製品を導入している。
「Blackmagic製品はデザインに統一性があるので、ラックマウントしたときに見栄えがいいですね。スタジオ以外でもフライトケースに機材をマウントしてロケ現場にも持ち込んだりすることもあります。ヘルメットでは撮影機材も自社所有しています。企画、演出から撮影、編集に至るまでインハウスでの作業が可能です。特に最近のワークフローのフットワークを要求される現場ではResolveは強力なツールです。今後は、オンセットでResolveを使ってグレーディングも積極的に行っていく予定です」と語った。