◎「Flesh and Blood」の現場~URSA Mini 4.6KおよびDaVinci Resolve Studioがもたらしたもの

photo:Misha Tulek

 
Blackmagic Design(ブラックマジックデザイン) は、2017年のサウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)で初公開となる「Flesh and Blood」が撮影監督パトリス・ルシアン・コシェ(Patrice Lucien Cochet)氏によりURSA Mini 4.6K、Production Camera 4K、Pocket Cinema Camera などのBlackmagic Design のデジタルフィルムカメラを複数使用して撮影されたと3月14日に発表。

photo:Misha Tulek

 

また、プロデューサー兼ポストプロダクション監督のダスティン・ヒューズ(Dustin Hughes)氏は同作品のカラーグレーディングに、Blackmagic Design のプロ仕様の編集、カラーグレーディング、フィニッシングソフトウェアであるDaVinci Resolve Studio を、またビジュアルエフェクト作成にFusion を使用。
「Flesh and Blood」は俳優/インディーズ映画監督として高い評価を受けているマーク・ウェバー(Mark Webber)氏による最新劇場映画で、家族の相互関係を掘り下げることで、リアリティとフィクションが融合した作品だ。キャストには同氏の実の家族が起用されており、自身の実体験も交えて物語は構成されている。フィルムは、ウェバー氏の故郷であるペンシルバニア州フィラデルフィアで2016 年3 月に撮影された。

photo:Dustin Hughes

 

ヒューズ氏は語る。「このプロジェクトの撮影スタイルは非常に特徴的です。ドキュメンタリーとフィクションを組み合わせたリアリティ映画というスタイルで、ストーリーを展開しています。出演者は、ほぼ全員素人で現実の自身の姿を反映した役柄を演じています。このような現場の場合、多数のスタッフが大量の機材を扱うような撮影では良いパフォーマンスが引き出せないことが多いですね。この映画の多くの部分が実話に基づき、自然の流れに任せてシーンが展開するようにする必要がありました。つまり、最初のテイクで必要な部分を抜かりなく撮影できる信頼性の高いカメラと操作技術が必要だったんです」
コシェ氏とヒューズ氏は、A カメラにURSA Mini 4.6K、B カメラにProduction Camera 4K、特定のショットにPocket Cinema Camera を使用。RAW で撮影されたことで、編集過程でリフレーミングやパンチインが行え、またほぼ即興的に演じられたシーンでは出演者たちは制限されることなく自由に動き回ることができた。

photo:Misha Tulek

 

「雪や雨など関係なく、毎日不休で長時間の撮影が続き、明けても暮れてもカメラを使い続けたにも関わらず、一度たりともグリッチが発生することはありませんでした。」とヒューズ氏は語る。「制作中、色々と予定通り運ばないことがありますが、撮影機材にそのようなことがあってはなりません。URSA Mini 4.6K は、毎日期待通りに機能してくれたので本当に安心して撮影に挑めました。加えて、撮影した画はハッとするように美しいんです。リアリスティックであると同時に、非常に美しいシネマルックを得ることができました」
「今回の撮影では、スタッフの存在感を最小限に抑えることを目的にしていました。必要に応じてカメラの開閉式の内蔵モニターを使うことで、外部モニターを持ち運ぶ必要がなく、機材が少なくすみました。また、URSA Viewfinder をすべての撮影に使用しました。Viewfinder は、URSA Mini Shoulder Kit と共にカメラにしっかりと固定されるので、基本的にケースから取り出した瞬間から撮影が開始できました。内蔵ステレオマイクを使用して、ポスプロでプロダクションサウンドに同期するためのリファレンスオーディオも得られたので、外部マイクを接続する必要はありませんでした。通常、現場でのカメラの組み立てや無数のアクセサリの取り付けに時間が掛かるのですが、今回は多くの時間を節約できました」


映画のキーとなる場面は、ウェバー氏と母親がアルコール中毒者更生会の会合に出席するシーンだ。ヒューズ氏は語る。「このシーンはお気に入りの一つです。現実感に満ちた信ぴょう性あふれるシーンになりました。この会合は映画用にセッティングされたのではなく、撮影に同意してくれた寛大な人々のおかげで実際の会合を撮ることができました。会合の撮影では、照明など多くの課題にぶつかることになりました。室内は驚くほど薄暗く、窓は完全に白飛びしていました。ショットや照明を作り込むとシーンが自然に流れないので、そのままの状態で撮影を行いました。URSA Mini 4.6K のダイナミックレンジのおかげで、そのような難題も切り抜けられ、リアリスティックでシネマライクな素晴らしい映像が得られました。シーン自体も撮影が少し難しかったですね。参加者が輪になって座り、実際の会合が進むにつれ自然発生的に発言をするので、誰が次に話すのか分からない中で撮影を行いました。シーンの指示を行うことで、親密な雰囲気や会合の意図を台無しにするのは避けたかったので、1 時間の会合を通してクロスショットで撮影しました」

ヒューズ氏は続ける。「車内の撮影もたくさん行ったのですが、Pocket Cinema Cameraが非常に役立ちました。カメラが車内に向くようにフロントガラスにマウントできたので、親密なアングルのショットが撮れました。車内は黒のインテリアで、外は明るい日光で照らされていたので、カメラは小さいだけでなく、これに対処できるダイナミックレンジに対応している必要がありました。そういった面で、Pocket Cinema Camera は完璧でした。他のシーンに関しては、カメラマンが後部座席に座り、URSA Mini 4.6K とProduction Camera 4K で出演者たちをクロスショットで撮影しました」
撮影およびポストプロダクションの両期間中、ヒューズ氏とスタッフはDaVinci Resolve Studio を駆使してDIT、トランスコーディング、デイリーのレビューのすべてを行い、駆け込みの編集の変更や最終的なカラーグレーディングもResolve で行われた。加えて、Fusion ですべてのVFX の作成とクリーンアップ作業が行われた。

photo:Dustin Hughes

 

「この映画は、従来のアプローチとは全く異なる形で着想、制作されました。撮影とポスプロの環境はシンプルで柔軟性に富むものである必要がありました。DaVinci Resolve Studio を中心に作品の全ワーフクローを構築できました。Resolve は、まるでレザーマン社の万能ナイフのように撮影からポスプロまで活躍してくれました。ロスのエディターに送り返すために、カードのクローニング、フッテージの確認、プロキシのトランスコードなどのDIT の作業をすべてResolve で行いました。ポスプロにおいては、最終的なカラーグレーディングの最中に駆け込みで編集の変更を行うことができました」


「DaVinci Resolve Studio のFusion Connect 機能のおかげで、VFX を制作しているFusion とのやりとりもシームレスに行えました。撮影スタイルの特質上、テイクは1 回に留めるように努めました。繰り返すことでシーンの信ぴょう性が失われると感じたからです。それに加えて、シーンの多くがアドリブだったことから、一部のショットにスタッフが意図せずに写り込んでしまうことがありました。Fusion のトラッキングとペイントツールを使用して、そういったショットや反射からスタッフや機材を取り除きました。映画は実話に基づいていますが、究極的にはフィクションを意図して撮影されたので、真実味を感じられるようにすると同時に、第4 の壁を破らず、フィクションとしての一線を画す必要があったので、そういった意味でFusion は最終的に欠かせない存在でした。」と同氏は締めくくった。

 

◎コメディ作品「A Few Less Men」~DaVinci Resolve Studioがもたらしたもの

また同日、Blackmagic Design はカラリストのデイドラ・マクルランド
(Deidre McClelland)氏(CSI)が、コメディヒット作「A Few Less Men」の続編のカラーグレーディングにDaVinci Resolve Studio を使用したことを発表。


マクルランド氏は語る。「夜間にブリスベンのチームが、リモートで必要に応じてVFX の追加や編集の調整を行えたのはとても便利でした。DaVinci Resolve Studio の利用者数は急速に増えており、またエディターとカラリストの両方が簡単に使えるツールです。オーストラリアの別の州にいるエディターチームとアシスタントカラリストが、夜間やバックグランドで作業できることに非常に感心しました」

 

いくつかのVFX ショットでサポート作業を行ったマクルランド氏は、DaVinci Resole Studio のツールが増加していることによりVFX アーティストとカラリストとの間の区別が薄くなっていると語る。「クライアントが抱える問題を積極的に私自身でグレーディングスイートで解決するほうが、別のVFX のデリバリーを待っているより好きですね。俳優たちが砂漠を歩いているシーンで、例のごとく青空と曇り空のジレンマに行き当たることになったのですが、Resolve を使うことでシーンが一貫性あるものとなりました。曇りの白い空をキーイングし、前のシーンからの青空を重ねて、青空をシーンに反映しました」


グレーディング中にフィルムの全体的なルックを微調整するのに加え、マクルランド氏は環境や地理的な変化をグレーディングで強調することでシーン間のコントラストを強調するように指示を受けたと語る。
「グレード中、この映画のルックを『チョコレートボックス』と呼びました。これは、飾り立てた派手なという意味でルックにぴったりの言葉でした。フィルム全体のルックは暖かくカラフルで、『本当とは思えない出来過ぎた感覚』を生み出すように心がけました。また、オーストラリア中央部が舞台なので、観客がその熱気を感じられるようにしました。誇張された色の照明のシーンが複数あり、かなり独特な衣装があちこちで使われているので色を強調することは重要でした。それに対して、主人公たちが見知らぬ人の家を訪れるシーンの暗くて不気味にすら感じる雰囲気が反対の効果を生み出し、また逆にその不吉な暗さは部屋中にあふれ返る、型破りな服のカラフルな色で一瞬にして覆されます。」と同氏は続ける。

グレーディングはわずか13 日間で行われたので、マクルランド氏は作業効率を最大限に上げるにあたりDaVinci Resolve Studio の複数のツールが役立ったと語る。「バランスを取るためのグレーディングの後、ショットをグループ化し、特定のシーンの全体的なルックを作るために『プリクリップ』または『ポストクリップ』を使用すると非常に効率的に作業できることが分かりました。
クライアントが作業前と後を比較したい場合、ルックのオンとオフを切り替えて複数のバージョンを作成できました。『末尾にノードを追加』コマンドもとても役立ちました。クリック1 回で複数のショットに同じ調整ができました。」
同作品の監督を務めたマーク・ランプレル(Mark Lamprell)氏はマクルランド氏の仕事に関して、以下のように語った。「撮影監督のスティーブ・アーノルド(Steve Arnold)と私は、極めて明確なビジョンを持って撮影に取り掛かりました。デイドラは、そのビジョンを注意深く引き継ぎ、幾度となく映像に反映してくれました。短期間で作業を完了させてくれただけでなく、デイドラ自身のアイデアや考えなども提供してくれました。さらに私たちが抱いていた期待値を何度も超越する改善をグレーディングでショットに加えてくれました。デイドラは『正確な仕事をする』という静かな信念のもとで、膨大なグレーディングの知識を魔法のように使って作業を行なってくれました」と同監督は締めくくった。

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