ブラックマジックデザインは、今年のサウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)で初公開された短編作「Sisters」がBlackmagic Pocket Cinema Camera 4Kを用いてBlackmagic RAWで撮影され、グレーディングにはDaVinci Resolve Studioが使用されたことを発表した。

ジェシカ・ブルネット(Jessica Brunetto)氏が脚本・監督を務めた同作は、疎遠になった姉妹が、昏睡状態の母親の死を目前に、互いに向き合わざるを得なくなった様子を描いた作品。メアリー・ホランド(Mary Holland)演じるアンディは自己中心的な性格で、女優としてのキャリアが思わしくなく実家に戻るが、そこでサラ・バーンズ(Sarah Burns)演じる姉のエミリーが、死に瀕した母親の介護のために自らの人生を犠牲にしていることを知る。母親の家を売るかどうかを巡って言い争う二人だったが、母親の所持品を分け方をゲームで決めることにした際に、隠されていた秘密を知ることになり、善かれと思って行ったことが結果的に悪い結果をもたらすことになる。

同作は、主に一軒の小さな家を舞台に展開するため、ブルネット氏と撮影監督であるウェズリー・カーディーノ(Wesley Cardino)氏は撮影初期から多数の困難に直面することになったが、Pocket Cinema Camera 4Kのコンパクトさが同作の撮影に適しているとみなし導入したことが、本作の制作が円滑に進んだ要因の一つとなった。

「撮影計画は、限られたスペースで2台のカメラでいかに行うかということから話し合いを始めました」

と同氏は語る。

「ウェズと共に、どのシーンとセットアップで両方のカメラを使用できるか見つけ出す必要がありました。可能な限り2台のカメラで撮影を続け、セットでの活気を失わないようにしたいと考えていました。サラ・バーンズ(エミリー)とメアリー・ホランド(アンディ)が、互いに感情的になって争っているシーンでは二人をクロスショットで撮影することは極めて重要でした。また、これにより出演者がアドリブできるようにもしました」

「Blackmagicのカメラは超小型ながら強力です」

と同氏は続ける。

「このように小さく低価格なカメラで、35mmのZeissの単焦点レンズを使用して、高品質の映像を得られることに本当に驚かされました。監督としては、セットアップをすばやく交換できる点が気に入っています。これは、最良の演技を捉える上で非常に重要な要素だと個人的に思います」

カーディーノ氏は、同作の撮影前にBlackmagic Designのカメラを使用した経験はあまりなく、以前にオリジナルモデルのPocket Cinema Cameraをクラッシュカメラとして使用したことがあっただけだった。しかし、Pocket Cinema Camera 4Kの機能性について聞いて、撮影を行うのが楽しみになったという。「カメラに関して事前に話し合いを持ったのですが、その際にBlackmagicが新しいバージョンのPocket Cinema Cameraを発表したとジェシカが教えてくれ、すぐに興味を持ちました!本作では狭い空間でハンドヘルドを多く用いて撮影する必要があると分かっていたので、カメラの選定において、それが大きく影響しました。Pocket Cinema Camera 4Kでは、品質に妥協することなく、流れるようにすばやく作業・移動できると気付きました」

同カメラを使用した経験がほとんどなかった同氏は、すぐにPocket Cinema Camera 4Kでの撮影に慣れる必要があった。「どのようなカメラなのか全く知りませんでしたが、あらゆる面で嬉しい驚きに満ちていました。事前にテストを行うことができたので、カメラのダイナミックレンジについて理解することができました。これは、露出の設定を行う際や、ハイライトを維持するために必要な作業を把握する上で常に重要なことです。Pocket Cinema Camera 4Kを使用したセットでの撮影にはとても満足しています。優れたラティチュードが得られたので、ポストプロダクションでハイライトのディテールを取り戻すことが可能か心配する必要は全くありませんでした。おかげで、技術的な面に気を取られることなく、より直感的に作業でき、物語をキャプチャーすることに集中できました。画質だけでなく、使いやすさの面でも非常に感心しました。メインのカメラでも撮影し、ハンドヘルドをかなり用いたので、肩などに乗せて撮影する上で軽量であることに大変助けられました」

同カメラでは優れた画質が得られると両氏は理解していたので、演技の面に集中することができたと語る。「制作の全てを通して本当に撮影を楽しみました。これは、カメラの柔軟性の高さによるところが大きいですね」とブルネット氏は語る。「コメディはタイミングとトーンが全てなので、カメラのリセットや照明の調整のために度々撮影を止める必要があると、その完璧なバランスを取るのが非常に難しくなります。Pocket Cinema Camera 4Kでは、各シーンの流れを止めることなく、撮影を迅速かつ柔軟に行うことができました。コンパクトなサイズなため、モニターやフォローフォーカスなどを追加しても小型なため、狭い空間に2台のカメラをセットアップできました。これは、他の4Kカメラでは不可能だったかもしれません」

「中盤に、姉妹がワインを飲みながら、母親の家にある欲しい物にステッカーを貼っていく面白いモンタージュのシーケンスがあるのですが、クローゼットの中を覗き込んで、時代遅れのドレスを着て踊る場面があります。二人の演技の多くが脚本にはなく、アドリブで面白いことをしているのですが、他のシーンと同様、2台のカメラを使用して、ワイドショットとクローズアップのショットを同時に撮影し、良いショットを逃さないようにしました。室内は、2つのクローゼットが向かい合う形のレイアウトだったので、1つのクローゼットの前に俳優二人を配置し、2つ目のクローゼットに、三脚に乗せた2台のカメラを半強制的に設置し、撮影監督とカメラオペレーターがそこから撮影しました。極めて狭い空間での撮影でしたが、上手く機能し、非常に面白いフッテージを撮影できました」

同作のグレーディングは、大学時代の同級生であるルーク・ケイヒル(Luke Cahill)氏がDaVinci Resolve Studioで行い、制作初期段階でブルネット氏とカーディーノ氏と共に同作のルックを構築した。「本作ではプライマリーカラーを画面で引き立たせるようにし、同時にイメージの残りの部分を極めて自然に見せるにはどうすべきかについて、ウェズと多くの時間を掛けて話し合いました」

とブルネット氏は続ける。

「これをルークに伝え、それを基にルークが作成した初期段階のイメージには大変感心させられました。Blackmagicカメラのダイナミックレンジ、コントラスト、グレインなどに関してよく把握していなかったのですが、初めの段階から非常に美しいイメージが得られました」またブルネット氏はスキントーンにもこだわったと語る。「監督として最重要視していたことのもう一つが、作品全体の様式化されたルックでも、女優の肌の見栄えを良くすることでした。ルークは、サラとメアリーを画面上で引き立たせてくれただけでなく、意図していたルックを作品全体に適用してくれました。

「Resolveは10年以上使用しています。カラーグレーディングにおける、あらゆるチャレンジに対応でき、様々なクリエイティブなビジョンを実現できるツールを搭載しているので本当に感心しています」とケイヒル氏は語る。「通常、最初のいくつかのノードでリフト、ガンマ、ゲインツールを使用してグレーディングを行います。特に本作では、衣装の色に一貫性を保つ上で、色相 vs 色相カーブが役立ちました」

「ジェスは本作のルックに関して、はっきりとしたビジョンを持っていました」

と同氏は続ける。

「シャドウを若干ロールオフさせ、フィルムのようなルックにし、主人公二人の衣装である赤と青以外の色は彩度を下げました。」Blackmagic RAWではポストプロダクションで豊富なデータが得られたと同氏は語る。「Blackmagic RAWでは、開始点として極めてクリーンなイメージが得られるので、本当に作業しやすいですね。Pocket Cinema Camera 4Kでは、ハイライトのディテールを維持でき、また暗いシーンのシャドウからディテールやテクスチャーをリカバリーできます」

同作をSXSWで封切ることができたことは、ブルネット氏にとって長年の夢がかなったことになる。「本作では、物語とコメディの質と制作価値の両方に対して好意的な意見をいただいていて本当に有り難く思っています。美術のマデリン・ウィルキム(Madelyn Wilkime)と衣装のマリア・ガルシア(Maria Garcia)のような素晴らしいスタッフと仕事でき、本当にラッキーだったと感じています。おかげで、美しい被写体をウェズが撮影できました。ルークは、DaVinci Resolveでそれらを一層引き立ててくれました。視聴者や批評家などの共感を呼ぶことができ、本作に費やした努力が報われたと感じています」

と同氏は締めくくった。

 

◉ブラックマジックデザイン
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