ブラックマジックデザイン、HDRリマスター版の『銀河鉄道999』が DaVinci Resolve Studioでグレーディングされたことを発表


ブラックマジックデザインは、東映アニメーション制作の長編アニメ映画の名作『銀河鉄道999』および続編の『さよなら銀河鉄道999 – アンドロメダ終着駅 -』のHDRリマスター用のグレーディングに、編集、グレーディング、VFX、オーディオポストプロダクションソフトウェアであるDaVinci Resolve Studioが使用されたことを発表した。40年以上前に公開された同作は、Dolby Vision用に株式会社キュー・テックにて4K HDRリマスター版が制作された。

この2作品リマスター版の公開は、制作会社である東映アニメーションが取り組んできた旧作のアーカイブ化の一環で行われた。『銀河鉄道999』は松本零士原作のSF漫画で、テレビアニメ版、劇場アニメ版も作られ大ヒットとなった。今回、40年以上の時を経て、劇場版アニメ2作品がドルビーシネマ版として公開された。

映像のリマスタリングは、アニメ作品で数多くの実績を持つポストプロダクション、株式会社キュー・テックで行われた。今回監修アドバイザーを務めた、同社のテクニカル推進部部長でありシニアカラリストの今塚誠氏はこう話す。「HDRグレーディングにはDaVinci Resolve Studioで行いました。Davinci Resolveは先だってカラーマネージメントシステムが統制されており、HDRイメージを制作する上で非常に操作性が優れていることが採用した理由です」

「本作はドルビーシネマをターゲットとして作成していますが、その先のパッケージ販売も決まっていたので、HDRとSDRで、色彩や明るさに落差が出ないよう気にして調整していました」

と話すのは実際のグレーディングを担当した庄司光裕氏。

「HDR調整では、『銀河鉄道999』の特徴でもあるフィルムの透過光を抽出する過程で、始めは思うように抽出、調整出来ませんでしたが、DaVinciは調整の項目が多いので、最適な数値を見つけてからはスムーズに作業出来ました。『銀河鉄道999』はメディア規格が変化するたびにリマスターを行っている作品なので、以前のマスターと比較してもより鮮明に見えるよう調整しています、特に暗部については入念に調整しました。また、フィルム作品としての質感を大切にし、尚且つ、4Kリマスターとして新しさを感じてもらえるよう意識して調整しています」

最終グレーディングは、Dolbyが推奨するシアターで行う必要があったため、IMAGICAの試写室で行われた。「IMAGICAもDaVinci Resolveを使用したシステムなので、プロジェクトの移動のみで共有でき、すぐに確認、修正などもできたので効率よく作業ができました。また、HDR作業時に調整部分のノードを増やしたり、色分けや、マーキングをしたりすることで、SDR作業時には、視覚的にHDR効果の箇所の確認ができて、SDRへの落とし込み作業がスムーズでした。編集機能でも、HDR、SDRなど異なるマスターを複数作成したので、同じタイムラインからHDR、SDRを簡単に作成できるので大変助かりました」と庄司氏。

同作はフィルムスキャンで書き出したDPX/LOGファイルからのカラーグレーディングだった。アニメーションのグレーディングについて今塚氏はこう説明する。「本作品では、フィルム自体の劣化や褪色を考慮した上で、まずは本来の色彩に忠実に再現することを第一に、また、HDR化では、色彩バランスを崩すことなく効果を出す手法を取りました。通常、色彩設計された作画に対し色味や全体輝度は変更できませんので、HDR効果として有効な作画に対して輝度調整を行います。HDR効果を必要としないシーンでは調整は行いません」

「今回のHDR化によって、本来のフィルムが持っていた色が一般の方々でも見られるようになったことがメリットです。例えば、街並みや砲撃の光などが本来こんな風に色が塗られていたんだとHDR化して初めてわかりました」

と庄司氏は付け加える。

「グレーディング作業中は派手すぎないか、地味すぎないか、観難い箇所がないかと常に悩むことが多かったですが、試写会後に、笑顔のりんたろう監督に感想を聞けてやっと安心出来ました。公開され反響も好意的なものが多く、たくさんの方に観ていただけた本作に関われたことに感謝しています」

と庄司氏は結んだ。

 

 

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