映画・CM制作用のHDCAM SRから、ハイアマチュアまでをターゲットにしたHDVまで、積極的に新製品を投入し、大攻勢をかけてきたソニー。個人映像制作者にとって、XDCAM EXのPMW-EX1や、1週間前に発表されたばかりの業務用HDVシリーズは、今最も気になる機材ではないだろうか?


◆HDを超えたハイエンドから、お手軽なHDまで、かつてないほどの大攻勢
 InterBEE初日となる20日の午前中、ソニーは記者発表会を開催。放送業務用分野での方針を発表した。現状、日本の放送業界ではHDCAMがデファクトスタンダードとなっており、現在でも新たに導入されている。放送局においてはHD化は進んでも、「ノンリニア」化が遅れているのが実状である。そこでテープレス化をしてワークフローを改善するためにソニーが用意したが、、ブルーレイをベースにした光ディスク、プロフェッショナルディスクに記録するXDCAM HD。新たに今回、高画質タイプのMPEG HD422シリーズを加えた。1920×1080のフルHDで、サンプリングは4:2:2、記録レートは50Mbps。2層50GBディスクを使えば、最長95分の収録が可能になる。カムコーダーのPDW-700とレコーダーのPDW-HD1500があり、ともに2008年4月末発売予定。テープベースの制作システムからの置き換えを狙う。
 映画・CM分野向けにはHDCAMの上位フォーマットであるHDCAM SRのF35(35㎜判)、F23(2/3インチ)を用意。日本ではオムニバス・ジャパンに複数台納入されたという。今後はさらに将来を見据えた4Kでの制作ワークフローも構築していく。
 一方でHD制作の裾野をさらに広げるためにXDCAM EXや業務用HDVも強化。SxSメモリーカードを使用したXDCAM EXはすでに販売を開始したが、全世界から注文が殺到し、好調なスタートになった。また業務用HDVでは、レンズ交換式でショルダータイプのHVR-S270JとハンドヘルドタイプのHVR-Z7JをInterBEE前に発表。初めて実機に触れられる機会になった。このクラスのHDカメラを強化することで、従来のプロダクションだけでなく、CATV、ブライダル、クリエーター、ハイアマチュア/ビデオクラブ、文教、メディアカル、学生など幅広い層にHD制作を拡げていきたいとしている。
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◆11型の有機ELを使ったファインダーの試作タイプ
 12月に発売される有機ELテレビのパネルを利用したスタジオ用モニターの試作。モニター用としてチューニングしているという。視野角も広く、また視認性もひじょうによかった。
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◆放送用マスターモニターBVMは液晶に。42型のBVMも参考展示
 先ごろ発表されたマスターモニターBVMシリーズの23型液晶がついに登場。10ビットドライバーを搭載したフルHDパネルを採用。12ビット出力精度を持つ高画質エンジン、プレシジョンバックライト(LED)を搭載する。その隣には42型の液晶BVMも展示。すでに型番もBVM-L420となっており、来年には発売されそうだ。
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◆XDCAM EXの編集もやっぱりFinal Cutが先行
 新しいメディアと新しいフォーマットのカメラは、編集がどうなるかという点がもっとも気がかり。パナソニックのP2は現在ではAdobe Premiereもようやく対応したが、当初はアップルのFinal Cut Proしか選択肢がなかった。EXの場合も一番最初に対応したのはそのFinal Cut。アップルブースでは、実際にEX1から取り込み、ネイティブで編集できるところを見せていた。P2同様に「読み込み」から「XDCAM」を選ぶのだが、その後はソニーが提供(無償ダウンロード)するXDCAM Transferというプラグインソフトを使う。Final Cut Proは最新の6.0.2でOK。動作は35MbpsのHQモードで、HDVよりやや重い程度だという。カノープスのEDIUS Proも対応したというアナウンスはあったものの、15万円もするXDCAM Optionが必要になり、このオプションはREXCEED以上の業務用ターンキーでないと入れることはできない。実質EDIUSユーザーには道がないのが現状で、この点はひじょうに残念だ。
 
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▲「読み込み」から「Sony XDCAM」を選択する。
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▲ソニーが提供するXDCAM Transferの画面
◆DR60のファイルをFinal Cutで直接読み込むことができるようになった
HDVのハードディスクユニットHVR-DR60は、ハードディスクに.m2tファイルとして書き込むが、Final Cut Proは、ファイルの.m2tを直接読み込むことができなかった。従って、せっかくハードディスクで記録してファイルの状態になっていても、テープ同様にキャプチャする必要があった。しかし、今回プラグインを新たに開発することでFinal Cut Proから.m2tファイルを認識して、読み込めるようになった。.m2tからクイックタイムへの変換は実時間以下なので、これでようやく実用になる。プラグインの提供方法は未定。
 新しい業務用HDVカメラZ7JとS270Jのメモリーレコーディングユニットのファイル(.m2t)も直接読むことができ、実際に会場でデモをしていた。
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