日本のガールズ・ラウドロックバンド・「花冷え。」の 「O・TA・KU ラブリー伝説」の新しいミュージックビデオが12月11日に公開された。今回の曲は、「今や世界において仮想空間、アニメ、ゲームといったカルチャーは 日常生活に必要不可欠なのである」というセリフから始まる“ジャパニーズ・オタク・カルチャー”愛溢れたロックナンバーだ。そんな「O・TA・KU ラブリー伝説」の新しいMVには、ソニーが発売しているモバイルモーションキャプチャー・mocopiが制作に使用された。今回のMVにどのように、mocopiが使用されているのか。制作を担当した面白法人カヤックに、実際の制作過程について取材した。

カヤックアキバスタジオが手がける多次元世界がコンセプトの【マルチバース現代伝奇】の世界観IP 「√EDEN(ルートエデン)」と以前よりタイアップを行っている「花冷え。」。今回のMVは、メンバーが√EDENの世界に迷い込んだオリジナルのアニメーションになっており、初のモーションキャプチャーに挑戦した4人が、仮想空間上の世界でアバターとなって登場。バーチャルの世界に入り込んだメンバーが、格闘、恋愛シミュレーション、カーチェイス、ホラー、魔法少女、RPG、ライブ、ファンタジーというたくさんのゲーム・アニメ表現をマルチバースで体験する彼女たちの姿が楽しめる内容になっている。

8つの異なるバースを花冷え。メンバーが行き来する今回のMV

バーチャルライブ撮影には、カヤックアキバスタジオがオリジナル開発をした「ジャンヌダルク」というシステムが使用されたとのことだ。このシステムでは、先に収録をされたメンバーのシーンに後ほど、カメラワークを決めアングルをつけることができる。VRゴーグルと、ふたつのコントローラーを使い、現実でカメラを使用する時と同じように、左手で持って右手で動かすことが可能だ。自撮りやドローン撮影などと同じ3種類のインターフェースを搭載しているほか、カメラの揺れなどは後処理で修正することができる。

メンバーにMVの内容を説明する天野清之氏。どのような動きにするかは、収録の際にメンバーと相談しながら決めていったそうだ。

今回の撮影でmocopiは、モーションキャプチャシステム「OptiTrack」と併用するような形で使用された。メンバーの演奏シーンなどでは手直しを少なくする狙いもありOptiTrackが使用され、大きな動きやスピーディーな人の動きをとる時にとても有効なアイテムであるmocopiは、格闘シーンや魔法少女にメンバーがなるシーン、パーツのインサートなどで主に使用されたとのことだ。そういった目線でMVを見返すのもまた新しい発見がありそうだ。

実際にmocopiを使用したスタジオの部屋。スペースに限りがある場所でも気にせず使用することが可能だ。

全体の精度に関しては6つの小型のパットからなるmocopiはOptiTrackに及ばないが、その利便性は今回の作品制作においてはなくてはならない存在だったいう。OpiTrackで、全てを撮影すると、朝から晩まで2日間の撮影が見込まれる今回の撮影も、mocopiを効果的に使用したことで、1日で収めることができたと監督を務めた天野清之氏は語った。

バーチャルライブ撮影を実演する天野氏。現実の撮影と同じようにカメラ位置を決めアングルを自分の手で動かして撮影できる。

また、場所を取らず、多くの機材を撮影に要しないにも関わらず、その人の動きを見出せることができることがとても助かったとのことだ。手付けやアクターを使った映像を使うという方法もあるが、どうしてもそうするとメンバー自身の動きにはならないため、その人の動きを入れるにはやはりモーションキャプチャーが最適解だという。様々な制約がある中でのモーションキャプチャーを使用した作品制作の現場でのmocopiの使用は今後もさらに増えていくことだろう。