パナソニックは、8K画質を実現する3600万画素の高解像度で、60fpsの高速フレームレート読み出し、かつ45万電子の高飽和と感度変調機能を有するグローバルシャッタ撮像が可能なCMOSイメージセンサ技術を開発した。
本技術により、スタジアムにおける日差しの強いフィールドと日陰になる観客席といった明暗差の大きなシーンでも8K高解像度での撮影が可能に。また、グローバルシャッタ機能を活用し、動体の歪みのない瞬時切り出し、複数のカメラを用い多視点撮像を行う「マルチビューポイントカメラ」での各カメラ間の同期を取った撮像や、マシンビジョン・ITS監視など、高速かつ高解像度が求められる分野への活用が期待される。さらに、有機薄膜へ加える電圧の制御のみで感度変調可能な機能を活用し、従来撮影条件毎に異なるNDフィルタの装着が必要だったシーンにおいても、電圧制御のみで無段階に感度調整が可能なNDフィルタ機能を実現できる。
技術内容
光電変換機能を有する有機薄膜と、電荷蓄積および光電変換信号を読み出す回路部を完全に独立した「CMOSイメージセンサ設計技術」
同社の有機CMOSイメージセンサは、光を電気信号に変換する機能を有機薄膜で、信号電荷の蓄積および読み出しを行う機能を下層の回路部で、それぞれ完全独立に行う構成。この構造的特長を活かし、配置自由度の大きい回路部に高速ノイズキャンセル技術と高飽和化を実現する技術を搭載することで、「8K高解像度でのフレームレート60fps読み出し」「高飽和特性実現による広ダイナミックレンジ化」「グローバルシャッタ機能」を同時に実現。
▲fig1 画素構成比較
▲fig2 8Kセンサ 高解像度撮像例 街遠景撮影(解像度比較)
▲fig3 8Kセンサ 高解像度撮像例──スタジオ撮影
高解像度でも高速に画素ノイズを抑制可能な「画素内-容量結合型ノイズキャンセル技術」
有機CMOSイメージセンサは蓄積電荷を完全に読み出すことができず、画素(信号電荷蓄積ノード)リセット時のリセットノイズの影響を受けるという課題がある。さらに、8Kセンサのような多画素センサではノイズキャンセル時に垂直方向に並ぶ4000を超える画素分の大きな負荷を一度に駆動する必要があり、ノイズ抑制に時間がかかった。本センサでは、同社独自の半導体デバイス技術と、新開発の『画素内-容量結合型ノイズキャンセル回路』により、発生したリセットノイズを多画素駆動時にも高速にキャンセルする構成を開発。本構成では、画素内に設けた負帰還ループを用いることで画素毎にリセットノイズの抑制を高速に実現できる。
▲fig4 ノイズキャンセル技術比較
高飽和特性を実現可能な「画素内-ゲイン切り替え技術」
有機CMOSイメージセンサでは、配置自由度のある回路部に大容量の容量素子を搭載することで、同一画素構成を用いながらカメラシステムからのスイッチ切り替えのみで高感度モードと高飽和モードの両モードを実現できる。高感度モードでは4.5万電子の光量までのデータの高感度な撮像を、高飽和モードでは45万電子の大きな光量までのデータの撮像を可能としている。本センサでは、高飽和モードにおいて高感度モード比10倍の大きな光量まで撮像可能。fig3(a) のようにランプのフィラメントの細かい巻き構造まで鮮明に映し出し、明暗差の大きいシーン(fig5, 6)でも黒つぶれ・白飛びのない撮像が可能となる。
▲fig5 8Kセンサ 広ダイナミックレンジ撮像例──スタジアム撮影
▲fig6 8Kセンサ 広ダイナミックレンジ撮像例──和室撮影
有機薄膜へ加える電圧変更のみで、感度変更可能な「電圧制御感度変調技術」
有機CMOSイメージセンサは、有機薄膜へ加える電圧を制御するだけで、有機薄膜の感度を変更できる。これにより、シリコンイメージセンサでは実現できなかった「8K解像度での全画素同時撮像可能なグローバルシャッタ機能」と「感度を連続、無段階に変更可能な電子NDフィルタ技術」が実現できる。
▲fig7 グローバルシャッター実現可能な画素構成比較
▲fig8 電子NDフィルタ撮像例──スタジオ撮影
パナソニック株式会社
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