ソニーは、業界最小(※1)となる10µm角画素の裏面照射型 Time of Flight方式(以下、ToF方式)距離画像センサーを開発したことを発表した。これは、2015年に買収したソフトキネティックシステムズ社のToF方式距離画像センサー技術とソニーの持つ裏面照射型CMOSイメージセンサーの技術を融合し実現したものだ。

▲CMOSイメージセンサーによる撮影画像

▲同一距離での取得距離画像比較:本開発品(左)と従来品(右)

一般的にToF方式とは、光源から発した光が対象物で反射し、センサーに届くまでの光の飛行時間(時間差)を検出することで、対象物までの距離を測定する方式。ToF方式のさらなる精度向上のためには、反射光を効率よく捉えるとともに、より高速に距離測定の処理を行う必要がある。ソフトキネティックシステムズ社が保有する、ToF方式を実現する画素技術CAPD(Current Assisted Photonic Demodulator)は、反射光信号の読出し精度を上げるために、画素内ドリフト電流(※3)を用いた高速処理が可能な独自の画素構造を採用している。この構造により各画素の測距精度が上がり、遠距離でも正確な測定と距離画像の取得が可能となる。

今回ソニーは、このCAPDとソニーの裏面照射型CMOSイメージセンサーの画素技術を融合させることにより、業界最小(※1)となる10µm角画素の裏面照射型ToF方式距離画像センサーの開発に成功した。本センサーは、配線が受光部の下に配置されるという裏面照射型構造の優位性を活かし、画素構造と画素内配線をCAPDにあわせて最適化することで、集光効率の向上と、測距のための高速な処理が可能となった。これにより、従来比(※2)1.5倍の距離でも、従来と同等の精度を実現した。また、高い集光効率により光源の出力を抑えることができ、距離画像センサーモジュールの低消費電力化・小型化にも貢献している。

近年、AR(拡張現実)/ VR(バーチャルリアリティ)やロボット、ドローンの市場では、より正確な距離画像の取得が求められる。本センサーは低消費電力で小型ながら高精度な測距性能を実現することで、今後 DepthSense 商品群として、ジェスチャー認識や物体認識、障害物検知など、ToF方式距離画像センサーの応用領域を広げてゆく。

主な仕様

※1   裏面照射型 Time of Flight方式距離画像センサーにおいて。2017年6月5日広報発表時点。
※2   自社の表面照射型ToF方式距離画像センサーとの比較。
※3   画素内ドリフト電流:通常のイメージセンサーと異なり、空乏層を形成せずに、2極間電位差により発生する電流。