Blackmagic Design(ブラックマジックデザイン)は、山崎貴監督の最新作「海賊とよばれた男」で、VFX用の素材撮影にURSA Mini 4K EFが使用されたことを発表(4月3日)。また、URSA MiniのRAWデータからDaVinci Resolve Studioにより現像され、合成作業素材に使用された。
海賊とよばれた男
©️2016「海賊とよばれた男」製作委員会 ©️百田尚樹/講談社
「海賊とよばれた男」は「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズや「永遠の0」などのヒット作を数多く送り出している株式会社白組のVFXチームによる最新映画作品。2014年に邦画年間興行収入ランキングで1位となった、同社・山崎監督による「永遠の0」の制作チームが再結成され、百田尚樹氏による同名小説を映画化した。
同作は、出光興産の創業者である出光佐三をモデルとしており、主人公の国岡鐡造が様々な困難にあいながらも国岡商店を大企業へと成長させていく様子を描いたもの。主演を務めた岡田准一は、国岡の20代から90代までを熱演。
メインカメラで撮影したグリーンバックショットに合わせるためのVFX素材撮りにBlackmagic URSA Mini 4Kが使用された。「今回の課題は別のカメラ素材とデータとして整合性の高いVFX素材を撮影することでした」(同社ビジュアルエフェクトデザイナー・大久保榮真氏談)
追加のVFX用素材の撮影という状況で、カメラを選定する際にいくつかの条件があった。操作の簡単さ、内部収録が可能かどうか、4K解像度対応、RAW撮影、撮影後のデータのハンドリングのしやすさ…などである。
「今回は本編撮影終了後に、VFX用の追加素材として撮影部の細山正幸が撮影を担当しました。URSA Mini を初めて触れたという状態で、準備期間1日で使い方、特性などを把握してもらい、無事撮影できたというのはひじょうに大きいです。プロフェッショナルな機材ほど設定が細かいので、充分に慣れていない機材はミスしやすい側面もあるのですが、URSA Mini は設定がシンプルなため、カメラマンとしての基本的な知識があれば、必要なポイントをしっかりと押さえることができました」と大久保氏。
撮影は海岸にカメラを持ち込んで行われた。
「メインカメラを使おうとすると、外部収録機など持ち込む機材も増え、カメラ助手も必要になってきてクルーがどんどん大きくなってしまいます。URSA Miniは内部収録もでき、最小人数で撮影を敢行できました。撮影後すぐに、現場でデータを確認できる点も大事なポイントでした。また、EFマウントだったので所有レンズを使えた点も良かったですね」
ポストプロダクションの観点からは、4K解像度やRAW撮影ができる点が決めてだったという。「撮影した素材を必要な部分を切り取り自由に使いたかったので、最終納品サイズの2Kより大きいデータが欲しかったんです。またCGレンダリングでは16bit half floating pointでレンダリングしているので、合成作業の素材にも12ストップの幅広いダイナミックレンジの素材が欲しい。さらに、その素材を自分たちで正確に現像できる点も重要でした」
大久保氏のチームでは色管理にACES, OpenColor IOを活用し、最終出力の2K DCI-P3をマスターとして作業をしている。VFXチームにデータを渡すときにも色管理をしっかりとした状態で渡す必要があった。VFXの特徴として元素材に見た目だけで合わせるのではなく、データのカラースペース、ガンマ、ダイナミックレンジなどの様々な情報が揃っている必要がある。
「今回、Blackmagic URSA Mini 4K EF が利用できたのもDaVinci Resolveのカラーマネージメント機能によりURSA Mini 4KのRAWイメージから手軽にACESに変換できたことが大きいです。さらに、URSA Miniのプロファイルを熟知しているメーカーがDaVinci Resolveを出しているからこそ、こんなに手軽に正確な色で出力ができるのだと思います」と大久保氏。
作業としては、DaVinci Resolveのカラーチャートによるマッチング機能を利用してリニアのACESにして「.EXR」のデータとして書き出した。従来は、一度ラボでグレーディングしてもらわなければならなかった作業が手元でできてしまうのはとても魅力的だったという。これにより、各チームで全て同じ色でショットを確認できた。
「今回のVFX用素材の撮影で、Blackmagic URSA Miniの利便性はとても高かったです。いろいろな条件がある中、選択肢はこれ以外ありませんでした」と大久保氏は結び、今回の機材選定について大いに満足した様子を見せていた。
株式会社白組 ビジュアルエフェクトデザイナー
大久保榮真氏