AIモデルを使用した初のTVCMとして話題となった、お〜いお茶 カテキン緑茶TVCM 「未来を変えるのは、今!」篇。本記事では、AIタレントを提供したAI model社CTOの中山佑樹さんを講師に招き、AIタレントを活用した一連の映像制作フローやリアリティ溢れるAIモデルの制作秘話について詳しく語ってもらった。
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講師 中山佑樹 AI model株式会社 CTO
慶應義塾大学卒業後、大手広告制作会社でプロデューサーとして勤務。その後、WEBディレクターやプロジェクトマネージャーとして複数社での勤務を経て、AI model社のCEOと意気投合し、AI model社のCTOに就任。
WEB ● https://www.ai-model.jp/
AI model株式会社とは?
AI会社設立に至るまで
ファッションビジネスの課題をAIテクノロジーとクリエイティブで解決する
AI model株式会社CTOの中山佑樹と申します。弊社は、ファッションビジネスの課題をAIテクノロジーとクリエイティブで解決し、世界中のアパレル企業とともに新たな価値を創造するといったミッションを掲げ、ファッション業界やテクノロジーの発展に貢献することを目的として起業した会社になります。事業内容としてはAIモデルの企画、開発、運営になります。
元々は、AIと決めてスタートしたわけではありませんでした。経緯をお話しすると、僕は慶應義塾大学卒業後に大手広告制作会社に入社し、様々なCMに関わらせていただきました。その後、WEBサービスやアプリシステムの開発会社にてエンジニア・プロジェクトマネージャーを経験し、自身でも一度起業をしています。そのときは医療通訳システム系の開発をしていたのですが、コロナ禍で外国人向けのサービスが難しくなってしまった時期に、CEOの谷口から「面白いアイデアがあるんだけど」と声をかけてもらい一緒にやり始めたのが、AI model株式会社設立のきっかけになりました。
2018年からAIモデルの開発がスタートし、2020年にAI model株式会社を設立して去年の6月にAIモデルがサービスインしました。クライアントは基本的にアパレル系の会社が多いですが、AIを使った伊藤園さんのCM以降いろんな会社からお問い合わせをいただくようになりました。本記事では、AIのモデルを使った作品を通じて、AIモデル制作の舞台裏について解説していきます。
サービス開発に至る課題
モデル撮影における課題
● EC移行による撮影体数の増加
● 権利関係の問題で用途が限られる
● 一定数の商品が必要
● 労働集約数的で作業工程が多い
● 撮影体数の限界
● 契約外の競合縛り
● 年齢による仕事の減少
バーチャルヒューマンを起用することで様々な課題を解決できるのではないか
実はクライアントや制作会社、モデルも課題を多く抱えています。まず、クライアントに関してはEC移行による撮影体数増加といった課題があります。要はコロナ禍を経て、店頭よりもECのほうが売れるようになっちゃったんですよね。それにもかかわらず、ECに予算を大きくかけられるわけではない。アパレル会社にもよるんですが、そこまでECを重視していない会社が多く、なかなか撮影体数の増加に追いついていない状況が課題としてありました。また、権利関係の問題で用途が限られるといった課題もあります。いわゆるモデルさんの2年縛りによる“顔切りモデル”などですね。例えば、ECサイトの商品紹介でモデルを使う際、2年間の権利が切れた後でも「顔を切ったら使っていいよ」という契約で、顔の出ない状態でモデルを掲載をすることをアパレル業界では顔切りモデルと呼びます。なので、クライアントはどの広告のモデルが2年間経過したのか、権利が切れているのかを逐一チェックしなければいけないという手間があるんですね。加えて、逆説的ではありますが撮影をするために一定数の商品が必要になるという課題があります。モデルを撮影するためには、1日に約40コーデ前後を撮らないと採算が合わない場合が多いんです。例えば、春夏物などでそもそも40コーデも作っていない会社の場合、モデルを呼ぶとコストパフォーマンスが合わずに撮影できないケースが非常に多いです。その場合、40コーデ集まるまでは物画像だけで一旦掲載せざるを得ず、売りの時期を逃してしまうことも多々あります。
一方、制作会社としても日に40コーデの撮影となると流れ作業になってしまい、凄まじく労働集約的になるという課題があります。その割に、クリエイティブ的なチェックも多くとても難しいんです。撮影体数の面でも40コーデ以上の撮影は受けられないといった限界もあります。
また、モデルさんには契約外の“競合縛り”という課題があります。競合縛りとは、同じ期間に競合となる同カテゴリの製品や同分野の企業広告に出演してはならないという契約上のルールなんですが、例えば下着メーカーに出演したとき、契約上では競合縛りがなかったのに、業界慣習的に「競合には出ないでね」という空気がある。でもそこにお金は反映されていないので、それって非常に不健全ですよね。また、年齢による仕事の減少という課題もあります。モデルさんには“モデルの谷間”と呼ばれる時期があり、具体的には30代中盤あたりになると仕事が減るんです。もう少し高年齢になればまたニーズが出てくるんですが、ニーズの切れる30代あたりがとても難しい時期なんですね。
こういった様々な課題をバーチャルヒューマンを起用することで解決できるのではないかと考え、形にしたのがAI modelというサービスです。
課題の解決
バーチャルヒューマンをAIにより生成
AI生成することでコストダウンの大幅実現とアパレル運用の流れにフィットする
バーチャルヒューマンをAIで生成する理由は、3DCGで作ると費用やスケジュール感がアパレルの流れの中に合わないからです。例えば、本日依頼があって7日後に納品というような話だと、3DCGでの制作は時間的にも費用的にもなかなか厳しいですよね。AIで生成すれば大幅にコストダウンが実現でき、アパレル運用のスピーディーな流れにもフィットします。また、AI modelに関しては更新の費用や期限、媒体の制限なども全てフリーのため権利関係もクリアになり、クライアントが悩まずに済む便利な素材として使用できます。さらに年齢変化の技術によって、モデルさんも年齢に関係なく仕事を受けられるようになります。これは伊藤園さんのCMで使った技術ですが、実在するモデルをAI技術によって若返らせたり、老化させることも可能です。なので、モデルとしてポージングなどの能力があれば年齢的に仕事を受けづらい時期でも仕事の幅を増やすことができます。
こういったAIの話題は敵視されがちな風潮がありますが、我々としても俳優やモデルさんの仕事を代替できるとは思っておらず、あくまでも補助的な役割を担うツールとしてクリエイティブの拡張性といった部分に踏み込んでいけるものなのかなと捉えています。
マネキンから着用イメージを生成
労働集約的なモデル撮影から解放される
マネキンで撮影したものを人物の着用イメージにすることで1日に40コーデを着て脱いでという労働集約的なモデル撮影から解放され、小ロットからでも受けられるようになります。また、撮影体数増加の面でもモデルさんを呼ばなくて済み、カメラマンのペースでマネキンを撮影してもらえればいいので結果的にトータルでは撮影体数も増加することになります。このようにAIを活用することでこれまで抱えていた多くの問題を解決することができます。