生成AIの急速な発展・普及により、著作権関係を含め、AIがもたらす様々な影響について議論がされている昨今。本記事では、アート・エンターテインメント業界を得意とする骨董通り法律事務所の弁護士 田島佑規さんに、生成AIを活用する際に知っておくべき著作権の知識について、詳しく解説してもらった。
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講師 田島佑規 Yuki Tajima
弁護士。大阪府高槻市出身。神戸大学法学部卒業/京都大学法科大学院修了/2016年弁護士登録。現在は東京にある骨董通り法律事務所に所属。文化庁EPAD(緊急事態舞台芸術アーカイブ+デジタルシアター化)事業権利処理チーフ、京都大学大学院・芸術文化観光専門職大学非常勤講師。デザイナーなど各種クリエイターを対象に無料法律相談といったリーガルサポートを提供する「デザイナー法務小僧」(https://d-kozo.com/) 企画・運営など、エンタメ・コンテンツビジネス分野において法務サポートを行う。
X(Twitter)●https://twitter.com/houjichazuki
生成AIという新技術が加わり弁護士から見ても混沌としている著作権の現状
私が所属している骨董通り法律事務所は、アート・エンターテインメント業界のクライアントに対する法務サポートを中心に行なっています。主には、舞台・ライブイベント、出版や映像業界、音楽やデザイン関係など、さまざまなジャンルで活動されている個人・法人の契約書や権利関係のサポートをしています。
最近では、生成AIに関する相談をいろいろなジャンルの方から受けることが多くなりました。そもそも著作権自体があらゆる法律分野の中でも理解するのが難しい分野のひとつで、そこに生成AIという新技術が加わり、弁護士の視点からも混沌としているのが現状です。
今回の記事では、法律の専門家ではないクリエイターの方が生成AIを使う際に、最低限気をつけたり意識しなければいけないことを、できるだけ分かりやすく説明していければと思っています。
法律家としての活動を通じて様々な芸術活動を支援する法律事務所として、“For the Arts”を旗印に2003年に設立。出版、映像、演劇、音楽、ゲームなどアート・エンターテインメント業界のクライアントに対する契約交渉の代理、訴訟などの紛争処理、著作権など知的財産権に関するアドバイスの提供が中心的な取扱業務。また、幅広い業種のクライアントのための企業法務、紛争処理にも力を入れている。
オフィシャルサイト:https://www.kottolaw.com/
著作権についての前提知識
「著作物」を創作した者が持つ権利と特徴
著作権
概要 : 著作者の財産的利益を守るための権利。著作権者は、他者による「著作物」の利用を禁止できる。
手続き: 不要
譲渡 : 渡可能
著作者人格権
概要 : 著作者の精神的利益を守るための権利。
手続き: 不要
譲渡 : 譲渡不可能 ※著作者人格権を行使しないとする契約はあり得る
「著作物」とは?
思想・感情を創作的に表現したもの(高度な独創性や芸術性は不要)
●「著作物」に該当するもの
●『著作物』に該当しないもの
画家の画風自体は保護しない(画風が類似していても著作権侵害とはしない)
引用:令和5年度著作権セミナー「AIと著作権」
令和5年6月文化庁著作権課 講義資料10頁
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/pdf/93903601_01.pdf
「私の著作物を無断で勝手に使わないで」と言える権利が著作権
まず出発点として、著作物を創作した者が持つ権利には著作権と著作者人格権のふたつがあり、似た権利として実演家やレコード製作者が持つ著作隣接権があります。ただ、ここでは細かい部分を抜きにして、著作物を作った人が持つ権利が著作権なんだなというくらいの理解で充分です。ポイントとしては、著作権は登録などの手続きをしなくとも発生する権利だということ。これは知的財産権の中でも珍しい権利です。例えば、商標権や特許権などいろいろな権利がありますが、そのほとんどが申請をして、特許庁が審査をし、権利として認めるもしくは認めないというプロセスがあります。
また、前提知識として著作物を創作したものを著作者、著作権を持つ者を著作権者と言い、著作権は譲渡が可能です。代表的な例に、音楽の著作権を管理しているJASRACなどがあります。著作権管理のために著作者から著作権を譲り受け(信託譲渡などといいます)、権利者の代わりにJASRACがその使用料を集め、権利者へと分配する形をとっています。著作権を持つ者は、他者による著作物の利用を禁止・コントロールができ、 ありていに言えば「私の著作物を無断で使わないで」と言える権利が著作権になります。つまり、私が今ここに書いているテキストにも著作権が発生するので、その内容を複製して掲載する場合には、私の許可が必要だということになります。
生成AIと著作権
● 生成AIに関するふたつの場面
出典:令和5年度著作権セミナー「AIと著作権」令和5年6月文化庁著作権課 講義資料より
❶ AI開発・学習段階
● 著作物を学習用データとして収集・複製し、学習用データセットを作成
● 学習用データセットを学習に利用して、AI(学習済みモデル)を開発
❷ 生成・利用段階
● 生成するために、学習させたAIに指示を与える
● AI生成物を公開・販売する
Q. 生成AIで制作したものを利用すると、著作権侵害になりますか?