基本的なライティングの技術

3灯照明とは?


被写体の主な露出を作るライト

被写体の輪郭などを出すために被写体後方から照らすライト

キーライトの影や、空間を補助的に照らすライト







3種のライトで構成するライティングの基本

3灯照明とは、ライティングの基本と言われる照明技術のことで、メインとなるキーライト、補助光となるフィルライト、被写体の輪郭などを出すためのバックライトの3つから構成されます。仮にインタビューセットを組んだ場合の3灯照明は下図のような構成になります。フィルライトは暗部を補助するような形で設置し、バックライトは肩口や後頭部に当たるよう設置することが多いです。

①はフィルライトを白い天井にバウンスさせた光で明かりを作っただけの状態です。②はさらに肩口に当たるバックライトを加えた状態になります。ここでは白い背景でしたが、黒い背景や色が暗めの衣装などの場合は、 バックライトを少し強めにギラッとさせ、より輪郭を出すこともあります。また、髪の艶を出すためだけにバックライトを使うこともあります。③は最終的にキーライトをオンにし、分かりやすく3灯照明にした状態となります。







小規模・ワンオペでのライティング実演

場所選び

インタビューする際は、その人がどんな場所で働いているのかを押さえておこう。「例えば、農家の方が働くムービーであれば自然が映っていたほうがいいし、医師の方であれば白衣を着て綺麗な部屋がいいなど、イメージに合った撮影場所を選ぶことが多いです」とOhkawaraさん。



撮影には玄光社内の会議室を利用。大きな窓があり、照明のコントロールのしやすさ、自然光の気持ちの良さを考え選定された。






事前に現場の情報を探ろう

現場で何が必要になるのかさまざまな角度から情報を拾っておく

撮影当日になるべく荷物をコンパクトにするためにも、事前の下見ができる場合は、何が必要になるのかをさまざまな角度から情報を拾っておくといいですね。

また、何時頃に光が入ってくるのか、何時まで撮影できるのかなどの目安を測ったり、画作りの部分で何mm程度のレンズが必要なのかなども確認しておきましょう。加えて、撮影場所が都内の場合は環境音がうるさく、インタビューが撮れないこともあるため、事前に問題がないかを把握しておくことをおすすめします。





ロケハンに役立つアプリ

何時頃に太陽が入ってくるか、日はどちらに落ちていくかなど、日の出や日の入りの時間をカメラを通して確認できるアプリ。


カメラとレンズの組み合せによる画角を確認できるアプリ。ワンオペ現場などでカメラセッティングを時短することができる。








ライティングに使用した機材



明るさをコントロールするために

コントロールしにくい自然光をどう活かすか

明るさをコントロールするために自然光と照明のどちらからいじればいいかという話ですが、まず自然光は時間によって変化してしまう特性があります。また、太陽の照射面積はあまりにも大きいため、大型の機材がなければコントロールが難しく、ワンオペの現場でそれをコントロールすることは現実的ではありません。

一方、機材で作る照明は太陽光に比べて光量は少ないですが、コントロールができる上に時間によって変化しません。その上で、まずはコントロールしにくい自然光をどう活かしていくかを考えてライティングを組みましょう。





ワークフロー

自然光に近い部分を基準に露出を決める

画を作るときは画面の中で最も明るいハイライト部分を基準にカメラの露出を考えていきます。僕は窓の外が白飛びしているような状態があまり好きではないので、今回の場合、窓の外の青空がハイライト部分にあたります。その際、露出計を使うことで測定したい箇所を基準にした適正露出値を割り出すことができます。


ハイライト部分に露出計を向けて測定した結果、適正露出値はF64 1/3と表示された。




基準露出からNDフィルターでさらに調節

カメラによって変わりますが、僕は基本的に画面上の一番明るいところからマイナス5段ほど絞りを下げたところを基準露出としています。今回の場合、画面のハイライト部分を基準とした適正露出値がF64だったため、そこから5段下げたF11を基準露出と定めました。最新の「ARRI ALEXA 35」などの場合はさらにダイナミックレンジが広くなるため、もっと段数を上げても大丈夫だと思います。

インタビューや人物を撮影する際に後ろをぼかしたい場合は、NDフィルターを使ってさらに調節します。ここでは、基準露出からマイナス4段分のNDフィルターを使いました。


普段はソニー製のカメラを扱うことが多いというOhkawaraさん。今回は、S-Log3に基づいた場合の基準を解説してもらった。カメラごとのダイナミックレンジに合わせて変える。


NDフィルターとは、色彩に影響を与えることなくレンズから入る光量を一定量落とす目的に使用されるフィルターのこと。NDとは、Neutral Densityの略で、「中立な濃度」を意味する。





① メインのキーライトとしてAputure LS 300xを設置、ソフトボックスを装着し100%で発光させる。

キーライトに向けて露出計を入射光式で使用した結果、基準露出+1段のF16と測定された。露出計の使い方は次ページを参照のこと。





② 暗部が落ちているため、フィルライトとして Amaran P60c(パネルライト)を設置し、30%で発光。

フィルライトに向けて露出計を入射光式で使用した結果、基準露出-1段のF8と測定された。今回は基準露出−1段のF8で当てているが、−2段程度のF5.6〜F8あたりで設定することもあり、−2〜−1段で設定することが多いそうだ。





● 解説動画を見る








露出計の使い方

● セコニック SPEEDMASTER L-858D

本体・画面の説明

測定モードを「定常光HDシネカメラモード」にした場合の画面。測定モードの選択によって表示される内容が変わる。





入射光式での使い方

被写体に当たる光を測定して露出を決める際に使用。近づくことのできる被写体に対して使用可能。

入射光式に切り替える。カメラ設定(シャッタースピード、ISO感度、フレームレート)を露出計に入力する。



光球(受光部)を引き出す。入射光式の場合、光球に入ってきた光量を測定することができる。



光球(受光部)を引き出す。入射光式の場合、光球に入ってきた光量を測定することができる。



入力した設定の場合、適正露出はF4と測定された。



光球は半球状になっているので多方向からの光を測定してしまうため、一方向からの光を測りたい場合は光球を沈め、平板にした状態で測ると他のライトからの影響が少なくなる。


「もしくは、光球を引き出した状態でも他の光が入らないよう手で塞ぐことで、測定したい照明の明るさを測ることができます」とOhkawaraさん。




反射光式での使い方

被写体から反射した光を測定。被写体に近づくことのできない風景などに使用する。

入射/反射切替画面から反射光(スポット)を選択。



レンズキャップを取り外す。



ファインダー接眼部から計測したい部分に露出計のレンズを合わせ、測定ボタンを押すことで適正露出値が表示される。



反射式露出計内部の見え方。丸部分の適正露出値はF22と測定。







最近はブルーライトカット眼鏡をかける方が多く、サングラスのようなフィルターが1枚入っているため光が反射して映り込んでしまうんですね。被写体に対してカメラが入射角だとすると、反射角にあるライトが眼鏡に映ってしまうため、まずはその角度を探ってからレンズの反射角ではない方向からキーライトを打つのがいいと思います。


パネルライトはワンオペでも持ち歩けるため便利ですが、光量が少ないので点光源のライトも持っておくことをオススメします。自然光をベースとしたライティングをしたいとき、パネルライトだけでライティングするのは難しいですが、点光源のライトがあればそういった演出もできますし、ソフトボックスを使えば柔らかいライトにすることもできるので、バリエーションを持たせる意味でも点光源のライトは1灯持っておくに越したことはないでしょう。


コンパクトな200WクラスだとAputureのAmaran200x Sあたりがオススメです。ただ、300Wクラスのライトがあったほうが何かと楽かなとは思いますね。ちなみに、撮影場所が日光の入りにくい会議室のような場所であれば、軽量のライトを持ち込むよりも室内の照明をカットすることを僕なら考えます。蛍光灯であれば列ごとにオフにしたり、黒いテープで塞いでしまうなど、フィルライトとして使う地明かりを落としていく方向でまずは調整しましょう。
コンパクトな200WクラスだとAputureのAmaran200x Sあたりがオススメです。ただ、300Wクラスのライトがあったほうが何かと楽かなとは思いますね。ちなみに、撮影場所が日光の入りにくい会議室のような場所であれば、軽量のライトを持ち込むよりも室内の照明をカットすることを僕なら考えます。蛍光灯であれば列ごとにオフにしたり、黒いテープで塞いでしまうなど、フィルライトとして使う地明かりを落としていく方向でまずは調整しましょう。


Aputure Amaran200x S