ビデオグラファー人口が増える今、案件が多く舞い込む人とそうでない人との差は一体どこにあるのか? 本記事では、映像プロデューサーとして様々なビデオグラファーとチームを組み、クライアント向けに映像を制作するtape代表の河合将太郎さんに、ビデオグラファーとして活躍するための戦略を独自の知見から解説してもらった。

講師   河合将太郎   Shotaro Kawai

tape 代表 / 株式会社じゃがいも代表取締役。2017年に新卒でウエディングプロデュース会社に就職。2020年に未経験の動画業界へ転職。オンライン動画制作スクールの運営として入社。その後、新規事業開発、当時国内最大だった動画クリエイターのコミュニティ運営を経験する。2022年にクライアントがゼロの状態で独立起業する。プロデューサーとして、クリエイターとチームを組成して新規開拓を行い、主にSNS用の動画制作事業を提供している。

Instagram ● https://www.instagram.com/taro_0524/






クリエイターが自由に表現するために

クライアントとクリエイターの間に入ってミスマッチを防ぐ

動画プロデューサーの河合将太郎と申します。僕は新卒でウエディングプロデュース会社に就職し、2020年に未経験で動画業界へ転職、オンライン動画制作のスクール運営の会社へ入社しました。ウエディングプランナーをやっていたとき、営業だけでなく採用活動や拠点長もやらせてもらったので、次は目に見えるスキルを身につけようと思い、動画を学びました。2022年にクライアントが全くいない状態で個人事業主になりました。動画を2年学んで知識が身についたので、これまでのスキルを使っての転職も考えましたが、もし独立してご飯が食べられなくなったとしても、なぜ失敗したのかをしっかりと言語化できれば再就職においてもプラスだと思ったんですよね。だったら起業という選択肢をとったほうがいいと思い、独立して今に至ります。現在の主なクライアントは大手アパレルブランドや高級焼肉店、レンズフィルターの老舗メーカーなどになります。

僕の仕事としては、プロデューサーとして毎月決められた本数の動画を納品しているため、その管理が主で、クライアントとのやりとりは全て僕が行なっています。僕がプロデューサーをやろうと思った理由は、「動画」という言葉がまだ世の中に浸透しきっていないと感じたからです。ひと口に動画と言っても、シネマティックもあれば、リールもYouTubeもTikTokもありますが、どれも全く別のジャンルだと思っているんです。しかし、世の中では全てを一括りにして動画と呼んでおり、それぞれに適切な人材がいるはずなのに、クリエイターが何でもやるせいで事故が起きている現場や、その人に合った仕事ならもっと活躍できたのに、と感じる場面が多々あって。そういったとき、動画の知識を持って、クライアントとクリエイターの間に入って話をする人間がいればミスマッチを防げるし、クリエイターも自分の一番好きなことを表現できると思ったんです。そんな、動画プロデューサーという仕事をしながら普段から様々なクリエイターと出会うようにしているので、その経験を踏まえ、「勝てるビデオグラファーの条件とは何か?」という部分を掘り下げていければと思います。


●「tape」とは?

河合さんが立ち上げた動画クリエイターチーム。企業の動画や写真領域の相談役として相手の立場に立ちきって考え抜き、クリエイターの価値向上とクリエイティブに真っ直ぐに向き合える環境を作ることを目指す、クリエイターエージェント事業を手がける。クライアントには主に大手アパレルブランド、首都圏に22店舗を展開する高級焼肉店、73年の歴史がある光学機器メーカーがある。

● ポートフォリオを見る

https://www.instagram.com/tape_portfolio/





tapeの動画作品事例

Kenko Filters ブランディングムービー/ディレクター Y2

● ケンコー・トキナー

東京都中野に本社を置く、写真用品や光学製品の製造と販売を主とする日本の企業。レンズフィルターの製造・販売では国内最大手として知られる。また、ZEISSをはじめ国内外の企業の代理店業務を手がける。


● Instagramを見る

https://www.instagram.com/kenkofilters.jp/


長い歴史を入れつつブランディングを意識するという観点で制作

ケンコー・トキナーさんとは新商品のプロモーションなどで元々お付き合いがあったんですが、「リブランディングのための動画を作りたい」という相談が僕に来たところから今回のお話が始まり、ブランディングムービーを弊社で作ることになりました。

本動画は、シネマティックという映画のような雰囲気を持たせる技法を使っています。制作の流れとしては、弊社所属のシネマティッククリエイターに「どういう動画がいいかな?」という相談をし、それを経て彼らが企画を立て、僕がその企画をケンコー・トキナーさんに持っていくという形でした。

企画や動画の構成自体はほとんどクリエイターですが、予算の話からスケジュール調整、関わるクリエイター全てのアサイン、撮影場所や機材の手配、納品までのやり取りといったプロジェクト自体の進行とスケジュール管理、報酬の支払いなどのバックオフィス的な部分も含め、動画を作ること以外の全般を僕が担っています。また、撮影現場となった山にも、2時間くらいかけてクリエイターと一緒に登りました。動画の趣旨としては、ケンコー・トキナーさんの長い歴史を入れつつ、ブランディングを意識するという観点で制作しています。


ケンコー・トキナーのInstagram「Kenko Filters 公式」のリール動画。クリエイターはGouki Ofuchiさん。「15秒程度のショート動画ですが、レンズフィルターの効果がわかりやすい動画になっていますので、興味があればぜひチェックしてみてください」と河合さん。




#FR2 ポップアップムービー/クリエイター Y2

● #FR2 とは

渋谷発祥のファッションブランド「VANQUISH」を展開する株式会社せーのによるブランド。“We are Fxxking Rabbits”をテーマに掲げ、「カメラマンが着る服」という独自のブランドコンセプトにて商品を展開。




現場のリアルを大切に作り込み過ぎないことを意識して制作

#FR2という原宿にあるアパレルブランドが、ロンドンでポップアップショップを展開することになり、僕とクリエイターが同行して撮影を行いました。

この会社さんとは僕が独立してから一緒にやらせてもらっている関係性なのでもう2年くらいのお付き合いなんですが、本動画は1年くらいのタイミングで作らせてもらったものになります。こちらの動画もシネマティックな映像となっており、日常を綺麗に格好良く撮ることのできるビデオグラファーを起用して、僕とそのクリエイターだけで現地に行っています。

#FR2さんは、作り込み過ぎないことをすごく大事にしている会社です。プロモーションっぽくなりすぎてしまうと作られたものになってしまうため、現場で「こういうの撮ってみようよ」「この場所良さそうだね」みたいなことをクリエイターと一緒に考えながら、海外の担当者とハグしているシーンなど、その場で起きたリアルを中心にクライアントの意向を踏まえた動画制作を行いました。