主に海外において人気を博す日本の観光スポットムービー。なかでもInstagramでは近年、縦型のリールが流行する傾向にある。本記事では、地元・京都を中心に絶景写真と映像を撮影し、20万人を超えるフォロワーを集める正垣琢磨さんを講師に迎え、カメラ初級者から中級者に向けて、縦型動画を作る際に押さえたいポイントやスポットの選び方、撮影・編集のワークフローなどを詳しく解説してもらった。
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講師 正垣琢磨 Takuma Shogaki
1988年生まれ。武蔵野美術大学卒。普段は通信販売会社で会社員をしながら、休みの日には写真撮影や映像制作を楽しむ休日カメラマン。SNSに実際に訪れた観光スポットの紹介がてらリール動画を投稿。Instagramのフォロワー数が増えるとともに撮影依頼が増えたため事業化し、現在ではショートムービーを使った企業PRやWEBサイト制作を行なっている。
Instagram ● https://www.instagram.com/takumar_s/
当時はカメラの仕組みも理解しておらず映像も全くの独学で始めたため苦労した
僕は普段、『寺の友社』という全国のお寺向けに物品を提供する京都の通信販売会社で働きながら、Instagramをメインに写真や映像を発表しています。
もともと美術大学の油絵学科で美術の勉強をしていて、後半からデザイン学科に転科し、建築やインテリアデザインを学びました。大学時代にもカメラは持っていたんですが、当時はすべてフルオートで撮っていたので仕組みを理解しないまま使っていました。
写真を始めたきっかけは、バイクでいろんな場所へツーリングしていたときに、「旅先の風景を綺麗に撮りたい」と初めてミラーレス一眼カメラを買ったことでした。当時は結構いいバイクに乗っていたんですが、三脚をバイクに乗せて出かけるのが何だかおかしく感じてきたり、「いいレンズが振動で壊れたら嫌だな」と思うようになり、結局バイクを手放して機材購入費に充てるようになって、どんどん写真撮影に没頭していきました。
映像に関しては、完全な独学で始めたため最初は用語や技術が全くわからず苦労しました。今でも機材の使い方を正確に理解しているわけではなく、機材を買っては使ってみて、合わなかったら売って、を繰り返しながら、この2年間リール動画を作ってきました。それが今では仕事以外の時間をほとんどカメラ関係に費やす人生を歩んでおり、ありがたいことに映像関係のお仕事もいただけるようになりました。
今回の記事では、そういった経験談を踏まえ、観光をテーマにした動画を撮影する理由や、縦型リール動画に特化したスキルや知識を隠さずお伝えできればと思っています。
● Instagramを見る
https://www.instagram.com/takumar_s/
観光をテーマに撮影するようになった理由
リール動画を始めたきっかけ
妻が投稿したリール動画がものすごくバズったのがきっかけとなった
リール動画を始めたのは、今の妻を含む当時のカメラ仲間と一緒に滋賀県の伊吹山にヒメボタルを撮りに行ったことがきっかけでした。そのとき、僕はまだ動画をやっていなかったので写真を撮りに行ったのですが、横で妻が三脚を立てて真剣に何かを撮っていたんです。「あんまり蛍を撮っていないな?」と怪しんでいたのですが、帰りの車の中で妻がリール投稿したのが、蛍も若干映っていた星空と夜景のタイムラプス動画でした。僕は当時、リールの存在自体知ってはいたものの興味はなかったんです。でも、妻が投稿したリールがものすごくバズって、もともと500人くらいだったプレビュー数が一気に数万人まで伸びたんですよ。それまでは僕がマウントを取って偉そうにできていたのに、そこで一気に立場が逆転して(笑)。
僕も負けず嫌いなのでリール動画を始めて、3カ月くらいこっそり動画を撮りに行っていました。あるとき、京都の東福寺でのイベントを撮影したリールが初めて伸びて、「これはいけるな」と可能性を感じ始めたんです。それ以来、妻とふたりで研究しながらマーケティング要素を取り入れつつ実験的な感じで取り組むようになりました。
圧倒的なリーチ力と海外の反応
自分の作品を知らないユーザーに対してリール動画は非常に響きやすい
自分のInstagramに投稿した動画のリーチ結果を見てみると、通常の投稿に比べてリール動画が圧倒的に伸びています。特に、フォロワー以外のユーザーに関しては、通常の投稿が2.7万プレビューに対して、リール動画は234万プレビューと大きく差をつけています。僕がリールを始めた頃も似た結果になっていたため、自分の作品を知らないユーザーに対してはリール動画が非常に響きやすいと考えてもいいかと思います。
また、リーチしたオーディエンスは、日本のユーザーよりもインドやイランなどの海外ユーザーが多く、上位を占めていました。世界のInstagramユーザー数が最も多いのはアジアで、中でもインドのユーザーは3.6億人にものぼり、世界1位です。日本は国別で6位と上位ではありますが世界的に見ればユーザー数はそこまで多くありません。つまり、単純にリーチ数を増やしたいのであれば、日本だけを狙うのではなく世界に向けてコンテンツを作るほうが得策なんです。加えて、自分の住む京都は観光産業を世界に向けて発信するのに好都合な立地です。これまでの撮影スキルと溜めてきたスポットの知識を掛け合わせて発信することでファンの獲得に繋がると考え、観光をテーマにしたリール動画を撮影するようになりました。
● コンテンツタイプ別集計データ
Instagramリール動画制作奮闘記
テーマに沿っていればOK
「先にやったろう」という気持ちで休日や仕事前に有名スポットを撮影していた
動画を始めた頃は、テーマさえあれば機材は何でもいいと思っていたので、iPhoneで普通に撮ったり、写真機として使っていたニコンZ7の内部収録で撮っていました。Log撮影という概念も知らず8bitで撮影していたんですが、「めちゃくちゃ綺麗に撮れるな」と大満足でした。
当時はまだ、観光スポットを縦型のリールで投稿する方が少なかったので、「先にやったろう」という気持ちで休日や仕事前にカメラとジンバルだけ持って、まだ撮られていない有名なお寺や神社を巡ってはベタな構図でよく撮影していましたね。
撮影機材:iPhone
撮影機材:ニコンZ7(8bit)
外部モニター+Log撮影 & 編集に興味を持つ
本格的に映像のメカニズムを勉強し始め徐々に編集にも興味を持ち始めた
その後、Z7をどうにか使い倒そうと外部モニター&レコーダーを買いました。これさえあれば外部収録にはなりますが、Log撮影したものを10bitで記録することができるので。このあたりから本格的に映像のメカニズムを勉強し始め、徐々に編集にも興味を持ち始めます。
お恥ずかしい話ですが、“ビデオグラファー”としてご飯を食べている方がいることも、この頃にはじめて知りました。YouTubeやインターネットを介して、そういった方々の素晴らしい作品を調べていくうちに、「うわ、これは羨ましい」「僕もこうなりたい」と強く思うようになりました。
撮影機材:ニコンZ7(10bit)
撮影機材:ニコンZ7(10bit)
もっと色作りがしたい! RAWで収録を始める
RAWにしたことで色がまったく違って見え「すごく美しい映像が撮れるな」と感動した
撮影するうちに、「次はRAWで撮りたい!」という欲が高まってきたので、Z7を有償ファームアップしてRAW動画出力の設定を行えるようにしてもらいました。
RAWで撮れば後々の編集でもホワイトバランスや露出を調整できるし、白飛びや黒つぶれも防げ、空の階調も綺麗に残せるので、風景撮影には適した収録方法だと思います。ただ、RAWで撮る人は基本的にカラーグレーディングをすると思いますが、僕はどちらかと言えばカラーコレクションをしっかりやるためにRAWで撮っていました。