
kuwakuが大切だと感じていること

どんなものにも本質的な魅力は必ずありその魅力をどう伝えるべきかを考える
企画を考える上では、「課題を見つける」「ターゲットインサイトを見つける」など、「見つける」ことが非常に大切だと思うんですよね。企画とは、0から1を作る作業ではなく、無限の選択肢から1個を選び出す作業だと僕は考えています。企画の段階って本当にたくさんの選択肢がありすぎて、何がなんだかわからない状況から「こうあるべきだよね」という1個を見つける作業というか。それを見つけるために、ターゲットやクライアント、競合のことを理解する必要があると思うんです。
「クライアントが抱えている課題を見つける力」を養うためには、そもそも見ようとする心がなければ見つける力は育ちません。日常的に何をインプットするのかを大切にしているからこそ、こういった仕事に繋がっていったと日々感じているので、企画をする上では「見つける力、見ようとする心」を大切にしなければならないと常々思っています。
また、「本質を信じる」ということを、kuwakuではとても大切にしています。本質とは、時間的な流れや流行などに左右されず、企業や地域、商品そのものの持つ魅力だと考えています。どんなものにも本質的な魅力は必ずあるものだと考えており、その魅力をどのように伝えていくべきかが、プランニングする上で最も我々が大切にしているポイントでもあります。
クライアントは、自分たちの企業のことを誰よりも考え、誰よりも強い想いを持っています。だからこそ、僕らはそこに負けないくらいの気持ちで向き合わなければいけません。プランナーは、クライアントを外からの視点で見ることのできる唯一のポジションなので、クライアントのことを理解し、同じ気持ちを持つといった部分は最低限やらなければいけないところです。加えて、外から見たときにどう見えているのか、どうあるべきなのか、といった視点を提案できるのもプランナーという仕事のやりがいであり、楽しいポイントです。そういった、「クライアントより、想えるか」という部分を今後も大切にしながらプランニングをしていければと思っています。

kuwakuで手掛けた企画の事例紹介
HWIT コンセプトムービー

クライアント
渕上ファインズ株式会社

依頼内容
海外に向けた、新しいウエディングドレスブランドのコンセプトムービーの依頼。スペインで行われるウエディングドレスのイベントでお披露目したく、コンセプトムービーやルックブックなどの制作をお願いしたい。
ブランドの持つ様々な想いを理解した上でどこに課題があるかという観点から企画を提案
ここからは、実際にkuwakuが企画した事例を解説していきます。
ひとつめの事例は、オリジナルドレスブランド『HWIT』のコンセプトムービーです。クライアントは、日本でウエディングドレスのショップを運営している渕上ファインズさんという企業で、「スペインで行われるウエディングドレスイベントでお披露目する、オリジナルドレスブランド『HWIT』のコンセプトムービーとルックブックを作ってほしい」とのご依頼からスタートした企画でした。
まずは、ブランドの概要を知るという意味でも、渕上ファインズさんに質問をしながらお話を伺いました。HWITのドレスは、いわゆる既存のウエディングドレスブランドのような「キラキラ」「ふわふわ」といったテイストとは違うドレスで、一回性の美しさに着目したドレスブランドです。加えて、レンタルドレスの文化がなく、消費の激しい海外のドレス文化を変えたいという想いがあり、一度着たあとも着回すことができるようなドレスになっています。また、日本の伝統工芸をドレスに使用しているんですが、伝統工芸の後継者が少なく消え掛かっている現状があり、海外にその文化を輸出することで新しい価値を作っていきたいなど、様々な想いのあるブランドでした。
ただし、近年のSNSではフォトウエディングや「自分らしい結婚式」を重視する背景があり、個性的なドレスも出てきてはいるものの、依然として華やかなデザインや「一度きりだからこそ高価なものや特別なものを着たい」という需要も強い印象を受けました。
そういったリサーチ結果も踏まえ、今回に関しては試着する花嫁側の意見よりもバイヤーの視点が重要と考え、スペインのウエディングドレス会場に来るバイヤーのブログを読んだり、渕上ファインズさんの顧客からお話を伺うなどの調査を重ねていきました。
そして、HWITが何を目的とするのかを整理し、「まずはHWITを知ってもらい、欲しいと思ってもらうことが重要ですよね」という提案をした上で、そう思ってもらえるような映像を作るところから始めることになりました。
HWITの考える独自の美しさの概念を伝えられるコンセプトムービーを
HWITというブランドを知ってもらうための課題はふたつあり、ひとつは「海外のウエディング業界において知名度がまだない」ということ、もうひとつは「デザイン性や華やかさが重視される業界のため、シンプルなドレスの見た目で勝負すると不利になってしまう」ということです。
まずは、HWITならではの考え方や、今までのウエディングドレスの文化と全く違う価値観をバイヤーに印象付けることで、 数多くあるウエディングドレスの中でも埋もれずに伝えることができ、そこに共感してもらうことこそが「このドレスが欲しい」と思ってもらえる一番の近道なのかなと考えました。
なので、「HWITの考える美しさの概念自体が独自なものだと思うので、まずはそこを伝えられるようなコンセプトムービーにしませんか?」というお話をした上で、皆で共通認識を持っていたほうがいいと考え、まずはキャッチコピーから制作しました。
調査
・ブランド概要を知る
・ウエディング業界の調査(ヒアリング / Instagram)
・バイヤーの視点をヒアリング
HWITならではの、新しい美しさを提案する
課題抽出
1: 海外のウエディング業界において、知名度がない
2: デザイン性や華やかさが重視される業界
企画
・HWITならではの、新しい美しさを提案する

完成

一瞬の儚さを切り取った映像を作ることでブランドのコンセプトは伝わる
上記のようなキャッチコピーをもとに企画コンテを作り、「いつしかなくなってしまう一瞬のような儚さを切り取った映像を作ることができれば、ブランドのコンセプトが伝わるんじゃないか」というお話をして、ドレスに使用されている日本の伝統工芸の美しい一瞬一瞬や、日常の中の一瞬、もう戻ってこない時間などを大切に切り取ったコンセプチュアルな映像に仕上げていきました。

つくばみらい市/シティープロモーション

「自慢できる街になる」というコンセプトを最終的なゴールとして設定し、企画を始めた
ふたつめの事例は、つくばみらい市の移住・定住を目的としたシティプロモーション映像です。つくばみらい市は、茨城県南部に位置する場所で、2006年にふたつの町が合併してできた新しい街であり、まだあまり歴史がない状態でした。人口は約5万人ほどで、つくばエクスプレスで秋葉原から大体40分程度で着くという好立地な場所にあるため、東京のベッドタウンとして新しい住宅街が開発されるなど、人口が増えている街でもあります。
最初にお話をいただいたときは、「新しい街だからこそ、何を魅力として押し出していけばいいかわからない」「手前には東京にすぐ行ける街がたくさんあり、それらとの差別化ができない」という課題を抱えていました。
まずは、移住・定住ということもあり、人口の推移や年齢別の構成比、転入出の人口、 自然増減、社会増減といった基礎情報から、観光地、その地で有名なものなど、つくばみらい市がどんな街かをリサーチするフェーズ、つくばみらい市で暮らす市役所の方々や市民へヒアリングし、どんな街なのかを肌で感じるフェーズがありました。
すると、市役所職員や市民も皆口を揃えて「何もない街だよ」といった発言が多いことが調べていく中でわかりました。では、そんな街を変えるためにはどうすればいいのか。「移住・定住してほしい」という目的では広すぎることもあり、「どんな街にしたいのか」という部分から考え、『自慢できる街になる「100年間、愛される地元をつくろう。」』というコンセプトを最終的なゴールとして設定するところから本企画が始まりました。
クライアント
茨城県つくばみらい市

依頼内容
移住・定住を目的としたプロモーションの依頼
調査
・つくばみらい市ってどんな街?(HP/ヒアリング)
口を揃えて「何もない街」という人々
→ 自慢できる街になる「100年間、愛される地元をつくろう。」
課題抽出
・市役所職員に自信がない
・市民が「つくばみらい市だからこその魅力」を感じられていない
・市外へ「つくばみらい市の魅力」を伝えられていない
本質的な課題
ブランド化できるような魅力がない
企画
1年目の取り組み
市役所職員に自信をもってもらうインナーブランディング
市民100人の写真を撮影しキャッチコピーとともに市内に掲出。

2年目の取り組み
市民にこの街の魅力を問い、気づいてもらう施策
つくばみらい市の魅力を浮き彫りにし、近隣都市との差別化を図るためのプロモーション映像を制作。

3年目の取り組み
市外の人に、興味を持ってもらう施策
メッセージを歌に乗せ、200人で大合唱する映像。都心の人に興味を持ってもらい、移住の選択肢となるようなプロモーション。

4年目の取り組み
子どもが主役 思い出をつくるイベントを開催
本質的な課題である「ブランド化できる魅力がない」という課題をクリアすべく、新たな企画を立案。最も若く未来のある子どもたちが街を好きになってくれるよう、子どもたちを主役とした独自の魅力を持つアートイベントを開催。


3年以上かけて大きな街の意識を変え同じ方向を向いてもらうための企画を提案
まずは、「何もない街」と言ってしまう市役所や市民の方々の意識を変えていくことが必要だと考えました。また、市外へつくばみらい市の魅力を伝えられていないという課題に加え、ブランド化できるような魅力がまだないという本質的な課題も抱えていました。
これらの課題をどう解決するかという点において、5万人もいる大きな街の皆の意識を一気に変え、同じ方向を見てもらうことは難しいため、3年間以上かけて進めていく企画を提案しました。
まず1年目は、市役所職員に自信を持ってもらうこと、市内の人たちに所属意識を持ってもらうことを目的に、市民100人の写真を撮影し、「I LIVE IN TSUKUBAMIRAI.」のキャッチコピーとともに市内に掲出するという動きをとりました。そうすることで、つくばみらい市民の所属意識を高めることができたのはもちろん、市役所の方々をモチベートするような企画にもなりました。
2年目は、つくばみらい市の魅力を市民の方々から聞くことで、自身でも市の魅力に気づいてもらいそれを浮き彫りにできたらいいなと考え、インタビュー映像を作りました。その中で、改めて「どんなところがつくばみらい市の魅力なのか」を言葉にして話してもらい、よりこの街に対しての愛着を醸成させることで近隣都市への流出を防ぐといった、定住のためのプロモーション映像に仕上げました。
そして3年目は、市外の人につくばみらい市を知ってもらうための取り組みを行いました。「つくばみらい市に住むことは、自分らしく生きる未来への選択肢なんだ」というメッセージとともに、ROTH BART BARONというバンドさんに楽曲を作ってもらい、それを市民200人と一緒に大合唱するという映像を作りました。
実際に3年が経過した上でどうだったのかというと、ブランド化できるような魅力がないという本質的な課題が解決されていないがために、最初に掲げた『自慢できる街になる「100年間、愛される地元をつくろう。」』というコンセプトはまだまだクリアできていないと感じています。ただ、新しい魅力を作っていける実感もこの3年間で大きく得ることができたため、4年目以降もプロジェクトは継続し、現在は魅力自体を作っていくフェーズとして動いています。

このプロジェクトは書籍『Roots the hood 地域を動かすアイデアとクリエイティブ』にて、より詳しく解説されているのでチェックしてみよう。書籍情報:https://www.genkosha.co.jp/book/b10094976.html

ウルフルズ/「ウル盤ザ・ムービー」

クライアント
ウルフルズ

依頼内容
CDの発売を盛り上げたい!

曲をただ聴かせるような映像ではなくもうひとつ面白さを足した映像を作ってほしい
3つめの事例は、ウルフルズが結成30周年というタイミングでリリースした『ウル盤』『フル盤』『ズ盤』といったセルフカバーアルバムのプロモーション映像についてです。
まず最初に、「ウル盤がウルフルズの30周年企画の皮切りになるので、映像で少しでも盛り上げたい」というお話をいただき、最終的に全10話の映像を制作しました。
僕に託された課題は3つあり、ひとつめは「ターゲットを拡げてほしい」という部分。ウルフルズと言えば、年配世代の方々はよく知っているけれど、デジタルネイティブの新しい世代にとっては、「曲自体は聞いたことがあるけれど、全盛期はほとんど知らない」といった印象でした。そういった中、新たに自分たちでセルフカバーした30曲をどれだけ魅力に感じてもらえるかと考えたとき、「曲をただ聴かせるだけでなく、もうひとつ面白さを足してほしい」といった要望がクライアントからありました。
ふたつめは、ウル盤のコンセプトである「ウルっとする」を認知させたいという要望で、どのように全10話の構成でウルっとさせればいいかを考えながら制作しました。
3つめは、「ウルフルズらしく、楽しいものを作ってほしい」というオーダーだったんですが、実はこれがめちゃくちゃ難しくて。というのも、ウルフルズ自体が関西の方々なので笑いに対してすごく想いが強いんですね。だから、クライアントであるレーベルの方々からも「ウルフルズも、視聴者のみなさんも『面白い!』と思える企画をつくってください!」と言われてしまい、それがクライアントが最も求めているところであり、僕が最も苦労したところでしたね。ご本人たちの話も聞きながら、どうやったら面白くなるかを試行錯誤しながら作っていきました。
そういった課題がある中、「楽曲のことを知らない人が見ても、ついウルっとして笑ってしまうような、10話のドラマを作りましょう」というところから企画の提案をさせていただきました。加えて、ご本人たちの稼働となるとメイクや衣装などにも予算がかかり、スケジュールもハマらないなどいろいろな問題があったため、「だったら、いっそ声だけにしよう」というアイデアに辿り着いて、本作のようなプロモーション映像に仕上がったというのが完成に至るまでの経緯となります。
企画
楽曲のことを知らない人が見ても、ついウルっとして、笑えてしまう、10話のドラマをつくる
企画に託されたこと
① ターゲットを拡げる
② 「ウルっとする」というコンセプトを認知させる
③ ウルフルズらしく、楽しいものをつくる
「声だけならいける!」
完成
登場人物の声がひょんなことからメンバーの声になってしまう。


住友商事/採用ブランディングプロジェクト

クライアント
住友商事株式会社
依頼内容
社員をブランディングし、採用力を強化したい。
抱えている課題を解決できれば目標とする採用力の強化にも繋がると考えた
最後の事例は、住友商事さんの採用ブランディングプロジェクトについてです。今回僕らにお話をいただいたのは、会社自体の広報的なブランディングではなく、「社員をブランディングして、採用力を強化したい」という人事部からのご依頼でした。
調査をしていく中で住友商事さんが抱えていた課題を挙げさせていただくと、まずひとつめは、住友商事社員の独自性が否定的に捉えられているという点。どういうことかというと、誠実で真面目な会社だからこそ、新しく何かをやろうとする際、少しでもリスクがあればストップしてしまうところがあり、そういった部分が会社の文化として根付いていたり、社員ひとりひとりの姿勢としてあると。そこがネガティブに捉えられてしまっているというところが課題としてありました。
ふたつめは、競合が増え、積極性を持った学生の取り合いが加熱している点。昔は総合商社に就職すれば定年まで安定という時代でしたが、現代では20代のうちから年収1000万〜2000万と稼げるような会社もあり、選択肢が増えていることで競合優位性が若干不透明になっていたところが課題としてありました。
3つめは、入社後の前向きな未来が想像できないといった点。「総合商社に入ったら、実際にどんなことをやるんだろう」という部分が外からだとなかなか見えてこなかったり、挑戦心の強い学生は他のところへ行ってしまうといったところが課題としてありました。つまり、それらの課題を解決できさえすれば、目標としている採用力の強化ができるのではと考えました。
まず、ひとつめの独自性といった部分に関しては、全く新しく作り変えてプロモーションするのではなく、創立100年を超える総合商社である住友商事さんだからこそ、元々ある真の価値を再定義する必要があると考えました。
ふたつめの競合優位性については、競合が増えている中、「住友商事がいいと思う社員像とはどんなものなのかを改めて明確に定義しましょう」という提案をしました。
3つめの前向きな未来については、「学生さんに自分ごと化させましょう」という提案をしました。ターゲット側がどんなことを考えているのか、というターゲットインサイトを想像する時間は企画の中で最も重要で、そこから企画の切り口や糸口が見えてくるケースも多いです。例えば、20代男性がターゲットなのであれば、その男性がどんなことを考えていて、クライアントにどのようなイメージを抱いているか、競合に対してどういうイメージを持っているかなどの想像を膨らませる必要があるんですよね。
そういった部分を踏まえて企画提案を行なった結果、「100年を拓く、挑戦を。」という大きなコンセプトに辿り着きました。そのコンセプトをもとに制作した映像も採用サイトから視聴ができますので、ぜひご覧いただければと思います。
課題抽出
1: 住友商事社員の独自性が否定的に捉えられている
2: 競合が増え、積極性を持った学生の取り合いが加熱している
3: 入社後の前向きな未来が想像できない
解決策
1: 真の価値を再定義する
2: 住友商事らしさ(競合優位性)を明確にする
3: 学生に自分ごと化させる
企画
100年を拓く、挑戦を。
