「日常をシネマティックに」というコンセプトを掲げる「こねこフィルム」。映画やドラマの現場でキャリアを築いてきたクリエイターたちが映画本来の魅力を込めたショートドラマを発信しており、始動から1年半ほどでSNS総フォロワー数300万を突破した。映画にこだわり続ける彼らの独創的な制作スタイルを追った。
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講師 こねこフィルム
映画やドラマの現場で経験を積んだ精鋭クリエイターたちが集まり、新たな価値を創造するプロフェッショナル集団。2023年6月からTikTokを中心としたSNSに毎週作品を投稿し、開設わずか1年でSNS総フォロワー数100万人突破。ユーモアと皮肉を兼ね備えた中毒性のある笑いと、現実かと錯覚させるような作風で、エッジの効いた世界観を創り上げている。また企画の立案からSNSアカウントのトータルプロデュースまでを手掛け、唯一無二のプロモーション戦略も展開している。
映画が斜陽産業ではないことを立証する
映画人として、より面白い作品を作り、より多くの人に観てもらうために
こねこフィルムの中核を成すのは、映画監督として活動してきた三野龍一氏と、兄の龍一氏に誘われ映画脚本を手がけ始める傍ら、Webマーケティング・広告業界で仕事をしてきた弟・三野和比古氏の兄弟である。兄弟映画制作チーム「MINO Bros.」として、龍一氏の監督第2作『鬼が笑う』が国内外で高い評価を得るなど、映画人としての確かな実績を持っており、龍一氏は「映画へのこだわり、プライドなどが相まって縦型動画には興味がなかった」と語る。しかし、3作目のキャスティングで、自身が良いと思った役者ではなく、より知名度がある、マーケティング的な言い方をすれば多くの数字を持っている別の役者を起用することを宣伝・プロモーションの観点から求められ、それに従わざるを得なかったという苦い経験をしたという。
龍一 映画制作もビジネスの面があるので、様々な数字を求められます。それならば、自分が好きで、リスペクトしている役者さんの数字を作っていこうと、逆転の発想にたどり着きました。Webマーケティング・広告業界で仕事をしていた和比古からこれから縦型ショート動画市場が盛り上がると聞き、1年後の始動を目標に、監督業と並行してこねこフィルムの準備を進めることにしました。
和比古 僕はWEB広告の業界にいたので、日本の映画業界を客観的にも見ていました。語弊を承知で言うと、せっかく良い映画を作っても興行やプロモーション面で、インターネットが未成熟だった時代の古いやり方を今でも続けているように感じていました。また映画は衰退産業と言われがちですが、WEB動画の市場が急成長していて、ドラマコンテンツの需要も増えていることも知っていました。そこで根性論ではなく、今の時代に通用するやり方で、自分たちが面白いと思う映画制作を続けていこうと考えました。
現在、縦型動画で多く見られる短いカットを畳みかけるのではなく、観客を引き込める間を持たせる。煌びやかで明るいルックではなく、深みのあるシネマルックをといった映画の魅力を込めたショートドラマ制作を縦型動画のフォーマットで実践していく。そして、自分たちの好みを押しつけるのではなく、WEBマーケティングの知見を活かしたファンとのコミュニケーションを重視したアカウントの運営と作品づくりという、映画制作者たちの新たな挑戦が始まった。
三野龍一

映画監督、こねこフィルムディレクター兼代表
三野和比古

脚本家、こねこフィルムプロデューサー兼代表

これまでの足跡
2023年6月9日、TikTokへのショートドラマの投稿から活動を始めた、こねこフィルム。約1年9月にわたるこれまでの活動から、主立ったトピックを時系列で紹介しよう。
2023年6月9日
TikTokチャンネル始動
当初は、毎週金曜21時に投稿。同年6月26日にはnoteを開設、実施の背景や今後の展望などが語られた。

2023年7月
初投稿から6週間で累計1,000万回再生を達成
初投稿から7週間でフォロワー1万人を突破。牽引したのはvol.11『奪う男(電車座席編)』で800万回再生を超えた。

2023年9月
作品『痴漢冤罪』に対する賛否両論
本作が9月28日X上に非公式に転載されたことから論争が起きたことを受け、noteに製作者としての見解を発表した。

2024年6月9日
こねこフィルム1周年
SNS総フォロワー100万人、総再生回数11億回を突破。公式サイトをオープンし、公式オリジナルグッズの販売を開始。

2024年7月
Bilibiliチャンネルを開設
中国語字幕版としてBilibili、Douyin、RED、微信視頻に公式アカウントを開設。Billibilliは登録者数10万突破。

2025年2月
SNS総フォロワー数300万人を突破
2月14日時点で、TikTok60万人、Instagram52万人、YouTube43万人 、X(旧Twitter)14万人を突破している。

役者ファーストの徹底
役者が自由に活動できる体制を構築
こねこフィルムは当初、運営メンバー4名がそれぞれに経営する3社共同で事業が行われていた。順調にフォロワー数、再生回数が伸びていくにつれて、企業からの依頼やタイアップ案件が増えてきたため、2024年1月に合同会社こねこフィルムが設立された。
和比古 勘違いされがちですが、こねこフィルムは役者やスタッフが専属の劇団ではありません。中心メンバーはいますが、レギュラーで出演していただいている役者さんにもその都度、出演交渉を行なっています。だから外部の役者さんにオファーすることもあります。
龍一 こねこフィルムでは、自分のことを監督ではなく、名前で呼んでほしいと全員に伝えています。半田さんや赤間さんをはじめ、年上の役者さんもいらっしゃいますが、お互いにリスペクトしながらも、気軽に何でも話し合える関係を大切にしています。立場に囚われずに、作品に携わるひとりひとりが「どうやったら面白くなるか?」を考え、自由に意見を交わしながら制作しています。そして作る上では、「そのキャラクターを、演じている役者さんを愛してもらうにはどうすればいいか?」という目線が一番多いと思います。『年齢確認』を公開して以降は、その目線をより強く持つようになりました。
後述するが、こねこフィルムでは、あえてシナリオを作らない。縦型ショートという形態で良い作品に仕上げるには、役者自身の技量と魅力をダイレクトに引き出すのがベストという考えに基づいている。言い方を変えれば、それだけ役者の責任は重大なため、運営と制作の両面において役者ファーストが徹底されている。事実、役者のギャランティも縦型ショートの相場よりも高く設定しているそうだ。


こねこフィルム体制図
三野兄弟をはじめ中心的なメンバーはいるが、劇団のような専属スタッフはいない。俳優部は、こねこフィルムではなく各事務所に所属しており、キャストも作品ごとに決めている(第2回オーディションを実施中)。

ワークフロー
基本的な制作の流れ。立場や役割に囚われることなく、メンバーひとりひとりが企画を出し、楽しみながらディスカッションを重ねながら進めていくのが特徴。
