ビデオサロンに掲載された岡野肇さんの連載の再掲載です。今回はデータベースのポイントについてお話します。


1位は山下達郎の「クリスマス・イブ」
良いデータベースには二つの条件があると考えます。
ひとつはレコードの絶対量。
少ないと検索やソートの楽しみを味わえません。ある程度の数が必要です。
そして二つ目が、そのデータベースのネタの「つぼ」を押さえたフィールドが存在しているか。私のデータベースの中に「歌番組編」の他に「オリコン編」と「スタートレック編」があります。これらを題材にして「データベースのつぼ」を見ていきましょう。
「オリコン編」はクラブハウス社発行の「オリコンNO.1HITS500」上下巻を参考にデータを打ち込み、私がいろいろなフィールドを追加したものです。発売日や歌手名・曲名・1位獲得日等はそのままフィールドとして打ち込みました。それだけでも充分楽しめるのですが、私はひとつフィールドを追加しました。それは「発売→1位」です。これは本にはない項目で「1位獲得日-発売日」という計算式を入れています。つまり発売日と1位獲得日が入力されれば自動的に計算されます。このフィールドを数字の多い順でソートしてみましょう。
1位は山下達郎の「クリスマス・イブ」。なんと2203日かかっています。以下「星影のワルツ」802日、「ラブユー東京」643日と続きます。このことにひとつの業界の縮図が見えないでしょうか。「クリスマス・イブ」はJRの有名なCMによって復活したわけです。以前からCMタイアップものはあったのですがこの曲が1位をとる1989年あたりからはかなり顕著になっていきます。TV主題歌としてのタイアップと並んで当時のCDの売り方の基本となっていきます。次の「星影のワルツ」。これはご存知のように当時流行りだした有線放送や地道な手売りで勝ち取った1位でしょう。
ここで逆に数字の少ない順でソートしてみます。1位「ホワイトラビットからのメッセージ/渡辺満里奈」4日。以下「ハッとして!Good/田原俊彦」8日。「メロディー/高井麻巳子」8日と続きます。これらは皆アイドルものでかつ、ベストテン形式などの歌番組全盛の時代です。
新譜に対しての情報過多の時代で「楽曲よりも今売れている歌手でどれだけ短期間で売れるか」というコンセプトがにおってきます。フィールドひとつ追加するだけで、いろいろなことが見えてくるのです。
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▲オリコン編。1位獲得までに日数がかかった順。
次に「スタートレック編」。
二つのフィールドに注目してみます。ひとつめは放送順です。パイロット版を入れて全80話のシリーズですが、日本での第1話はアメリカ放送時には第3話となっています。
次に原題と、当時の局がつけた邦題、そして私が翻訳サイト等で訳した訳邦題のフィールドです。例えば原題「The Enemy Within」は「二人のカーク」という邦題がつきました。カーク船長の人気を意識した良い題ですが原題の訳「自分の内なる敵」は現代っぽいですね。このように当時(昭和40年代)の売るための手段である「邦題」の考え方が見えてきますし、色々事情はあるでしょうが、放送順がかわっても楽しめる1話完結としてのコンテンツの確かさもすごいと思います。「データベースのつぼ」少しはおわかりいただきましたか?
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▲スタートレック編で、原題とその翻訳と邦題の3つが比較できるもの。
【2008年12月の後日談】
現在のヒットチャートはさらに短期間で変わっていくようです。
タイアップもさらに進化し「羞恥心」のように番組そのものから
楽曲が出て行っています。それに購買層もかなり限られ10代、20
代のお得意さんだけという状況です。(ダウンロード販売も驚異的に
増えています)
それと海外ドラマがCS等の影響で昭和40年代並に見られています。
ところがほとんどは邦題なしの原題表記。その方が現代っぽいの
ですが、少し日本的にひねった「キャッチコピー」のような邦題も
懐かしく感じます。さしずめ「LOST」なら「4次元島の恐怖の生存者達」
とでもなるのでしょうか?

岡野 肇

PROFILE
1960年生まれのかに座のB型。
18歳と10カ月で高卒後広島から上京。
伝説の番組「ザ・ベストテン」のドライアイス担当を皮切りに、
美術・録音・照明・VE・撮影・制作・演出と各分野をめまぐるしく駆けめぐり
29歳と11カ月で株式会社まじかるふぇいす(現有限会社)を設立。
現在は特に「音楽とビデオの融合」を目指し、日夜企画書と格闘中の
映像・音楽プロデューサー。趣味はナレーションとデータベース作り。