オリンパスPEN E-P2では、E-P1には、搭載されなかった動画撮影時のマニュアル操作が追加された。フレーム内の動体を追尾して、フォーカスを合わせる「追尾AF」も追加。新たにアートフィルターも2つ加わった。
ここでは、動画カメラとしてE-P2を使ってみた。
◎筆者:斎賀和彦
マイクロ一眼
オリンパス PEN E-P2
オープン価格(標準レンズキット11万5千円前後/パンケーキレンズキット12万5千円前後)
test point
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●動画撮影時のマニュアルの操作性はどうか?
●追尾AFの精度はどうか?
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夏に発売されたPEN E-P1は往年のオリンパスペンを彷彿されるデザインと優れた画質で話題となった。E-P2はその上位モデルとして発売された新機種だ(E-P2は併売される)。動画撮影機能を中心に本機の特徴を見ていこう。
E-P1/2、両者に共通するのはコンデジよりは大柄だが一眼レフよりコンパクトなボディに3/4型の大型イメージャーを搭載したレンズ交換式のカメラだということだ。マイクロフォーサーズ規格のイメージャーサイズはフルサイズに較べると小さいが、それでも一般的な家庭用ビデオカメラの数倍はある。HD動画撮影時にこのアドバンテージは大きく、特に望遠域ではバックのぼけ味が美しい動画を撮ることができる。
また、標準ズームレンズのED 14-42mmを装着した場合、35ミリ換算で28-84mm相当と広角に強いのも大きな魅力だ。
写真愛好家向けにこだわった機能が多い本機だが、動画撮影時においてもその多くが生きる。メインダイヤルとサブダイヤルを使った絞りや設定の変更はスムーズでスピーディ。
コンデジより大きいボディが逆にボタン配置に余裕を生むのか、オプションの外付けEVFに眼を押しつけたままでも各種操作に困ることがなかった。同様にフォーカスリングを使ったマニュアルフォーカスの感触、操作感はコンデジとは別格で一眼レフに迫るもの。マイクロフォーサーズは被写界深度が浅い分、ピントにシビアなのでマニュアルフォーカスの使い心地は重要なポイントになると思う。
■「追尾AF」の効果
アクセサリーポートの搭載で外付けEVFやマイクアダプターが使えるようになった他は意外なほど機能に違いがないE-P1と2だが、新機能のひとつ「動体追尾AF」は動画ユーザーにも興味深い機能だ。特定の被写体を追いかけるというと、 ビデオカメラで精度を競う顔認識を想起するが、E-P2が特徴的なのは顔ではなく、ロックしたターゲットを追尾すること。人以外にも、街角の看板や花を追い続けることが出来る。実際に使ってみると画面内のAFポイントが被写体を追って移動するのは面白い。
奥行き方向の早い動きに対する追随性や画面外にターゲットが外れてしまうとリカバリーが難しい点など、完璧とは言い難いが、歩きながら手持ち撮影するときなどは思った以上に有効。
E-P2は三脚に据えて撮影するよりも、もっと気軽にスナップ感覚で使うのが似合うと思うだけに優れた新機能と言えよう。
ただし、レンズ焦点距離やブレ方向別に細かなモードを持つE-P2のボディ内手振れ補正機能だが、動画撮影時には電子式の拡大&切り出しによる手振れ補正となるため、せっかくの高画質なレンズやイメージャーの能力を活かしきれていないところは残念だ。
高画質が当たり前になったからか、逆に粒子の粗い写真やトイカメラ風の写真など、独特のテイストを持った画調が人気だ。特に最近は後処理でそういう効果を付けるのではなく、撮影時にエフェクトをかけて撮る機能を各社が搭載するようになった。
E-P1からアートフィルターとして搭載されているが、E-P2では2種類のフィルターが追加された。
これらは動画撮影時にも適用可能なので、ムービーに気軽に独特なエフェクトを追加できるのが楽しい。例えば新フィルタのジオラマは周辺のピントをぼかしシフトレンズを使ったかのような映像を収録してくれる。 画像処理に時間がかかるためか、いったんコマ送りのように秒数フレーム記録、再生時に30fps表示を行う構造のため同録音声が無くなってしまうが、編集で付けるのは難しい凝ったエフェクトが簡単に使える。
■アートフィルター8種類を動画に使うとこうなる
コンデジの一回り大きなサイズで一眼レフ級の画質。写真そのものを楽しむ新しいデジカメのカテゴリーが本機を含め各社からリリースされている。
たくさんの機材をもって本格的に撮影するのではなく、街歩きにカメラだけぶら下げて散歩し、気軽にシャッターを押す。 それでいてクオリティに妥協はしない。そんなスタイルを感じさせるE-P2は、ちょっと高い価格が許せれば、最高の散歩の共になるカメラだ。