本特集の冒頭ではスタンドに立てるタイプのスポットライトの仕組みと基本的な使い方をレクチャーしたい。ライトは倒れれば物が壊れ、怪我をする恐れもある。まずは安全に使えるようになることが第一だからだ。

構成●編集部・新宅 協力●Aputure・アガイ商事

 

VIDEO SALON 2021年3月より転載

 

 

映像制作の間口は確実に広がっている。低価格で高品質の素材を撮影できる映像機材が増え、編集ソフトに関するチュートリアルもインターネット上に溢れ、YouTubeをはじめとした公開するメディアも普及。初心者であっても個人で気軽に映像制作を行える状況になってきた。

その一方で、照明・ライティングに関しては、ビデオグラファーの間であってもそれほど定着していない印象だ。その理由として、「高価な機材が必要」「高度な知識を要求される」こと。特に低予算や少人数の撮影を余儀なくされる個人制作において、コスト的にも、手間的にも照明機材を導入するのはハードルが高かった。

しかしここ最近、安価で品質が高く、かつ操作が通常の照明機材に比べて容易な高輝度のスポットタイプのLEDライトが登場し、低予算の案件でも導入を検討できる状況となってきた。今回は照明機材を取り入れたい人のために、少人数の撮影でも導入できる照明機材の紹介や、基本的な操作の仕方などの注意点をAputure(アプチャー)の吉村ウォーリーさんにレクチャーしていただいた。

 

Aputureのレクチャームービーは必見!

Aputureのライトを使った現場の紹介なのだが、決して宣伝ということではなく、ライティングのテクニックの解説がメインで絶対に参考になるコンテンツ。4分という尺は最初は短く感じるが、WEBムービーとしてはちょうどいいかもしれない。次から次へと見て行けるからだ。

◉4 Minute Film SchoolLearn Cinematic Lighting
https://www.youtube.com/c/aputurephoto

 

 

一人撮影時の照明基本セット

ビデオグラファーがインタビュー撮影をするという設定。撮影は自分ひとりもしくは助手がひとり付くというパターンだろうか。これ以外にもカメラ、三脚、音声関係の機材があるので、電車で移動するとなるとライトは1灯ということになりそうだ。実際Aputure LS C120d IIはそういう用途にかなり使われているそうだ。LS C120d IIは灯体、電源が入る専用のバッグ、オプションのドームにも専用のバッグが付属する。

ライティング関係の機材としては、これに折りたたみのレフ板をひとつ加えたい。さらに小型のLEDライトをカメラバッグにいくつか入れて、押さえ(フィル)のライトやタッチライトとして使ってもいいだろう。

 

【照明設置時の注意点】

1.消費電力の確認
LEDライトなのでそれほどの電力は必要ないが、大光量タイプのライトを2、3灯使うとなると、消費電力の確認が必要になる。とくに個人宅や事務所などでは注意。

2.手袋を使用 
大規模な撮影現場で用いられるようなHMIやタングステンといった照明の場合は高温となるため、電球は基本的には触らず、手袋をしてからセッティングを行う。

3.点灯時の声がけ
突然大光量のライトを点灯すると、周囲のスタッフだけでなく、インタビューされる側も驚くので、「ライトつけま〜す」と一言があるといいだろう。

4.クールダウン
LEDライトはそれほど熱を持たないので、タングステンの頃のようにクールダウンの時間はそれほど要らなくなった。撤収が早くできるのはLEDのメリットだ。

 

 

Step1. Cスタンド(センチュリー)を立ててライトをセットする

スタジオにある照明用の三脚はCスタンド。現場ではセンチュリーと呼ばれているので、そちらの名称で馴染んでいる読者も多いと思うが、センチュリーとはライトスタンドメーカー・マシューズの登録商標なのだ。

通常のカメラ用三脚や小型のライトスタンドが傘を開くように設置するのに対して、Cスタンドは足を回転させて直立させるものが一般的。下図の写真のように、3本の足を等間隔になるように回転させて、一番上の足についているネジで固定する。一番上の足の向きに灯体が来るようにするともっとも倒れにくい。そして、Cスタンドの組み立てが終わったら、照明の本体、電源を装着という流れだ。

大規模な撮影現場で用いられるようなHMIやタングステンといった照明の場合は非常に高温となるため、電球は基本的には触らず、手袋をしてからセッティングを行う。特に高温となる照明機材の場合は、片付けの際にクールダウンの時間を作る必要があるので、注意が必要だ。

また照明機材は性質上、高い場所に設置することが多く、機材を倒してしまった場合、撮影素材や機材の損傷だけでなく、スタッフの怪我にもつながってしまう。Cスタンドを固定するためのサンドバッグの設置はもちろん、配線の整理や、ライトを高く上げる際は見張り番を置くなど、安全面には最大限配慮しておきたい。

1.足の位置を回転させる

2.ネジで固定する

3.ひっくり返して、組み立て終了

 

Cスタンドと照明の接点

スタンドとライトの灯体はダボ(中央の写真)を介して装着する。実はこの接合部分の規格が海外と日本で異なる。日本のライトスタンドはメスになってる(写真上)ので、ダボを利用して装着しなければならない。Aputureの代理店、アガイ商事ではこの変換のダボをつけて販売している。



 

コントロールボックス

光量などを調整するコントロールボックスは灯体とは別体になっており、電源はNEUTRIKのロック機構付きのケーブルで接続。照明をコントロールするDMX規格の5ピンの入出力端子もあるので、外部からの制御も可能。

 

コントロールボックスをスタンドにかける

コントロールボックスはこのようにスタンドにかける。ライトを高く掲げたとしてもON/OFF、コントロールはこの位置で可能。灯体とコントロールボックスが別体になっているメリット。

 

スタンドは上から延ばす

ライトスタンドは上から延ばしていくのが基本。高さの調整を下のほうで行うため。最終的なライトの微妙な高さは下のほうでできたほうが楽。

 

ウェイトの位置に注意

スタンドが倒れやすい方向は、ライトが向いている側。Cスタンドの一番上になる脚はライトが向いている側にして、そこにサンドバック(スタンドウェイト)などの錘をかける。最近では、現場で水を入れて使うタイプのウェイトもある。

 

【グリップアーム使用時の注意点】

型ライトやレフ板を設置する、Cスタンドのグリップアームは、ノブがスタンドの右側にあるようにすること。つまり力がかかった場合に締まっていく方向で使う。片付ける場合の持ち方は指を挟まないようにアームとスタンドを同時に持つように。


 

Vol.2へ続く

 

VIDEO SALON 2021年3月より転載