レポート●尾上泰夫(おのりん)


ATEM Mini Extreme ISO G2は、従来のATEM Mini Extreme ISOをベースに、放送局レベルの物理コントロールと最先端の接続性を追加し、スーパーソース合成が可能な究極のオールインワン・ライブプロダクションスイッチャーです。8系統のHDMI入力という余裕のある入力数に加え、10Gイーサネット、Thunderbolt接続、CFexpressスロットでのISO記録とNASとして録画中でもネットワークから再生可能、そしてプロ仕様のXLR入力と、デジタルオーディオのMADI入力を備え、ライブ配信の常識を塗り替えるパワーを秘めています。

主な特長と魅力について、5つのポイントで解説します。


1. 放送品質を追求した物理デザインの刷新

プロ仕様のボタンとフェーダー: 前面パネルのボタンがさわりごたえの良い放送業界で標準的な高品質ボタンに更新され、キャップを外してラベルを変更できるようになりました。また、待望の低プロファイル・トランジションフェーダー(Tバーのように操作できる)が新たに搭載され、より直感的なマニュアル操作が可能です。


進化した出力コントロール:HDMI出力が3系統に増設されました。前面パネルから2系統の出力を直接切り替えられるよう改善されており、マルチビュー、プログラム、新たにオーディオステータス表示など、現場に合わせた柔軟なモニタリング環境を構築できます。


2. オーディオ機能の劇的な進化

XLR/TRSコンボ入力の搭載:従来の3.5mmステレオミニジャックに代わり、2系統のフルサイズXLR/TRSコンボ入力が搭載されました。これにより、ファンタム電源が必要なコンデンサーマイクやプロ用機材を直接接続し、高品質な音声を確保できます。

MADIによる無限の拡張性MADI入力を備えており、ATEM Microphone Converterをデイジーチェーン接続することで、最大16チャンネルStereo(またはそれ以上)の音声をBNCケーブル1本で取り込むことが可能です。


ちなみに、BNKボタンを右に一度押した時に4番目の入力がMADIの1になることも覚えておくと便利だと思います。


Fairlightオーディオミキサー:内蔵のミキサーに加え、HDMI出力経由でフルスクリーンのオーディオ管理パネルを表示でき、ラウドネスの確認や高度なEQ・ダイナミクス調整が可能です。


3. 10GイーサネットとCFexpressによる超高速ワークフロー

高速メディアへの直接収録:背面にCFexpressカードスロットを搭載しており、USB-Cケーブルの脱落リスクを気にせず、高速メディアへISO(個別)収録が行えます。


スイッチャーがNASになる10Gイーサネットポートの搭載により、収録されたファイルにネットワーク上のコンピューターから超高速でアクセスできます。これにより、メディアを抜き差しすることなく、ネットワーク越しに直接編集やカラーグレーディングを開始できる「ネットワーク・レコーディング」ワークフローを実現します。


全入力を個別収録(ISO)することでマルチカメラのリプレイを行うことが可能になります。

録画中のISOファイルはDaVinciResolve上で同期したマルチカム表示が可能です。


4. Thunderbolt接続による新たな可能性

ケーブル1本で多機能接続:新たに搭載されたThunderboltポートは、コンピューターに対してイーサネット接続として機能するほか、デバイスの充電(トリクル充電)にも対応します。


ビデオ入出力の革新: 1本のThunderboltケーブルで、コンピューターからATEMへ「フィル&キー」を含む最大2系統のビデオ入力を送れるほか、ATEMからコンピューターへビデオを戻すことも可能です。これにより、外付けのキャプチャーデバイスなしで、DaVinci Resolveを使用した高度なテロップ送出やリプレイシステムを構築できます。ここでは10番にThunderboltを割り当ててみました。


5. 究極のリプレイ・システム

DaVinci Resolve Replayとの連携: 前面パネルには専用のリプレイコントロールボタン(CUE、RUN、DUMP)が配置されました。DaVinci Resolveと組み合わせることで、10Gイーサネット経由の高速ファイルアクセスにより、スポーツ中継のようなスピード感が求められる現場で威力を発揮します。

リプレイの操作(物理ボタンの使用)
設定完了後は、ATEM Mini Extreme ISO G2本体上部の物理ボタンで操作可能です。
CUE: 再生ヘッドをタイムラインの先頭、またはDaVinci Resolveで設定したイン点に移動させ、リプレイの準備をします。
RUN: リプレイを開始し、映像をオンエア(送出)します。
DUMP: リプレイを停止します。自動スティンガーが有効な場合、停止と同時にスティンガーが再生されます。

    ◦ 即座に停止したい場合は、DUMPボタンを2度押しします。

このThunderbolt接続によるワークフローは、DaVinci Resolveがスイッチャーのライブビデオ入力を表示し、POI(関心ポイント)ボタンを押すことで全8入力の個別収録ファイルからカメラを選択して即座にリプレイを実行できる非常に強力なシステムです。


結論

ATEM Mini Extreme ISO G2は、単なるスイッチャーの枠を超え、強力な配信エンジン、共有ネットワークストレージ、リプレイシステムを1台に統合した制作ハブです。価格は1995ドル(日本国内では税込332,800円)と従来モデルより上昇しましたが、拡張されたIOと革新的なワークフローを考えれば、プロフェッショナルにとって極めて投資価値の高い製品と言えます。

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著者プロフィール 尾上泰夫(おのりん)

テクニカルエバンジェリスト、映像システムのテクニカルディレクター。TriCasterオペレーター、ATEM認定トレーナー。放送、Web配信、企業VP、ライブイベントなど、幅広い分野で映像システムの設計・運用に携わる。複雑な技術をわかりやすく伝えることをモットーに、トレーニングや執筆活動も行っている。

システムの設計、スタジオ構築、配信技術のレクチャー、講演、トレーニング、動画の学校など、お仕事の依頼やご相談は以下へ