REPORT◉一柳

ATVは、ビデオサロンをはじめ映像機器関係者であれば、ローランドから派生した会社でスイッチャーやコンバーターというイメージが強いが、楽器界隈では電子ドラムのaDrumsが大好評。他社の電子ドラムにくらべて、リアルな音色を実現でき、このコロナ禍にあってドラマーで自宅からセッションに参加したり、配信することが増えた関係で、注目が集まっているという。

実はATVでは毎月のように、aDrumsを愛用しているaDrumsアーティストを招いて、ライブ配信を行なっているという。その配信場所は原宿のショールーム。古着屋が並ぶ原宿通りのビルの奥。音楽関係のウェブメディアの編集部のフロアに間借りするかたちで、ひっそりとある。映像機器のデモもここで行なっているという(常時開いているわけではないので、デモを希望する場合は、ATVのサイトから予約が必要)

毎月の配信を担当するのは、ATVの渋谷社長(写真)。もう一人のスタッフと基本的に二人で行なっている。今回は、このショールームその機材でA-PRO-1の切り出し(ROI)機能を見せていただいた。

配信ブースにはA-PRO-1が2台スタックされていた。こちらは裏面。HDMI2.0が2系統入り、どちらも4K/60pで入力できる。カメラはソニーのαとRX0。両方ともHDMIから4Kで出力できるもの。

こちらが本体正面。ボタン3つにスライドバーが1つというシンプルなもの。

実はA-PRO-1は4K入力が可能なスイッチャーとして登場したが、昨今のコロナ禍により、イベント会場での4Kスイッチングの需要がなくなってしまった。このパフォーマンスの高い機材をどう活用したらいいかを検討した結果、4K入力された信号を切り出して表示する機能を入れれば、1台もしくは2台の4Kカメラをより多くのカメラがあるかのように運用できるのではないかというところに行き着いた。

Ver.2.0で、その切り出し機能を入れたところ、ライブ配信の現場から問い合わせが来るようになったという。たしかにライブ配信ではカメラの台数がどうしても必要になる。現在のカメラはほとんど4Kなので、一台のカメラを引きと寄り、もしくは切り出し箇所を変えて登録することで、いくつもカメラがあるように見せることができる。また、登録した箇所を移動させれば、あたかもカメラマンがパンしているように見え、表現が多彩になる。

4KなどオーバーHDの解像度に対応したスイッチャーには、ROI機能というものが採用されていることが多い。ROIとは、業界でもあまり一般的な用語ではないが、Region of Interestの略で、画像のなかで操作の対象となる領域のこと。スイッチャーとしては、「切り出し」とか、「デジタルズーム」と考えればわかりやすいだろう。

ドットバイドットの解像度で考えると、入力が4K映像で出力がHDとすれば、4倍のズームが可能ということになるが、A-PRO-1では、5倍までのズームが可能だという。

A-PRO-1の各種設定は、アプリで行う。以下はアプリ画面。

アプリはあくまで設定なので、ズームなどリアルタイムな操作が必要なところでは、何かしらの操作パネルがあるといい。そこでオススメというか、実はどうしても必要になってくるのが、Stream Deckだ。

A-PRO-1のプラグインが用意されていて、それをダウンロードすると、デフォルトのキーが割り当てられた設定にできる。下は32ボタンのSTREAM DECK XLをA-PRO-1仕様にしたもの。

STREAM DECKの操作パネル。A-PRO-1のプラグインをいれてデフォルトに状態にしてから、さらにカスタムしていくことができる。

STREAM DECKのボタンのカスタマイズはかなり自由度があり、文字だけでなく、画像も貼り付けられる。であれば、矢印や人物のマークなど、ぱっと見てわかりやすいものをボタン化することもできる。現在こういったことも検討中だという。

デジタルズームといっても、リニアな動きではなく、じわっと動き出して、じわっと止まるような動きを実現している。イーズイン・イーズアウトのような、まるでよくできたビデオカメラのズームレンズのような動きが可能。そこは動画で見てほしい。

たとえばスプリット機能を利用して、カメラとしては、4Kカメラで引きを撮影しておき、二人のスプリット画面を事前に切り出して合成しておくことで、カメラ1台であたかも3カメあるかのようなスイッチングをすることができる。

【関連情報】

ATVのWEBページ http://www.atvcorporation.com/

ATVのA-PRO-1の情報はこちら