1月号の別冊付録でATVのA-PRO-1を使った4K の2カメスイッチングの現場をレポートしましたが、そこで使われていたGH4に装着されていたB4マウントのENGレンズに興味を持った人は多いのではないでしょうか? ↓これです。

しかもそのズームレンズ、テスターのMulticamlaboratory渡邊さんがヤフオクでたった3万円で入手した物で、しかもキヤノンJ8X6Bというかつての放送用ショートズームレンズの名機。HD時代になっても使われていたというのだから。

渡邊さんが撮った映像は4Kらしい解像度があるものだったのですが、GHにB4マウントズームレンズをつけたけど、なんだかポヤポヤという画もこれまで見てきました。同じB4マウントズームといっても、業務用カメラのおまけでついている15万円クラスのものから、数百万円の放送用レンズまでグレードはピンキリですし、程度も様々です。そもそもB4マウントズームに興味があるといっても、新品で買うつもりではありません。本当に良いもので、程度の良いものを、安く手にいれるにはどうしたらいいのでしょうか。

放送用のB4マウントズームレンズがゴロゴロあるのは、放送用中古機材を扱っているtrust(トラスト)さんだというので、渡邊さんと一緒にB4マウントズームレンズ中古事情について聞きに行きました

答えていただいたのは、トラスト株式会社の岩田大さんと中野功一さん。名前を出すのはいいけど、いろんなところに出没するので顔出しはNGということで写真はありません。

港区の芝浦にあるトラストさんにお邪魔すると、かつてはショールームだったところにも機材がぎっしりつまっていて、さらにここ以外にも倉庫があるそうで、とにかく放送機材の多さは半端ではありません。

トラストさんには放送局から出される古い機材が集まってくるそうですが、今地方局は局舎を移転しているまっ最中のところが多く、しかもこれからは4K/8Kに対応していなければならないということで、過去の機材を処分しているのだそうです。

東京には局だけでなく技術会社も多いですから、恒常的に機材は回転しているそうで、東京では2000年前後のHDの第一世代やVTRなどがよく出てくるとのこと。アマチュアや業務レベルではほとんどテープを使うことはなくなりましたが、放送ではHDCAMのワークフローがまだ残っており、HDCAMの機材も売れるし、なんと今リニア編集システムを増設するところもあるそうです。

HDVカメラやテープを見かけることはほとんどなくなりましたが、放送では依然としてバラエティのカメラとして使われているようで、HDVのデッキは出ればすぐに売れる人気商品とのこと。

制作費が下がってきて機材にコストをかけられないということもありますが、作る側も最新でなければならないという考えはなく、割り切って使っているようです。

さて、肝心のレンズですが、ある局から一気に20本くらい出てくることもあるそうで、特にキー局のものはきちんとメンテナンスされ、状態が良いものが多いとのこと。逆に地方局からヤフオクに流れたものなど、状態が悪いものがあるので要注意だそうです。

トラストさんでは、1本1本実際に使って検証して、実用になるものを、現在の価値に合わせて値付けをしているとのこと。つまりかつての価格(数百万)は考慮されず、今の需要に合わせて価格が決められているわけです。値付けで「使える度合い」を表現している、と言います。ですから、かつて2000年代にはB4マウントのシネマズームレンズというのが1000万円くらいであったのですが、シネマ系カメラは一気にスーパー35にシフトしたために、2/3インチのB4マウントのシネマズームを使う人はいなくなってしまったので、なんと10万円台になっています。

物としては迫力十分で魅力があるのですが、使いようがないということですね。

で、トラストさんのサイトを見てみると、数万円から数十万円まで価格差があります。

 

まず、B4ズームレンズには、放送用と業務用がありますが、造りそのものが違うそうです。さらにSD時代のものと、HD時代になってからのHD対応レンズがありますが、放送用のSDレンズで、業務用HDよりも画質がいいことはザラにあるそうで、SDとHDはガラスは同じで、コーティングの差であることが多いそうです。

渡邊さんが入手したキヤノンのJ8X6Bは、1989年から1993年まで生産されたSD時代のショートズームで名機としてその後も使い続けられ、HDカメラで使っているところもあるそうです。トラストさんでももし入荷された3万円くらいで出すそうです。さらに狙い目はB3マウントのJ8X6B。B3とは池上の放送用カメラのマウントのことで、B3マウントなら1.5万円で出すかもしれないそうです。B3からMFTへの変換アダプターがあれば使えるわけで、もしそんな出物があったらお買い得です。そもそもB3マウントレンズは放送用レンズしかないので、狙うにはいいかもしれません。

なかなか程度の良いJ8X6Bは出てきませんので、それ以外でGHで使えるB4マウントズームを紹介してもらいました。まず前提としてワイドズーム=ショートズームでエクステンダー付きである必要があります。

ピックアップしていただいたのが、キヤノンHJ11x4.8B IRSDとHJ11ex4.7B WRSEの2本。両方とももしあれば20-30万円くらいで販売されるそうです。

ちなみに2019年1月22日時点で、HJ11ex4.7B WRSはありますね。

ただし、30万円台で個人ではなかなか手が出しにくいところです。

数万円で放送用のショートズームが出ることがあるので、サイトをチェックしておいて損はないのではないでしょうか?

このサイトは量販店や業務用のプロショップと違って、決して親切ではありません。特に放送機器の知識がない人には向いていないので、そこだけは注意してほしいとのこと。B4マウントズームレンズを使いたい人は、自分で解決できる知識や情報収集力が必要になります。

帰りがけに見たもの。

オフィスのなかに入りきらず、廊下に出ていたボックスタイプのズームレンズ。F1.5通しの24倍のボックスタイプのズームレンズです。これも元の価格からしたら二足三文で出されるとのこと。

こんなレンズつけて子供の野球とか舞台を撮ったら、凄そうですね。ただし、このボックスレンズの難点は、カメラにレンズをつけてENG用の三脚にはそのまま載らず、サポート器具類が必要なこと。そうすると、おそらくショルダーカメラを持っている人でもその三脚では対応できなくなるはずです。

挑戦してみたい酔狂な人がいらっしゃったら、トラストさんのページをこまめにチェックしてみてください。(編集部)

トラスト株式会社 https://www.trust.tv