ブラックマジックデザインが2018年2月に発表した4K/60p対応のライブプロダクション製品群が話題になっている(発表会の様子はこちらから)。本体だけで30万円台という4K/60p対応B4マウントカメラもこれまでに感覚からすると驚きなのだが、システムトータルでも従来からすると一桁違う価格で、これから市場を大きく拡大していきそうだ。ただ、今のところはシステム全体を一気に導入するというよりも、現状のシステムの一部をブラックマジックデザインのライブプロダクション製品で置き換えていくという検討をしているところが多いという。

ブラックマジックATEMライブプロダクション製品の機材情報ページ

トータルで4K/60pライブプロダクション製品を導入しているところというと、まさに発表会を開催した株式会社PANDASTUDIO.TVが最も早いという。さっそく代表取締役社長の西村正宏氏に連絡をしてみたところ、上野のスタジオを利用して、ブラックマジックデザインの商品説明ビデオの収録を4K/60pで行うという。その収録の様子を取材させていただいた(取材日:4月24日)

ブラックマジックデザインの4K/60p(12G-SDI)を利用したスタジオ撮影セット、4K/60pの中継セットは、パンダスタジオショップ、パンダスタジオレンタルの入っている上野スタジオ(〒111-0036 東京都台東区松が谷4−24−11 シティーオーソネ21 受付2F、スタジオ3F)に常時デモ機を設置されている。予約すれば、無料でデモ環境がみられるという。

3Fのスタジオは入ると内装はこんな感じで、スタジオの外で休憩することもできる。

入ったところはプロジェクターが下げられており、ちょっとしたプレゼンテーションができるようなスペース。テーブルと椅子も充分な数、用意されていた。

スタジオに入ったところから収録スペースを見る。広さは充分。

今回は、配信はなくて4K/60pでの収録。ブラックマジック製品の使いこなしについて、製品担当である同社の岡野さんがデモ機を操作しながら解説していくトレーニングビデオの制作だった。収録機材もブラックマジックデザインで、紹介しているものもブラックマジックデザイン製品なので、ちょっと話がややこしいのだが、要は自社製品の解説ビデオを、同社製品が導入された上野のパンダスタジオで収録しているところ。

スイッチャーを操作しているのは、ブラックマジックデザインの石井さん。自社製品なのでオペレートはお手の物。

パンダスタジオでは、今回発売されたブラックマジックデザインの4K/60pのライブプロダクションシステムを3セット入れており、東京、大阪、福岡のスタジオに置いてある。1セットがここ上野のスタジオにある。右はATEM 1 M/E Advanced Panel。

機材類はラックに納められていて、持ち運びが可能。一番下はUPS(無停電電源装置)。こういったスタジオであれば電源は問題ないが、中継などでは電源が不安定なこともあるため。スイッチャーはBlackmagic Design ATEM 4M/E Broadcast Studio 4K(ラックの上から3段目)。一番上がアップ/ダウン/クロスコンバートを担当するTeranex AV、2段目は4K/60p対応のSmart Videohub 12G 40×40。4段目と5段目はレコーダーのHyperDeck Studio 12G。

カメラはURSA Broadcastを3台用意。このカメラはB4マウントだが、パンダスタジオではプロバスケットボールリーグ(Bリーグ)の中継用にB4マウントレンズを所有していたので、それを利用している。ただそのレンズは4K用ではなくHD用のもの。発表会においては、テストしてみた結果、HD用のものであっても充分使用できるという話があった。URSA Broadcastは新たにB4マウントレンズを導入するというケースは想定しにくく、すでにレンズは何本か所有しているというケースで高いコストパフォーマンスを発揮できる。HDのB4マウントレンズでもいいとなったら、ユーザーは広がるかもしれない。

現場スタッフはパンダスタジオからカメラマンが1名。ブラックマジックデザインから2名(出演して解説するスタッフとスイッチングして収録するスタッフ)。合計3名で行われていた。

URSA Broadcastをオペレートしているのはパンダスタジオのスタッフ。レンズがENGレンズなので、従来のカメラと同じ感覚で操作できる。

もちろん、ショルダーでの運用も可能。

手元を捉えるカメラは、上に仕掛けられているBlackmagic Micro Studio Camera 4Kでも。

出演者も見られる大型モニターは、ソニーの55型4K BRAVIA。

パンダスタジオの4K/60pシステムの案内はこちらから。このスタジオで収録、配信することもできるし、システムごとレンタルして、イベント会場などで使用することもできる。

当日収録されたムービー(チュートリアルビデオ)はこちから見ることができる。

 

パンダスタジオレンタルについて

この上のパンダスタジオは、ビルの2Fと3Fのフロアを利用しており、3Fがここまで紹介してきたスタジオ。2Fはレンタル業務のスペースになっている。そちらの様子を見せてもらうことができた。

ここの機材レンタルは、コンバーターなどかなり細かいものが多い。ビデオカメラ1個からでもレンタルでき、すべて番号を振って管理している。コンバーターなどは1、2個持っているところはあるが、イベントなどでは10個借りたいというリクエストもあるという。

半透明のクリアケースで中が見えるようになっている。

社内で使用する機材もすべてここで管理されている。

隣接するオフィスでは、週末に貸し出す機材の検証が行われていた。Tricasterに実際にカメラなどを接続して、動作チェックを行う。

パンダスタジオレンタルはこちらから。

社内に映像収録&配信スタジオを作るのはブームになっている

この後、PANDASTUDIO.TVの西村社長にお話を訊くことができた。パンダスタジオが東京テレビセンター、浜町スタジオを事業継承し、2016年10月1日にPANDASUDIO.TVとなり、最近では500名正社員採用計画が話題になっている。

西村社長によると、今、社内の会議室などを動画配信用スタジオに改装するという案件が非常に多いのだそうだ。PANDASTUDIO.TVでは、機材システムの導入から、内装工事にいたるまで一括で行なっており、すでに受け切れないくらい来ているという。多くの企業はYouTubeに自社の動画をのせるためだが、1/3くらいは配信で使われており、リアルタイムに視聴者から質問を受けるなどオンラインセミナーとしての用途も増えているそうだ。たとえば製薬会社であれば薬の説明をする動画を作ったり、ゲーム会社はゲームを見せながらのプロモーション番組を作るということはもはや当たり前になっている。特にゲームは動きをきっちり見せるのが重要なので60pが求められているという。

かつては社内スタジオというとその構築にはかなりの費用がかかったが、今は会議室を最小限の手間でビデオ配信できるようにしてほしい、という要望になっている。これまでの感覚だと、防音室を入れるだけで何千万円にもなり、しかも床の耐荷重を超えてしまうこともある。

PANDASTUDIO.TVでは、秋葉原のスタジオに大中小、3種類のスタジオがあり、それをサンプルがわりに見てもらうことができる。新しいスタジオを作る場合、施工のパネルなどもコピーしやすいように、手に入りにくいものは使用せず、ホームセンターで売っている部材だけを利用し、現地のホームセンターで取り寄せられるものにしているという。

会議室の改装レベルでスタジオができるようになったのは、優秀なスイッチャーが安価で出てきたから。その最右翼がブラックマジックデザインだが、機材が苦手なスタッフがオペレートするようなケースではローランドを選ぶこともあるそうだ。通常の映像収録と配信では、ローランドかブラックマジックデザインのスイッチャーをベースに、ゲーム会社など、レイヤーが必要になってくるとTricasterという選択肢になる。

PANDASTUDIO.TVはこちらから。

社内の動画スタジオブームについてはビデオサロンとしても気になるところ。その装備や収録・配信内容など、今後、ビデオSALON.webでも取り上げていきたい。