“ 新しい機材や表現は Instagram などの SNS を中心に情報収集します。
そこで見つけた機材や思いついた表現方法を
ウェディングの現場で提案・実践して、
そこで培ったノウハウを企業広告などの現場でも活用しています。”
井口修平(shuhei inokuchi)
PROFILE
福岡在住。大学時代にVJを始めたことから映像制作を開始。卒業後はウェディング関係の映像制作会社、CM制作会社を経てフリーランスに。ウェディングはもちろん、。美容・ファッション関係、ミュージックビデオ、企業PRやリクルーティン映像など幅広いジャンルの映像を手がける一方で、大学講師としても教鞭を執る。
取材・文●岡本俊太郎/写真提供●井口修平
福岡県は KOO-KI など有名なCM制作会社やCG制作会社が多く、映像産業が盛んな街だ。その中でハイレベルなビデオグラファーとして活躍するのが、井口修平さんだ。井口さんは、ウェディングの映像からプレミアムアウトレットのPR映像、九州電力の企業映像など様々な映像を手がけている。Vook が開催したビデオグラファーズナイト福岡でも一際目立つ存在で、今回取材をお願いした。
井口さんが手掛けた作品
鳥栖プレミアムアウトレット 街頭ヴィジョン用映像
佐賀県・鳥栖市にある「鳥栖プレミアム・アウトレット」。楽しそうにショッピングを満喫する女性たち。カリフォルニアをイメージした施設で過ごす一日を描いた作品。
Duran “Moment” MV
ヴィジュアル系バンド Duran のミュージックビデオ。井口さんは、シーンの構成から撮影・編集・グレーディングを担当した他、レーザームービング以外の照明も手がけた。
Funinori& Nao Wedding Movie
ブラックマジックデザインURSA Mini Pro 4.6KとDJI OSMO+で撮影した映像。結婚式のその場で撮影・編集を行い、エンドロールとして会場で公開した。現地での簡易的なグレーディングとして、事前に作ったLUTをFinal Cut Pro Xで当て、微調整用の色補正のエフェクトをプリセットで保存、適応させた。
VJから映像を始める
井口さんが映像作るようになったのは、大学時代にVJを始めたことがきっかけだった。大学では工業デザインを専攻していた井口さんは先輩の影響でVJを始め、After Effects を使っていたという。その流れでウェディング映像も制作するようになり、卒業後はウェディング映像の制作会社で2年間みっちりと修行を積んだ。
その後CM制作会社に移籍し、3カ月間程働いた時に、EOS 7D で撮影する様子を見て「この機材でフリーランスとしてやっていけるのではないか?」と思い立ち独立。現在では、ウェディング、美容・ファッション関連、企業リクルーティングなど幅広く手がける。
使用機材
▲URSA Mini Pro をメイン機に α7S Ⅱ や GH4 も所有。ジンバルはカメラに応じて複数台を使い分ける。
▲カメラ周りの機材の運搬は頑丈なペリカンケースで。
カメラ | ブラックマジックデザインBlackmagic URSA Mini Pro、Blackmagic Production Camera 4K/ソニーα7SⅡ/パナソニックGH4 |
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レンズ | シグマ18-35mm T2、50-100mm T2、18-35mm F1.8 DC HSM、50-100mm F1.8 DC HSM 、10-20mm F3.5 EX DC HSM、100-400mm F5-6.3 DG OS HSM/キヤノンEF24-70mm F2.8L II USM 、 EF70-200mm F2.8L IS II USM |
三脚 | ザハトラーFSB8(雲台)、VIDEO 14 II(雲台)/ジッツオ システマティックカーボン 3段(三脚) |
特機 | DJI RONIN MX、OSMO +(ジンバル)/フィルムパワーNebula 4100 Lite (ジンバル)/エーデルクローンSLIDER PLUS S(スライダー) |
編集環境 | アップルFinal Cut Pro X(編集) / ブラックマジックデザインDaVinci Resolve Studio(カラーグレーディング) |
Instagram で情報収集。ウェディングの現場で実践
井口さんの作品を見ると、構成や撮影、編集、色使いの技術がとても高く、特色がある。映像のトレンドのキャッチアップもかなり早い印象だ。どのようにしてインプットしているのかと聞くと、普段は Instagram で「#ursamini」「#GH5」など機材名で検索し、勉強しているという。色使いもそうだが、その作品でどんな機材が使われているのかをハッシュタグで検索すると海外のカメラマンが頻繁に投稿していて様々な現場を見られる。
そこで見つけた新しい機材やインスピレーションを受けて発想した表現などを実際にウェディングの現場で試す。ウェディング映像は個人がクライアントであり、提案が通りやすいため、色々と新しい表現を試せるという。そのため、井口さんにとってウェディングの現場は非常に大切であり、その現場の経験を生かして、企業広告などにつなげている。
ストイックなまでにインプット
多彩なジャンルの映像を作る井口さんだが、その一方で個人での映像作りに対する限界も感じており、新しい発想や考え方、制作スタイルに触れるためにも、チームでの制作にも積極的にチャレンジしていきたいと考えている。
また、井口さんは制作活動の傍ら、九州産業大学 造形短期大学部にて映像制作の教鞭を執る大学講師としての顔も持つ。学生と直に交流する機会も自らの感覚を研ぎ澄ます上では大切で、最近は若い人が Instagram にどんな写真や映像をアップしているのかも、チェックしている。
今はSNSの力もあり、技術的な面や表現面も日本に限らず世界中のものを見ることができる。そして、数ある投稿のなかで、どんな表現が受けているのか、傾向をつかむこともできる。
そうしたものをうまく吸収し、制作に反映していくやり方は今後スタンダードになるはずだ。東京ではなく福岡でそれを実践している井口さんは、まさに新しい時代のビデオグラファーであろう。
撮影現場の様子
▲Duran のミュージックビデオ撮影の現場。撮影は正面からショットを狙うドリーと一脚に据えたカメラでヨリのショットを撮影。
▲ドリーカメラは URSA Mini Pro 。マットボックスやフォローフォーカスを設置してシネカメラ仕様に。
▲ウェディング映像の撮影風景。ここでも URSA Mini Pro をメインに使用するが、肩載せや手持ちで機動性重視の機材構成に。
私とBMD 〜井口修平
BMDのカメラは私にRAWの素晴らしさを教えてくれました。DSLRでは物足りなく感じていたグレーディング時の自由度が格段に広がり、ワンマン撮影が多いのでURSA mini Proを導入したことにより撮影機材周りがシンプルになり柔軟で機動力を生かした撮影にも対応できるようになりました。今後も革新的な機材を発表し続けてもらいたいと思っています。
この記事は2017年10月号「Videographer’s File」より転載