◉Report 岩田隼之介

愛知県を拠点に活動する。映画監督、脚本家、映像作家。

監督した作品が国内外の映画祭で上映、近年は地域と連携した映画制作が多い、短編の場合は撮影監督も兼任する場合がある。名古屋市を流れる中川運河を運行するクルーズ名古屋のPRを目的として制作した短編映画『五時のメロディ』(U-NEXT、YouTubeで配信中)や、愛知県大府市を舞台した長編映画『Switchback』、技能五輪訓練生の日々を記録したドキュメンタリー『産業革命史』( 豊田市美術館「未生の美─技能五輪の技」展示)などがある。映像作家としてミュージックビデオ、美術展の記録映像、WEBCMや企業VPの制作など活動は多岐に渡る。
https://shunnosukeiwata.jp/

Blackmagic Micro Studio Camera 4K G2

スタジオカメラとして設計されたBlackmagic Micro Studio Camera 4Kの次世代モデルである「Blackmagic Micro Studio Camera 4K G2」は、そのコンパクトさから様々なシチュエーションでの活躍を期待できるカメラだ。HDMIが搭載されており、ATEM Miniなどのスイッチャーとの使用に最適。ビデオ、タリー、コントロール、収録トリガーに対応しており、1本のHDMIケーブルで放送スタイルのワークフローを実現できる。

また、12G-SDIをサポートしているので、ATEM ConstellationなどのSDIベースのスイッチャーにも接続できる。旧モデルからアップデートされた点として、USB-Cポート接続での外部ストレージへの収録機能の追加や、13ストップのダイナミックレンジに対応した4KデジタルフィルムセンサーでBlackmagic RAWの収録にも対応している。

今回は、外部ストレージにBlackmagic RAW 記録できる部分に注目して、Blackmagic Micro Studio Camera 4K G2をスナップシネマカメラとして使ってみたレポートをお届けする。

本体

▲本体ボタン

Blackmagic Micro Studio Camera 4K G2 を選んだ理由

ビルとビルの隙間から差し込む鋭い光線、路地をゆったり横断する黒猫、日々を過ごしていると、そんな美しい一瞬やユニークな場面を見てハッとすることがある。そんな時にスナップ感覚でスマホのカメラを向けて撮影するものの、現実に見た美しさとは違い、何かを撮り逃した感覚になる。適切なレンズを選び、広いダイナミックレンジでスナップした映像をじっくりグレーディングして、自分の目で見た印象に近づけたいと常日頃より思っていた。

そんな筆者にとってBlackmagic Micro Studio Camera 4K G2は試してみたいカメラであった。前モデルに収録機能がなく、Blackmagic RAWでの撮影もできない点から見送っていた。また筆者の場合はマイクロフォーサーズユーザーであることや、映画制作において車内撮影での仕込みのカメラとして使うことを想定するなど、いくつかの理由も重なっている。

ただBlackmagic Micro Studio Camera 4K G2はそもそもスタジオなどでのライブ配信を念頭に置いて設計されたカメラである。スナップに適したカメラなのかどうか不安な面もありつつ試してみた。

本体の説明

実際にカメラ本体を手にするとそのコンパクトさに驚く。NP-Fバッテリーと並べるとよりその小ささが伝わると思う。側面にある4つのボタンで撮影設定が可能。ただ基本的には本体で操作することを念頭に置いてなさそうで、感触や反応も含めて快適な操作感ではない。ただ好意的に見ると無駄な凹凸を削ぎ落としセッティングが困難な狭いところに仕込みやすいデザインと言える。

収録にはSSDをUSB-Cポートで接続する必要がある。参考までに筆者の撮影設定を記載しておく。Samsung T7 1TBを使用して、解像度Ultra HD、フレームレート24、Blackmagic RAW、固定ビットレート12 : 1で10時間48分の記録が可能だ。

ここで大きな特徴として挙げられるのが、このカメラには撮影した素材を再生する機能がない点だ。撮影素材を確認するにはSSDをPCに接続するか、Blackmagic Video AssistやATOMOS SHOGUNなどレコーダー機能のあるモニターで録画する必要がある。

業務で使用する場合この点はネックになるが、そもそもBlackmagic Micro Studio Camera 4K G2を頻繁に素材チェックの必要なメインカメラとして使用する機会は多くの人にとって少ないと思うのであまり気にならない。

基本的な操作を確認したのちに、スナップカメラとして外に持ち出すためのセッティングをスタートした。

▲本体比較

セッティング

試行錯誤の最中ではあるが、これが現在の姿。スチールでの縦型撮影用のL字型プレートをベースに、カメラ本体、Anker製のモバイルバッテリー、SSDの順に縦に並べてthink TANKのRED WHIPSでまとめるというシンプルな構成。

背面にLP-E6を装着できるが、バッテリーの持ちはあまり良くないのでモバイルバッテリーからUSB-C ▶︎ DCに変換して給電をしている。10000mAhの容量でおよそ150分ほど持つ。ちなみに筆者の機材条件ではLP-E6を本体に装着していない状態でのUSB-C ▶︎ DC給電ではカメラが起動しなかったことも記載しておく。外部モニターは軽くて薄いOSEE T5を選んだが、いずれはスマートフォンの外部モニター化も検討している。

「業務使用」ではなく「スナップ使用」が基本思想。なるべくコンパクトかつ持っていて楽しい手作りっぽい歪な形を目指した。フッテージの再生ができないというある意味フィルムカメラのような特徴に寄せる意図で、16mmフィルムカメラのような縦長のフォルムも意識してみた。

▲現在の組み方 

▲SSD(中)とモバイルバッテリー(左)。

▲プレートとSSDとモバイルバッテリーはバンドでまとめる


▲モバイルバッテリー給電

スナップ撮影

数か月間、いくつかのレンズを持ってプライベートでも撮影現場にも持ち歩き、さまざまシーンをスナップしてみた。カメラ本体に手ブレ補正がないので、メインで使用していたVoigtlander NOKTON 25mm F0.95だと多少のブレは感じる場面もあったが、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0など、レンズ側に手ぶれ補正がついているレンズだとほとんど問題なかった。個人的に好きなLEICA DG ELMARIT 200mm F2.8のような超望遠レンズでも本体が軽いおかげか、レンズ側の補正を頼りにできる印象だ(このあたりを使うと全くコンパクトな見た目ではないが…)。

スナップ的にすばやく撮影するので、ホワイトバランスや露出などざっくりな素材ばかりだが、そこはBlackmagic RAW、ほとんどがグレーディング段階で適切な状態にリカバリーできた。

▲スナップ撮影

▲超望遠レンズ「LEICA DG ELMARIT 200mm F2.8」

撮りためた素材を編集した映像がこちら

グレーディング段階でノイズグレインをあてています。撮影素材自体のノイズではありません。

この小さなカメラで撮影したとは思えない迫力や表現力を感じられる。

今回はスナップ目的での撮影だったが、これなら低予算映画の仕込みカメラとしての使用も問題なさそうである。他にもボックス型であることを活かして縦撮影などにも最適だ。様々なシチュエーションで独自の活躍が期待できそうな、かゆい所に手が届く小型カメラとして撮影機材に加えておくと良いことがありそうである。

Blackmagic Micro Studio Camera 4K G2の情報はこちらから