
ニワダイスケ
モーションデザイナー。名古屋在住のフリーランス。企業PV制作を中心に、モーションデザインに特化した活動を展開。ディレクション、映像・写真撮影、編集まで一貫した業務を担当。Vook schoolのモーショングラフィックスコースでメンターとして後進の育成に尽力。 2024年からAdobe Community Expertに就任。Adobe After Effectsのオンラインイベント「朝までアフター」「朝からアフター」を主催。映像専門の「Motion Design Studioオンラインセミナー」も運営。 X / Motion Design Studioオンラインセミナー
こんにちは、モーションデザイナーのニワダイスケです。私は普段のクライアントワークでは主にAdobe After Effects(以後Ae)とBlenderを使って制作をしています。今回、レビューする「DAIV KMシリーズ」はこれらのツールを中心にベンチマークテストしたり、実際に使ってみた感想をお伝えしていこうと思っています。
比較のために現在、メインで使用している「MacBook Pro M3 MAX(2023年)」と3世代前となりますが、「DAIV Z9 (2020年)」とテスト機「DAIV KM-I7G7T(NVIDIA Studio 認定PC)(2025年)」の3台で行なっていきます。
▼今回テストした3台のPCのスペック
DAIV KM-I7G7T(NVIDIA Studio 認定PC)(2025) | MacBook Pro 14インチ(2023) | DAIV Z9(2020) | |
---|---|---|---|
OS | Windows 11 Pro 24H2 | MacOS Sequoia 15.5 | Windows 11 Home 24H2 |
CPU | intel Core Ultra 7 265(2.40 GHz) | 14コア(Apple M3 Proチップ) | intel Core i9-9900K CPU @ 3.60GHz (3.60 GHz) |
GPU | NVIDIA GeForce RTX 5070 Ti | 30コア(Apple M3 Proチップ) | NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti |
メモリ | 32GB | 36GBユニファイドメモリ | 64GB |
ストレージ | 2TB | 2TB | 2.29TB |
重量 | 約11.7kg | 1.61kg | 約11.7kg |
外形寸法 | 幅215×奥行き465×高さ380mm | 幅31.26×奥行き22.12×高さ1.55mm | 幅190×奥行き490×高さ410mm |
製造販売 | 2025年 | 2023年 | 2020年 |
新旧DAIVを並べて撮影

写真右が今回新たに登場したミニタワーPC・DAIV KM-I7G7T。左は筆者が以前から使用しているDAIV Z9(2020年発売モデル)。
テスト機スペック紹介
「DAIV KMシリーズ」について紹介します。2025年6月に発売されたこのシリーズは、DAIVブランドで初めて採用されたミニタワー型モデルです。今回のテストでは「DAIV KM-I7G7T(NVIDIA Studio認定PC)」を使用しています。
このモデルはNVIDIA RTX 5070 Ti(GDDR7 16GB)を搭載しており、優れたグラフィック性能を発揮します。従来モデルと比較して処理能力が向上し、DLSS4技術やAI画像生成、エフェクトを多用した4K編集もスムーズに行えます。将来的なクリエイティブ環境にも対応できる性能といえるでしょう。メモリは32GB(DDR5-5600)を標準搭載し、最大128GBまで拡張可能なため、複数のアプリケーションを同時に起動したり、重いCG処理を行う際も安定して動作します。
ストレージには2TBのNVMe Gen4×4 SSDを標準装備。高速なアクセス速度と充分な容量により、大規模な映像・写真プロジェクトにも対応できます。筐体サイズは従来のフルタワーと比較して約33%小型化されたミニタワー型を採用しており、デスクスペースの効率的な活用が可能になりました。冷却システムには水冷CPUクーラーを採用し、高性能パーツ構成ながら静音性と耐久性を両立しています。
接続インターフェースも充実しており、Thunderbolt 4やUSB 3.2 Gen2 Type-Cなど、プロフェッショナルな現場で求められる拡張性を備えています。
Blender Benchmark
まずはBlender公式のベンチマークで各マシンのCPUとGPUスコアをテストしてみました。
Blender Version 4.5.0の設定


DAIV KM-I7G7T(NVIDIA Studio 認定PC)(2025) | MacBook Pro 14インチ(2022) | DAIV Z9 (2020) | |
---|---|---|---|
CPU | Intel Core Ultra 7 265 | Apple M3 Max | Intel Core i9-9900K CPU @ 3.60GHz |
Score | 367.36 | 342.08 | 167.94 |
Rank | 51位 | 53位 | 73位 |
GPU | NVIDIA GeForce RTX 5070 Ti | Apple M3 Max (GPU – 30 cores) | NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti |
Score | 3820.43 | 3481.03 | 2766.12 |
Rank | 10位 | 13位 | 18位 |
GPUスコアでは、DAIV KM-I7G7Tが最高値を記録し、特に重い3Dレンダリングや複雑なシーン処理で優位性を発揮しています。MacBook Proも優れた性能を示すものの、PC向けハイエンドGPUには若干及びませんでした。
CPUスコアでは、DAIV KM-I7G7TとMacBook Proが互角の性能を見せ、旧型のDAIV Z9は劣る結果となりました。これはBlenderのCPUレンダリング性能における最新CPUの進化を如実に示しています。
GPUスコアのランキングでは、DAIV KM-I7G7Tが世界の上位10%に入る非常に高い性能を達成しています。
DAIV KM-I7G7Tは複雑な3D作業や複数アプリケーションの同時使用時に力を発揮します。一方、MacBook Proは一般的な案件や中規模プロジェクトで充分な性能を見せ、特にモバイル性とmacOSのワークフローを重視するユーザーに適しています。
性能差は大規模レンダリングや高負荷シーンでのみ顕著となり、通常の制作作業では中級機でも充分対応できます。重要なのは、単純なスコアではなく、コスト、設置スペース、運用面を考慮した上で、必要充分な性能を見極めることだと思います。
AEPulseBenchmark
次にAdobe公式のベンチマーク用ファイル「AEPulseBenchmark」(現在は入手不可)を使ってAeのシングルコアとマルチコアのレンダリングタイムを計測してみました。全てレンダリング前にキャッシュの削除を行った上でコーデックはQuickTime(AppleProRes422LT)で書き出しという条件で行いました。
マルチフレームレンダリングは、従来の1フレームずつ順次処理する方式から、複数フレームを同時に並行処理する方式へと進化し、処理速度が大幅に向上しました。
After Effects 22.0(2021年10月26日リリース)から本格的に搭載されたこの機能により、CPUの複数コアを最大限に活用できるようになり、レンダリング速度が従来の2~3倍まで向上しています。

DAIV KM-I7G7T(NVIDIA Studio 認定PC)(2025) | Apple M3 Max(2023) | DAIV Z9 (2020) | |
---|---|---|---|
シングルコア | 6:30 | 7:40 | 14:40 |
マルチコア | 3:47 | 3:54 | 9:58 |
シングルコアのベンチマーク結果では、DAIV KM-I7G7Tが6分30秒で最速を記録し、MacBook Proが7分40秒、旧型DAIV Z9は14分40秒と続きました。最新機種は旧型と比べて処理時間が半分以下になっています。マルチコアテストでは、DAIV KM-I7G7Tが3分47秒、MacBook Proが3分54秒とほぼ同等の性能を示し、旧型DAIV Z9は9分58秒と大きく差をつけられる結果となりました。
この性能差は、新世代CPUの採用、メモリアーキテクチャの進化、そしてソフトウェアやOSの最適化によるものだと思います。特に、マルチコア性能の向上が実作業の効率を大幅に改善しています。
実務では、Aeのレンダリングにおいてマルチコア性能が重要な役割を果たします。高速なマルチコア処理により、複数案件の同時処理や重いコンポジションのレンダリングがスムーズになります。最新の2機種は性能差がほとんどなく、日常業務で不足を感じることはありません。一方、旧型機では現代の制作現場で求められる処理速度に追いつかず、作業効率に影響が出ます。
VR(Meta Quest LinkによるGPUテスト)
最後にVRでのGPUテストを実施しました。数値データはありませんが、体感的な評価を行いました。Meta Quest 3をMeta Quest Linkを介してWindows機に接続し、GPUパワーを活用。VR Chatなど描画処理が必要な環境でテストを行いました。普段使用しているDAIV Z9(2020)ではファンが常時稼働し、GPUもフル稼働している状態でしたが、DAIV KM-I7G7T(NVIDIA Studio認定PC)(2025)ではファンがほとんど回ることなく安定動作を実現。3世代前のGPUとの比較は少々酷だったかもしれませんが、NVIDIA GeForce RTX 5070 Tiの性能が充分に発揮されていることを実感しました。
総括
全体を見て感じるのは、「プロ向けの本格マシンが現実的なサイズで実現した」という納得度の高い構成と、機能に特化した潔さです。ただし、最小構成でも約41万円からと高額なため、「妥協のない環境を求めるクリエイター」や「投資対効果を重視するプロ・ハイアマチュア」向けの製品といえます。
もちろん、ゲーミングPCや高コスパのPCでもクリエイティブ作業は可能ですが、この認定機ならではの安定性、トータルサポート、公式ドライバーによるパフォーマンス保証など、長期的な安心感や運用効率を求める場合は選択肢に入ってきます。
個人的には、AeやBlenderユーザーにとって強力な「頼れる相棒」になると思います。一方で中立的に見ると、コスト、設置スペース、過剰なスペックになる可能性もあるため、用途と予算に合わせて本当に必要かどうかの検討は必要だと思います。