レポート●稲田悠樹(コマンドディー)

Mavic 3 Classicの登場から半年。3眼カメラを搭載するMavic 3 Proが登場した。今回はこれまでのDJIドローンをすべて使ってきた稲田さんに実機をテストしてもらい、他のモデルとの違いや実際購入を検討する場合の選定のポイントを解説していただいだ。

 

2021年11月に初代Mavic 3とCine、2022年11月にMavic 3Classicそして、半年も立たずに、今回Mavic 3 ProとMavic 3 Pro Cineが発表された。なお、初代Mavic 3が、DJI公式STOREから消えているため、Mavic 3のアップデート版として今回のProが登場したと思われる。

私自身発売当初からMavic 3 Cineを利用しており、予備でMavic 3 Classicを追加で購入して利用していた身としては、まさかのこの短い期間でのProの登場は、予想外(悲しみ)だ。

今回は、Mavic 3 Proの機能を紹介をしつつ、他のMavic 3シリーズと何が違うのか? ご紹介しようと思う。

 

▲左からMavic 3 Classic、Mavic 3 Cine、Mavic 3 Pro

 

 

70mmレンズの搭載が一番うれしい

Mavic 3 Proは複数の異なる焦点距離(24mm/70mm/166mm)を持つ3眼カメラシステムを搭載している。初代Mavic 3は2眼カメラシステムで焦点距離24mm/162mm。Mavic 3 Classicは24mmのみとなっている。Proのカメラの焦点距離をみて、「ズームレンズの小三元や大三元での、24-70mmと70−200mmをドローンに搭載を目指しているのか?」と思った。

 

Pro Cineでは、搭載された3種類のカメラすべてで、Apple ProRes 422 HQ/Apple ProRes 422/Apple ProRes 422 LTコーデックに対応し、本体に内蔵された1TB SSDに収録可能だ。

 

元々のMavic 3シリーズに搭載されたHasselbladカメラ(4/3型の24mm)の描写は美しくそれだけでも買う価値があるものだが、今回の70mmの中望遠の追加は、唯一無二かつ個人的には欲しかった部分で一番の推しポイントになる。

 

これまでに24mmでは、「被写体に寄りたいけど寄れない」(安全や周辺の障害物など)や、「絵の動きがもう少し欲しい」そんな場面が多々あった。そんな悩みを70mmの程よい望遠と圧縮効果が解決してくれた。ちなみに、これまでMavic 3の162mmを利用していたのだが、望遠すぎる上に広角レンズとはセンサーサイズが違うために、画質の差が気になっていた。

 

今回の70mmの追加は、24mmレンズに比べれば、画質は多少落ちる(センサーサイズが1/1.3インチ)ものの、程よい中望遠で使いやすく表現の幅を気軽に広げてくれる選択肢が増えた。

▲ダースベーターの顔に似ているという噂のMavic 3 Proのカメラユニット

私が所有している初代Mavic 3の望遠162mmは、圧縮効果が高く今までにない画が撮れるものの、センサーサイズが小さく、ノイズが乗りやすいという問題もあり、使える場面が限られていた。しかし今回追加された70mmに関しては、非常に使い勝手が良いと感じた。もちろん24mmの描写の美しさが圧倒的ではあるものの、シーンによっては使える描写性能を持っていた。

 

動画で見るMavic 3 Proの3つのレンズの画質の違い

それぞれのレンズを使ってサンプルをまとめたのでご覧いただければと思う。飛ばす前にレンズの切り替えをする前提だったので、露出調整を頻繁にしないために、ND8を取り付け24mmのF値を70mmと166mmの間のF3.2に設定して撮影した。 参考となるように、ほぼ撮って出しで、最後の方だけ少しいじったものをいれている。

 

 

3つのレンズの画角の違いと制限

Mavic 3 Proに搭載されたそれぞれレンズを同ポジで撮影してみた(それぞれH.265のnomalで録画)。

24mm(Hasselbladカメラ)

Hasselbladカメラについては、Mavic 3シリーズで共通。カラーモードが3種類(ノーマル、HLG/D-Log M、D-Log)と柔軟に選べる。

 

70mm(中望遠カメラ)

中望遠に関しては、このMavic 3 Proだけの独自のものである。今までのMavic 3では、24と162mmの極端な2択で、通常のドローン撮影の場面では、162mmは望遠すぎて、間の画角が欲しいと思う場面が多々あったので、今回の70mmの追加は非常に使い勝手がよい画角だ。カラーモードは、2種類(ノーマル、HLG/D-Log M)となっており、D-Logでは撮影できない。

 

166mm(望遠カメラ)

望遠に関しては、初代Mavic 3からアップデートされており、焦点距離は162mmから166mm、開放F値がF4.4からF3.4とやや明るくなっている。カラーモードは1種類(ノーマル)しか選べない。

 

それぞれのカメラ性能については、以下に抜粋した表を参照していただければと思う。

●カメラ性能の比較表は

※上の表はクリックすると拡大表示されます。

以下は、表から変わった点だけ抜粋してみた。

【Mavic 3 ClassicとMavic 3 Proの違い】

・Classicは24mmのみ、Proは3眼カメラ
・ClassicはApple ProResで記録できるCineモデルなし、ProはCineモデルもある

 

【初代Mavic 3からMAVIC3 Pro変更点】

・24mmについては、Classicと共に共通
・Proでは、中望遠70mmが追加
・望遠レンズが、162mm(f4.4)からProでは、166mm(f3.4)に変更
・最大飛行時間が46分からProでは、43分に減少
・HLGが、HLG/D-Log Mに変更
・Cineでは、望遠でH.264/H.265でしか録画できなかったが、Pro Cineでは望遠、中望遠共にApple ProResに対応

 

その他、気になった点としては以下の2点がある。

①レンズを切り替えて撮影する場合。設定によっては、カラーモードや画質(fps)が切り替わるので注意が必要。

すべてのレンズを同じ設定で撮影するのであれば、4K/60pで、カラーモードは「ノーマル 8-bit 4:2:0 (H.264/H.265)」もしくは、「ノーマル 10-bit 4:2:2 (Apple ProRes 422 HQ/422/422 LT)」で撮影する必要がある。Logは24mm、HLGは24mmと70mmに対応している。

 

②レンズと露出の切り替え

各種レンズでF値が異なるため、NDとISOの切り替えが悩ましい。レンズを切り替えるたびに着陸させてNDを付け替えるのは面倒なので、レンズを切り替えるのであれば、70mmや166mmでISO100を選んでNDを装着し、センサーサイズの大きい24mmで暗い場合にISOをあげるという運用をしている。

以下それぞれのレンズで同じ濃度のNDを装着。画像の右下の設定を見て欲しいのだが、絞りを変更できる24mmのF値を166mm(F3.4)に近い、F3.5に設定してみた。ISOは100で揃えているが、比べてみると明るさが違う。こういう場合は、24mmが暗く感じるのでISOの数値を調整して明るさを合わせるようにしている。

▲24mm。絞りはF2.8~F11で変更できる。
▲70mm。F2.8固定。
▲166mm。F3.4で固定。

 

空撮に必要なものが一通り揃ったセット

今回レビュー用にDJI Mavic 3 Pro Fly More コンボ(DJI RC Pro付属)をお借りした。このセットは、必要なもの全部入りのセットとなっており、Mavic 3 Pro本体、DJI RC Pro(ディスプレイ付きの送信機の上位モデル)、バッテリー3本、充電ハブ、ショルダーバッグ、NDフィルター、予備プロペラ、ケーブルが同梱されている。

DJI製品を利用したことのない方で、もう少し予算を抑えたいのであれば、HDMI出力等なしの、送信機がDJI RCに変更されたコンボのいずれかを購入すると一式揃うのでおすすめだ。

商品のセットの組み合わせが多いため以下表にまとめたので、参考いただければと思う。2023年5月10日現在の商品名とセット内容抜粋

●セットの比較の表

※クリックすると拡大表示できます。

細かな点だが、同梱されているショルダーバッグは非常に良いサイズ感だ。過去のDJI製品においても様々なバッグが用意されてきたが、今回のバッグは、上記写真の、持ち運ぶものすべてがジャストサイズで入るので、個人的にはDJIの純正バッグ史上No1の使い勝手だと思う。

同梱されている充電器についても変更されたおり、約70分で充電できる(DJI 100W USB-C 電源アダプターとDJI Mavic 3シリーズ100W バッテリー充電ハブを使用)以前同梱されていた充電器(DJI 65W ポータブル充電器のデータケーブルを使用)では、約96分かかっていた。

 

ドローンとしての基本性能について

ドローンとしての飛行や自動飛行といった基本性能は、Mavic 3シリーズともに共通で、カメラ部分が異なる。今回のMavic 3 Proは、最大43分の飛行時間(Classicは46分)、全方向障害物検知、最新のDJI O3+映像伝送システムでの最大8km(日本仕様)の伝送距離、1080p/60fps HDライブ映像を手元で確認することができる。

 

自動飛行の機能についても、Hasselbladカメラと70 mm中望遠カメラは、ActiveTrack 5.0、スポットライト、POI(ポイント オブ インタレスト)の3種類のモードで構成されたフォーカストラックに対応。様々な方向に飛行しながら、安定したトラッキング撮影が可能だ。

 

 

どのモデルを選ぶべきなのか?

Mavic 3シリーズを導入しようと思った場合、どれを選ぶべきか迷いやすいラインナップとなっているので、違いを解説する。飛行性能は基本的に同じであるため(強いて言うとProは飛行時間が3分短くなった)、選ぶポイントとしては、「映像(カメラ)性能をどこまで求めるのか?」「送信機をどれにするのか?」の2点である。なお、DJI公式ストアでは、初代Mavic 3が販売終了となり、Proに置き換わってので、今回はClassicとProを比較していく。

まず、映像(カメラ)性能として、以下の3択となる。

①24mmだけでよければClassic
②24mm以外に、70mmと166mmが必要であればPro
③さらにAppleProResも必要であれば、Pro Cineを選択する必要がある。(ClassicにはCineは用意されていない)

 

次に送信機も3択となる。

④送信機にスマホをマウントしたいのであれば、RC-N1
⑤ディスプレイ一体型の送信機がよければDJI RC
⑥ディスプレイ一体型かつHDMI出力も必要であればDJI RC Proを選択する必要がある。

▲左からRC-N1、DJI RC、DJI RC Pro

①−③と④-⑥の組み合わせがあるので、全部で9通りの商品の組み合わせがあることになる。過去DJI製品を利用している方であれば、いずれかの送信機を所有しているのであれば本体だけで利用できる。

 

おまけ紹介「ウェイポイント」

以前の初代Mavic 3でも、ソフトウェアアップデートによって追加されたものがウェイポイントという機能である。こちらについてはMavic 3 Proだけではなく、Classicでも利用できる。

 

ウェイポイントとは事前設定したウェイポイントをもとに自動で飛行ルートを計画し、同じルートを正確に繰り返し飛行することができる機能で、ポイントを設定する方法は以下の2種類がある。

①マップを開いて、飛行させたいルートをタップしていく

②飛行させてポイントに移動させたらC1ボタンを押して覚えさせていく

あとは画面内で、高度やカメラ角度、向きなど設定すると自動で飛行が可能だ。

 

【アプリや障害物センサーについて】

Mavic 3シリーズで共通する部分は、2021年11月に執筆した当時の記事を参照いただければと思う。

 

まとめ

今回のMavic 3のアップデート版であるMavic 3 Proの登場では、従来機でのかゆいところに手が届かなかった部分を見事に解決した。

元々のドローンとしての安定性や使い勝手の良さをそのままに、24mmと162mmという極端な2眼レンズの構成から、間を繋ぐ70mmが追加され、映像のカメラとしての使い勝手も向上した。さらに、Pro Cineでは以前はできなかった、3つのレンズすべてでApple ProRes収録にも対応した。ドローンの映像表現を気軽に広げることができる1台となっている。