DJIから立て続け登場した小型ドローンMini 4 ProとAir 3。カメラ性能としてはほぼ同等の性能を備える2機種だが、前編となる今回はどんな違いがあるのか製品のポイントを中心に紹介する。後編では旧モデルとも比較しながら新機種の魅力を探っていく。

 

テスト・文●稲田悠樹(コマンドディー)

 

▼導入

ドローン空撮が一般的になり、DJIドローンの選択肢も多くなり「どのドローンが自分にあっているのか?」という声を見る機会が増えてきた。

今回は、新製品のDJI Mini 4 ProとAir 3のレビューをしていく。ただし今回は、少し前の機種とも比較した結果、新機種が当然いいとは一概には言えない内容となった。理由としては、旧モデル(Mini 3 ProやAir 2S)も併売しているので、人によっては旧モデルのMini 3 ProやAir 2Sのほうが、性能と価格のバランスがよく感じるユーザーもいると思ったからだ。比較のスペックシートも記載しているのでそちらも合わせてみてほしい。

前半は、新製品のMini 4 ProとAir 3の基本性能と使い勝手について解説し、後半では、Mini 3 ProとAir 2Sとの比較をしていく。

 

▼Air 3とMini 4 Proの共通した進化点

Air 3 は2023年7月25日、Mini 4 Proは9月25日に発売されており、差が2カ月しかない。この2機種は、非常に似た機能と性能を有している。

先に結論を言うと、「Mini 4 ProとAir 3どちらを選ぶか」は、荷物の量とサイズ、カメラに70mmの中望遠レンズが必要かどうかの2点が大きなポイントとなる。それ以外の部分は共通点が多い。

 

1.カメラ性能について

後述するMini 3 ProとAir 2Sとの比較でも触れるが、Mini 4 Pro、Air 3いずれも広角カメラのセンサーサイズがいずれも「1/1.3型CMOS」で「10bit&D-Log Mで撮影可能」である(余談だがこれはアクションカメラDJI Action 4とも同一)。Air 3は、今回2眼のカメラとなり別途換算70mmのレンズも追加となっている(詳しくは後述)。

▲Mini 4 Proのカメラ部

▲Air 3のカメラ部

 

2.使い勝手

アプリや送信機など共通しており、いずれも同じ感覚で利用ができる。例えるならiPhoneかiPhoneのProかのようなものだ。サイズは違えど、カメラの設定、障害物回避、自動飛行などなど、機能的に共通している部分が非常に多い。

自動飛行に関しては、以前のDJI製品のマスターショット、クイックショット、ハイパーラプスに加え新たにMavic 3シリーズで追加されたウェイポイント、クルーズコントロール、アドバンストRTHにも対応している。

 

3.送信機と映像伝送システム

見た目が似ているため気づかない方も多いだろうが、送信機が変更となっており、DJI RC2になっている。

ひとつ前のモデル(Mavic 3、Air 2S、Mini 3シリーズなどが対応)は、「O3」という映像伝送システムだったのが、今回「O4(Air 3、Mini 4 Proが対応)」という新たな映像伝送システムに変わっており、可動式のアンテナが追加されている。それによって過去のO3対応の送信機は、互換性がないので注意が必要だ。

使ってみた感想としては、スペック表には記載がないが、起動速度やタッチ後の反応など速度が向上していた。

▲左O3対応の送信機DJI RC、右O4対応の送信機DJI RC2

 

▼Mini 4 Proについて

DJI製品の中で最も低価格で軽量な入門用のシリーズがMiniシリーズだ。以前は航空法の適用の除外項目に対応した重量だったのだが、昨年末の法改正で、重量が変更になり他のドローン同様に、国土交通省に機体登録などを行う必要がある。

 

今回お借りしたのは、158150円(税込)の「DJI Mini 4 Pro FlyMoreコンボPlus(DJI RC 2 付属)」で、バッテリー3本、バッテリー充電ハブ、モニター付き送信機、ショルダーバッグがセットになったものだ。人によっては、追加で購入するものとしては、機体が破損した場合の保証DJI CARE、NDフィルターなどがある。特にレンズがf1.7固定なので、NDフィルターは必須だ。

 

▲DJI Mini 4 Pro Fly Moreコンボ(DJI RC 2付属):本体、バッテリー3本、バッテリー充電ハブ、モニター付き送信機、ショルダーバッグ

 

DJI製品では珍しく、バッテリーおよび充電ハブがDJI Mini 3シリーズと同一で互換性がある。ただし、見た目が似ている送信機DJI RC(モニター付き)、DJI RC-N1(モニターなし)は互換性がない。

 

性能としては、まとめの表をご覧いただければと思うのだが、Miniなのにカメラ性能は、遜色ない性能となっている。そして、このサイズこの重量で障害物センサーが全方位となっていることには驚きだ。

 

1.カメラ性能について

4K/60p(HDR)、スローモーション4K/100p(ノーマル)、10bit D-LogM、デュアルネイティブISO、絞りF1.7、クアッドベイヤー配列での撮影が可能、といった特徴を持ち、まさに最新のアクションカメラの性能を持ちながら、飛行可能というような映像性能を持っている。

SNSなどに対応した縦撮影に関しても、Mini 3 Proから備わったカメラ自体が90°回転し、画素がそのままの縦向き撮影についても対応している。また上向き60°までカメラが上がるので、手持ちのジンバルのような見上げるワークの/映像も撮影可能だ。

▲縦位置撮影のモードに切り替えるとカメラも縦に傾く。

 

 

2.独自の機能ActiveTrack 360°について

先に書いたように、DJI Air 3と共通している部分が多いが、Mini 4 Pro独自の自動飛行機能として「ActiveTrack 360°」がある。手動で、動く被写体を追跡しながら、周囲を回転し、障害物を避ける。という映像は非常に困難だ。ただこの機能を使えば、被写体を選択し、トレースホイール上をスワイプして経路を設定するだけで、全方向障害物検知機能により、障害物を回避しながら、周囲を回転しながら追跡する撮影ができる。以前は、自動で追跡しながら障害物を避けるだけに止まっていた機能が、進化し、周囲を回転できるようになった。

ActiveTrack 360°のアプリ画面

 

3.使用感

やはり小型で軽量な点がMiniシリーズを選ぶ理由の最も大きな点だ。

通常のドローンでは、くぐれないところを潜った迫力のある映像や、本体だけではなく、予備バッテリーも軽量なため、持ち運びの負担が大きく減るのがメリットとして挙げられる。

以前は、映像の質に妥協して軽量さを選んでいたが、この性能なら許容できる映像性能で荷物を超軽量で撮影の望むことが可能だ。

 

軽量化の弊害?

私自身初代Mini、Mini 2、Mini 3 ProとMiniシリーズを所有してきているのだが、いずれも修理に出したことがある。墜落などではなく、自然故障だ。モーターが不調であったり、カメラ映像が出なくなったりなどの症状が出た(ちなみにそれによっての墜落はなく、事前に画面上でのアラートなどで、不調の箇所をお知らせしてくれている)。

 

同じような使い方、持ち運びをしていてもAirシリーズとMavicシリーズでは、そういった症状は出たことがない。もちろん私の使い方の問題もあるかもしれないが、Miniシリーズは、他のDJIドローンに比べて、かなり軽量化されているため、パーツの強度などの違いから来るものではないかと思った。そういった点を踏まえて、仕事でハードに使う、修理にだすスケジュールが問題になりそうなど、気になる方は、AirシリーズやMavicシリーズを選択する必要があるかもしれない。とはいえ、この軽量さ・コンパクトさは捨てがたいので、所有し続けている。

▲私のMini 3 Pro。起動して、ジンバルは動くのにカメラ映像が出てない

 

▼Air3について

Airシリーズは、DJIドローンの中では、Miniよりも高性能にもかかわらず、導入しやすい価格に押さえたモデルである。今回は70mmの中望遠レンズを搭載した2眼ドローンとして進化した。ただし、広角の24mmについてはMini 4 Proと同一性能のため、広角だけでいいという場合には、Mini 4 Proと競合してしまう。

以下Air 3だけの特徴について記載していく。

▲DJI Air 3 Fly Moreコンボ(DJI RC 2付属):本体、バッテリー3本、バッテリー充電ハブ、モニター付き送信機、ショルダーバッグ

 

1.70mm中望遠カメラ

スマートフォンでも多眼カメラが増えてきているが、実際に使ってみるとセンサーサイズが違ったり、撮影できるフォーマットやカラーが変わったりして設定に気を遣うことがあるが、Air 3の中望遠に関しては、焦点距離とF値が違うだけで、広角と全く同じ性能となっている。それによって、同一の設定で同一のクオリティで撮影することができ編集時に困ることもない。

ドローンと言えば広角で、全体を見せる画として使われることが多かったが、この70mmのおかげで、主役を引き立たせる表現や、圧縮効果によって風景を走らせる画にしたりなど、ドローンの画にメリハリをつけることができるようになった。

▲24mm

▲70mm

 

2.2.7K縦撮影

2眼どちらでも、2.7Kの縦動画が撮影可能だ。Miniシリーズとは違い、カメラ向きの切り替えではなく、画角を切り取って縦動画となる。ただ動画の16:9のカットではなく、写真の4:3から縦にカットしているので、16:9の動画の際よりも上下広がった画角で納めることができる。

 

3.ドローンとしての飛行性能

マニアックなポイントだが、耐風性能が12 m/s、最大上昇・下降速度が10 m/sと、機体が大型になっている分機動性・安定性が高い性能を有している。通常下降時に、上昇よりも速度が落ちたり、風のバランスが取りにくくふらつく降り方をする場合があるが、Air 3では滑らかに安定した速度で下降することができる。これは、安定したドローンのカメラワークをしやすい点に直結するので、嬉しい点だ。また飛ばしている際の操作感や安心感は機体が大きくなった点も影響しているのか非常に安定して、操作することができた。

 

●後編 

DJI Mini 4 Pro、Air 3と1世代前のMini 3 ProとAir 2Sの4機種を比較

●製品情報

DJI Mini 4 Pro

DJI Air 3